弘兼憲史×池上彰「オトナの人生相談」(5)「終活」について考える

─最後は人生の大先輩であるお二人に「終活」について、教えていただきたいです。

池上 私の場合、テレビの仕事を少しずつ減らしています。テレビ朝日の「グッド!モーニング」の解説もやめました。新聞や雑誌などの連載も徐々に減らしていって、最終的には本の書き下ろしと大学の授業だけでいいと思っています。それが私にとっての終活です。

弘兼 私も徐々に仕事を減らしていかなければいけません。我々の年齢になると、否が応でも死を身近に感じるようになりますよね。会食や大好きなゴルフもあと何回できるのか、と考えるようになる。だからこそ、今まで何気なくしていたゴルフや食事の時間も大切にしようと思うようになりました。

池上 あと、限りある時間を若々しく生きるためには、社会の役に立つことも大切ですね。コロナ前は大学時代のクラスメイトと毎年集まっていました。会社を辞めて何もやっていない友人は、急激に老けていきます。が、地域のボランティア活動をしているような友人は、生き生きしている。どこかで誰かの役に立っているという意識があるから、若さが保てると思います。

弘兼 自分の存在が社会にとってどれだけのものなのか。それをわかったほうがいいですね。社会にとって自分は何も必要とされていないとなったら、後は朽ち果てていくしかありません。誰かのためにやることによって、結局は自分のためにもなる。

池上 そのためにも、サラリーマン時代から社内だけではなく、外部との付き合いを広げておくことです。弘兼さんは会社を辞めた後、色々なところから仕事の依頼が来た。私の場合も出版社と付き合いがあったから次の道が開けた。つまり、それができたのは、社外の人間関係があったからこそ。現役時代にそれを意識することが、その後の人生にとっては、非常に大きな意味を持つということです。

弘兼 その通りですね。お互い、終活を頑張りましょう。

─お二人がいつまでも若々しい理由がよくわかりました。人生の指針として覚えておきたいです。

弘兼憲史(ひろかね・けんし)1947年、山口県生まれ。早稲田大学法学部卒業。松下電器産業(現パナソニック)に勤務後、74年に「風薫る」で漫画家デビュー。84年に「人間交差点」で小学館漫画賞を受賞。91年「課長島耕作」で講談社漫画賞、講談社漫画賞特別賞、00年「黄昏流星群」で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、03年日本漫画家協会賞大賞を受賞。07年には紫綬褒章を受章。「男子の作法」(SBクリエイティブ)など著書多数。

池上彰(いけがみ・あきら)1950年、長野県生まれ。慶應義塾大学卒業後、73年にNHK入局。報道局社会部でさまざまな事件を担当。94年より11年間、「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。05年にNHKを退社、フリージャーナリストとして多方面で活躍。16年4月から名城大学教授、東京工業大学特命教授。愛知学院大学、立教大学、信州大学、関西学院大学、日本大学、順天堂大学、東京大学などでも講義する。「伝える力」シリーズ(PHP新書)、「私たちはどう働くべきか」(徳間書店)など著書多数。

*「週刊アサヒ芸能」6月24日号より

2021/6/20 18:00

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