生田絵梨花と松村沙友理「からあげ姉妹」ペアPVがもたらしたものとは【乃木坂46「個人PVという実験場」第19回3/4

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乃木坂46「個人PVという実験場」

第19回 音楽作品と個人PVとのリンク 3/4

 先にとりあげた「からあげ姉妹」シリーズなどの作品群は、個人PVというコンテンツが歴史を紡いでゆくにつれ、特有のクリエイティブチームを育んでゆくことになる。乃木坂46の10枚目・11枚目シングルに収録されたからあげ姉妹の個人PV、ペアPV中の楽曲「食物連鎖」や「サイダー」を制作する音楽ユニット「太陽コンピューター」がそれである。もっとも、明確にユニット名としてクレジットされるのはその次作、12枚目シングル『太陽ノック』収録の秋元真夏・西野七瀬ペアPV「真夏の七瀬」(企画:柴谷麻以、演出:淺田友梨)でのことになる。

■秋元真夏・西野七瀬ペアPV「真夏の七瀬」

https://www.youtube.com/watch?v=zwDASCEmIEQ
(※秋元真夏・西野七瀬ペアPV「真夏の七瀬」予告編)

 スナックに置かれたモニターに流されるカラオケ映像として展開される「真夏の七瀬」は、からあげ姉妹に続いて太陽コンピューターが手がけるユニット楽曲となった。同時に、秋元と西野の映像が流れる前後にささやかに置かれた演技パートによって、2人には、さらに奥行きのあるドラマが与えられている。

 もっとも、その演技パートに秋元と西野自身は登場しない。しかし、それでもなおこのスナックでのシーンは、アイドルとして生きる2人の人生を俯瞰して見つめるような趣を持つ。

 それは、かつてひとときの時間をアイドルとして生きた者たちの記憶を、ノスタルジックに刻みつけるようなものでもある。そしてまた、街の片隅のスナックで起きた小さな寓話のようなラストは、2人の現在と過去とを溶け合わせるような後味を持っている。

 太陽コンピューターは以後も乃木坂46の音楽系個人PVを相次いで担当し、それらのうちには西野七瀬「待ってるガール」や、齋藤飛鳥「ミュージカル 齋藤飛鳥」のような人気作も生まれていく。

https://www.youtube.com/watch?v=vnkfiAK43oU
(※西野七瀬個人PV「待ってるガール」予告編)

■齋藤飛鳥「ミュージカル 齋藤飛鳥」

 特に、ひとつの作品中に3曲を組み込み、齋藤がバスから観覧車、浜辺へと移動してゆくにつれてムードを変えながら歌唱を披露する「ミュージカル 齋藤飛鳥」は、もともと付属特典だった個人PVに、ある展開を持った音楽作品としての豊かさを封入してみせる好例となった。

 乃木坂46名義の音楽リリースから半歩外れた場所で、また秋元康作詞という原則からも離れたフィールドで、明確に乃木坂46オリジナルと呼べる音楽作品を発信する可能性を、こうした個人PVは示している。

https://www.youtube.com/watch?v=c8XX0oPHfXs
(※齋藤飛鳥個人PV「ミュージカル 齋藤飛鳥」予告編)

 2010年代後半に入り、新たにグループに合流することになる3・4期生の個人PVにも、太陽コンピューターは作品提供していく。

 本連載では昨年6月に3期メンバーの初期個人PVを中心的に扱ったが、それらの3期生の作品群の特徴は、乃木坂46にとってすでに個人PVが所与の前提になっていること、つまり「乃木坂46に加入する=個人PVを経験する」という構図を作中に組み込んだものが多いことだった。

 そこでは、通常どおりの形式を保って個人PVが制作されながらも、「通常どおりのタイプの個人PVを、新加入の3期生が体験する」という視点までを含みこんだメタ的な性格が必然的に生まれる。

■与田祐希の個人PV「おねがい世界」

https://www.youtube.com/watch?v=MvyFvJRPJ60
(※与田祐希個人PV「おねがい世界」予告編)

 昨年6月16日更新分でふれた与田祐希の個人PV「おねがい世界」もまた、そうした視点のドキュメンタリー的要素を半分もちながら、個人PVの典型的な形式のひとつである音楽系作品として制作されてゆく。

 このとき楽曲を担うクリエイティブチームとして呼び出されるのが、太陽コンピューターであった。乃木坂46の個人PVというコンテンツが歴史を重ねて一定の完成度に達した段階で、それらおなじみの作品を担う代表的なクリエイターとしてこのユニットは位置づけられていた。

■「おねがい世界」セルフカバーも

 やがて、太陽コンピューターは乃木坂46のパッケージングから独立した場所でも、ひとつのユニットとして作品を発表するようになる。太陽コンピューター名義での初となる正式リリース楽曲は、YeYeをゲストボーカルに迎えた「おねがい世界」。すなわち、与田の個人PVに提供した楽曲のセルフカバーである。

https://www.youtube.com/watch?v=_XOmSA7JlF4
(※太陽コンピューターfeat.YeYe「おねがい世界」MV)

 乃木坂46の個人PVの制作チームによって育まれた太陽コンピューター。与田祐希初めての個人PVを記念する楽曲を担当した同ユニットは翌年、その楽曲を自らにとって初めての単独リリース作品においても再度呼び出し、もう一度生命を吹き込んだ。

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  • 6/17 17:00
  • 日刊大衆

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