でんぱ組にベビレ、クマリデパート……ハチャメチャなのにスタンダード!? 玉屋2060%のアイドルPOP|「偶像音楽 斯斯然然」第59回

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でんぱ組.inc「でんぱれーどJAPAN」、ベイビーレイズ「虎虎タイガー!!」、FES☆TIVE「ハレとケ!あっぱれ!ジャパニーズ!」など、玉屋2060%(Winners)が手がけたアイドルソングは、1度聴いたら耳に強く残り、圧倒的な高揚感を覚えさせる。その類い稀なる中毒性はどのように生み出されているのか? 冬将軍が鬼才サウンドクリエイター・玉屋2060%の音楽性に深く迫る。

『偶像音楽 斯斯然然』
これはロックバンドの制作&マネジメントを長年経験してきた人間が、ロック視点でアイドルの音楽を好き勝手に語る、ロック好きによるロック好きのためのアイドル深読みコラム連載である(隔週土曜日更新)。

10人体制となったでんぱ組.incの両A面シングル「プリンセスでんぱパワー!シャインオン!/千秋万歳!電波一座!」収録の「千秋万歳!電波一座!」は、でんぱ組楽曲を語る上で欠かせない作家、玉屋2060%によるもの。昔からのファンからすれば思うことはあるだろう新体制なれど、ひたすらにキャッチー性が強襲する様相と、音も詞も含めて膨大な情報量が騒々しく炸裂する玉屋サウンドと萌え声+ウィスパー気味のボーカルの組み合わせは、でんぱ組.inc以外の何者でもない。

でんぱ組.inc「千秋万歳!電波一座!」Live Movie from『Dear☆Stageへようこそ2021』

でんぱ組.incと玉屋2060%、両者の邂逅は、「でんぱれーどJAPAN」(2012年)に始まっている。アニメやゲームのシーンに存在していた、いわゆる“電波ソング”をロックの手法でアイドルソングに落とし込んだ。その革命的ともいえるインパクトはでんぱ組.incの人気とともに拡大していき、“アイドル戦国時代”といわれていた当時、新時代の到来を象徴させるものになった。さらに、でんぱ組のみならず、ほかグループへの楽曲提供によって、アイドルポップスに新しい息吹をもたらし、今日に至るまでアイドルソングにおける、変化球なれどスタンダードな1つのスタイルとして広く愛されている。

リズミカルなテンポ感とコミカルな歌詞、しっちゃかめっちゃかに思えて、日本人なら親しみを覚えるキャッチーなメロディを持つ玉屋楽曲は、ライブで盛り上がることはもちろんのこと、音源を聴いていても、なんだか元気が出る曲ばかりなのである。

今回はそんな玉屋2060%のアイドル楽曲の魅力を、改めて振り返ってみたい。

自分の作家性をアイドルソングに反映

そもそも玉屋2060%は、ニューウェーヴな感覚とエッジの効いたギターサウンドを武器としながらも、どこか懐かしさを感じるメロディが印象的なロックバンド、Winnersのギター&ボーカル。基本的に自身のバンド曲とアイドルへの楽曲提供を明確的に使い分けるタイプではなく、自分の作家性をウマくアイドルソングに反映させている。女性ボーカルや複数ボーカル、そしてアイドルソングとしてのポップさ加減はあるだろうが、あくまでバンドマンのスタンスであり、職業作家的なスタイルではないところが大きい。いろいろなタイプの楽曲を書き分ける器用さはない分、アイドルのキャラクター性にハマった時の破壊力がすさまじいのである。

Wienners「蒼天ディライト」SUPER THANKS,ULTRA JOY TOUR 2018 FINAL @渋谷CLUB QUATTRO

ハチャメチャの中にある普遍性

「でんぱれーどJAPAN」は、でんぱ組.incのパブリックイメージを印象づけた楽曲であり、作家としての玉屋のはじまりの楽曲だ。

でんぱ組.inc「でんぱれーどJAPAN」

メロディと楽曲の持つ歯切れのよさを、作詞を担当した畑亜貴の言葉選びが鋭角的なものへ深化させている。『涼宮ハルヒの憂鬱』の「ハレ晴レユカイ」や『らき☆すた』の「もってけ!セーラーふく」といった、当時斬新だったカオスなアニソンの方法論を見事にアイドルソングとして昇華。無機質にも聴こえる萌え声ボーカルも相俟って、狂気ともいえる世界観が確立された。反面で強烈なインパクトを持ちながらもメロディラインだけをなぞると、どこか親しみやすさを持っていることがわかる。

この後、でんぱ組と玉屋の関係性は「でんでんぱっしょん」(2013年)、「サクラあっぱれーしょん」(2014年)など、その音楽性とともに歩んでいくわけだが、同時に作家・玉屋2060%の名前は確実に知れ渡っていった。

メロディメイカーとしてだけではなく、そこに付随する作詞家としての手腕も見事。楽曲が持つ妙なハイテンション具合いは、歯切れのいい軽快なリズムと、そこに乗ったノリのよいアクセントを持つ詞の語感から生まれるものだ。Aメロ、Bメロと緩急をつけながら、サビで一気に弾けて爆発。そこに加えて、キメフレーズがあったりと、王道的なJ-POPセオリーと古典的なアニソンライクの普遍性が錯綜していく。このメロディと詞が織りなすキャッチー性が、玉屋楽曲の大きな武器になっている。

ベイビーレイズ「虎虎タイガー!!」PV(2014年)

ベイビーレイズ「虎虎タイガー!!」は、ソリッドなバンドサウンドに乗せたリズミカルでコミカルな歌詞が耳に残る。“頭で考えるな! 身体で感じろ!”と言わんばかりに、ひたすらキャッチーである。特に《We are the 虎虎タイガー!! ベイビーレイズ》の連呼は1度聴いたら耳から離れず、老若男女誰もが口ずさんでしまいそうなキメフレーズだ。

ロックやポップスに多く見られる洋楽解釈の英語的なメロディではなく、日本語が聴こえるメロディの組み立て方をしている点は注目すべき作家性である。玉屋楽曲にどこか懐かしさを感じるのは、日本人に耳馴染みの深い、日本語映えするメロディとリズムであるからだろう。

オリエンタルな響きと日本語映えするメロディ

基本的にはストレートな楽曲構造を用いながらも、突飛な音使い、さらに変化球を交えたバンドサウンドとアンサンブルアレンジによって一癖も二癖もあるように仕上げられているのも注目すべきところだ。

Wienners「恋のバングラビート」(2018年)

メロディの節々や鍵盤フレーズのアレンジに見受けられる、漂う無国籍テイストであったり、民族的なリズム、オリエンタルな東洋風味は玉屋楽曲の大きな特徴の1つである。

キャッチーなハイテンションと、オリエンタルなテイストが炸裂した好例といえば、神宿「お控えなすって神宿でござる」。

神宿「お控えなすって神宿でござる」(2018年)

アイドルとしての底抜けな明るさが、聴く人を無条件に笑顔にさせるハッピーなパワー。そして、“神宿”という字面も重なって浮き彫りにされた和情緒が、楽曲全体から滲み出ている。タイトル通りのグループへのあてがきは、作詞家としての玉屋の素晴らしさが窺える。小難しい言葉を使わずに古き良き日本的な言い回しとシャレの効いた口語調の絶妙なコントラスト。サビの《今しか見えないこの世界に〜》をはじめ、符割りも言葉の収まり具合いも完璧である。まさに日本語映えするメロディだ。

当時の神宿を勢いづけた楽曲であり、現在でもライブ終盤の盛り上がりとして、人気の高い楽曲だ。

FES☆TIVE「ハレとケ!あっぱれ!ジャパニーズ!」も、グループのキャラクター性と玉屋ワールドが融合し、すさまじい破壊力を帯びた核弾頭曲。

FES☆TIVE 「ハレとケ!あっぱれ!ジャパニーズ!」(2019年)

オリエンタルな旋律とグループの色として大きく差配するワビサビを効かせた和情緒が交錯していく祝祭感。転調を思わせるサビ、挑発的なラップパート、ブレイクダウンを挟んで今度こそ本当に転調するサビ……最初から最後まで抜け目なく、聴く者に一切の隙を与えない。謎のメッセージ力が強く、絶対に歌いづらいであろう歌詞とメロディを巧みに操り、とっ散らかる寸前のギリギリのテンション感でガシガシ攻め立てるFES☆TIVEの強さをも思い知らされた曲である。

地球を飛び出して宇宙へ

“日本”、“JAPAN”……“和”を大事にしながら世界の人々に愛を振りまいていく玉屋ワールドだが、ついに地球を飛び出してしまった。煌めき☆アンフォレント「太陽系◉ワンダーラスト」である。

煌めき☆アンフォレント「太陽系◉ワンダーラスト」(2020年)

オリエンタルを超えた、スペーシーなサウンド。ノリも耳馴染みもよいので、普通に聴き流してしまいそうだが、《カンパネラ》と《アルタイル》、《アステロイド》と《ビッグバン》なんて、それを同列に並べるか!?という、壮大なんだか支離滅裂なんだかわけがわからないままの謎の説得力を持った詞世界。サウンドの指向性はここに挙げてきた楽曲とは異なれど、聴けば聴くほどにわかるメロディに込められた玉屋節の深みに唸らせられる。

もともと玉屋は、こうしたスペーシーでニューウェーヴ、ダンサブルな楽曲も得意である。

Wienners「MY LAND」(2020年)

そして、ニューウェーヴから、どこか漂う英国ポストパンクな香りは、ゆるめるモ!にて爆発する。

奇才と奇才のぶつかり合い

邦ロックファンであれば、クレジットを見なくとも誰の作曲であるかわかるであろう「Hamidasumo!」。

ゆるめるモ!「Hamidasumo!」(2015年)

ソリッドなバンドサウンドと素っ頓狂に不条理さを醸すテクノポップ具合いが、トイス!トイス!トイス!

そんな、ただでさえ狂気性を感じるハヤシヒロユキ(POLYSICS)楽曲を玉屋がリミックスをするとこうなってしまう……。

ゆるめるモ!「Hamidasumo!(Heaven&Hell Remix)」

タイトル通りの“天国と地獄”、いろいろおかしい中毒性の高い作品に仕上がっている。クセの強い原曲を、リミックスだけでこれだけ玉屋色に染め上げる力量に脱帽。

奇才と奇才のぶつかり合いで驚いたといえば、クマリデパート。玉屋の感覚的な力業具合いをサクライケンタのインテリ解釈で理路整然にまとめあげるとこうなるのか!と、感動した「シャダーイクン」。

クマリデパート「シャダーイクン」(2019年)

さらにさらに、このたびリリースされた「限界無限大ケン%」は、新体制でわちゃわちゃ具合いが増したグループの空気感をぎゅっと凝縮しながらも、玉屋とサクライ、真反対のタイプのクリエイターが鮮やかに一体化。

クマリデパート「限界無限大ケン%」

「シャダーイクン」は“この辺は玉屋っぽい”、“ここはサクライ”といった棲み分けを感じていたのだが、「限界無限大ケン%」は、フレーズは明らかに玉屋なのにサウンドがサクライ、というような融合性がイントロから炸裂してくる。玉屋のソリッドなパーティロック感とサクライのマスロック的なロジックがここまで合致するとは。それにしても、玉屋のオリエンタルな特徴的なフレーズも、独特なあのシロフォンの音色が鳴ると、一気にサクライ色が増すから不思議だ。

ハチャメチャな情報量に思えて、しっかりと日本人の感性をくすぐってくる、作家・玉屋2060%のアイドル曲。今後はどんなグループにどんな曲を書いていくのだろうか。この先もますます目が離せない。

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