松本人志がネットの視聴率記事に激怒!『水ダウ』“視聴率そこそこ”でも強いワケ─コア視聴率とは一体何か?

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──これまで視聴率といえば世帯視聴率のことを指していた。ところが今年に入ってから調査対象を家庭内の個人にまで踏み込んで、一部地域で取得開始。この“個人視聴率”は今夏には全国へと拡大され、各テレビ局もビジネス戦略を変更し始めているが……。

『半沢直樹』(TBSテレビ系列)が驚異的な高視聴率を叩き出したことで、最近のテレビ業界ではレアケースからか、視聴率をネタにしたいわゆる「こたつ記事」が毎週のようにネットニュースに上がっていた。が、それらを眺めていると、いまだに見出しに“平均世帯視聴率”が使用されているのに気がつく。

 平均世帯視聴率とは、これまで長年“平均視聴率”として、テレビ業界が番組の広告価値を定めるために利用してきたもの。主にビデオリサーチ社が調査し、テレビ所有世帯のうち、どのくらいの世帯がテレビをつけていたかを示す割合だ。0・1%の差でも裏番組に勝てば制作陣は安堵する。そんな絶対的指標として、テレビマンたちを一喜一憂させてきた。

 しかし、もはやこの指標はテレビ業界では重要視されていない。久しぶりの大人気ドラマに、「最終回は32%超え」といった景気のいいタイトルで引きを作りたいのはわかるが、ネット記事と業界との温度差は広がってきているのだ。

「近年までは“世帯”なんてわざわざつけなくても、視聴率と言えば世帯視聴率が当たり前でした。その良し悪しで、スポンサーがつくか、高い広告料をもらえるかが大きく左右されるんですからね。そしてテレビ全盛の時代では、お茶の間も『今季はこのドラマが当たっているのか』とか『世間の話題についていくには、このバラエティを見ておく必要があるな』など、視聴率から世間の流行を知ったものです」(制作会社社員)

 だがすでに業界では、この平均世帯視聴率というものから離れようとしている。いま重視されているのは“個人視聴率”だ。

 これは2020年4月からビデオリサーチ社が始めた調査方法で、世帯内の4歳以上の家族全員の中で、誰がどのくらいテレビを視聴したかを示す割合。つまり、これまでは世帯というくくりだけで、どんな性別・年齢の人が見ているかあやふやだったところを、さらに細かく、どんな個人が、“視聴ボタン”を設置し、押すことでどれだけ視聴しているのかを調べられるようになったのだ。例えば、ある番組の視聴率を10軒の家で調査したとする。そのうち5軒で見られていれば世帯視聴率は50%となるが、同じ10軒に住む30人という個人の合計で見たときに、そのうち6人しか見ていなければ個人視聴率は20%になるというわけだ。

 これまでの世帯視聴率では、人口が多く、テレビを見る割合も高いとされる高齢者層にターゲットを絞れば、高い視聴率を取ることができた。そのため、高齢者向けに懇切丁寧でわかりやすい番組が増えていたのだ。

 ところがデータのリサーチと分析が当たり前になった昨今。スポンサー側からすれば、個人視聴率のほうがより、売りたい商品のターゲットに合わせた広告を打つことができる。そのためテレビ局も、ビデオリサーチの新たな調査に乗っかり、個人視聴率を重んじるようになった。

“半沢直樹の記事”も、よくよく中身を見てみると、申し訳程度に個人視聴率に言及しているものがある。最終の世帯平均視聴率が32・7%に対して、関東地区の個人視聴率は21・5%と、この開きを見ても、いかにこれまでの世帯視聴率が曖昧なものだったかがわかる。(ビデオリサーチ調べ)

 キー局のプロデューサーも、ネット記事が世帯視聴率でドラマを語っているのを見て、違和感しかないという。

「世帯での評価なんて、少なくとも業界ではすでに、どこもやってないです。むしろ、例えばテレビ朝日の『科捜研の女』などのように世帯視聴率が高くても、若いターゲットが取れてない番組は問題視されてますからね。逆にTBSの『水曜日のダウンタウン』のような、世帯視聴率では同時間帯で負けることがあっても、若年層の視聴率が高い番組は評価されています。尖った内容で賛否両論ありますが、少々問題が起きても会社としても守れる番組ですね」

 個人視聴率で細かな世代や性別のデータが取れるようになったことで、これまで年配の視聴者にしか見られていなかった番組が浮き彫りとなった。そして今、テレビ離れが進んでいるといわれる若い世代の数字にも、目が向けられている。彼らは「お金を使わないのではないか」という風に見られているフシもあるが、若い世代に商品を売りたいスポンサーからはより、視聴率の細かいデータまで厳しく審査されるようになる。そして、そもそもの数字が著しく低いこの世代の視聴率を上げずにテレビ業界に未来はないと、各局が戦略を練り始めたところだ。

「もちろん若い世代といっても、求められているのは幅広い年代です。日テレは13~49歳を“コアターゲット”と呼んでます。特に個人を重視して、その上でコアターゲットも狙っていくというスタイルです。テレ朝は13歳~59歳をFコアと呼んで重視してますね。TBSは個人よりも、13歳~59歳をファミリーコアと呼んでいる。各局、多少の違いはありますが、マーケティングが変わったことは間違いないです。世帯視聴率を取っているだけではだめで、いかに有効視聴者を獲得できているかが大事です。実はテレビ朝日はその取り組みが遅くて、いまだに『うちは世帯視聴率がいいから』と言っていたので、去年まで他局から白い目で見られてましたね」(キー局プロデューサー)

 実はテレビ朝日は他の局が個人視聴率に舵を切る中、19年まで世帯重視主義を貫いていた。実際ネットニュースで、同時間帯の視聴率で王者だった『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系列)に『ポツンと一軒家』(テレビ朝日系列)が勝った、という記事をよく目にしたのだが、一昨年までは当のテレビ朝日も日本テレビの日曜日の牙城を崩したと嬉々していたわけだ。

 実際にはそれほど喜ばしい状況ではないことに気がついたのは、個人視聴率に視点を変えてからだろう。例えば9月最終週の両番組の平均世帯視聴率を見ても、「イッテQ」が13・5%なのに対して、「ポツンと一軒家」は16・8%と水をあけているようにも見えるが、個人視聴率で見ると、「イッテQ」が9・2%で、「ポツンと一軒家」が9・3%で、わずか0・1%の差しかない(ビデオリサーチ調べ)。しかも、同番組の制作は系列局の朝日放送テレビであり、自局のオリジナル番組で勝負できているわけでもない。

 さらにテレビ朝日は配信サービスでも大きな遅れを取っているという。

「テレビ朝日はとにかくあらゆる対応が遅い会社ですね。最近は『TVer』のような配信サービスも増えましたし、日本テレビなら『Hulu』、TBSとテレ東は『Paravi』、フジテレビは『FOD』など、配信で稼ぐ仕組みを作ろうと躍起になってます。そんな中、系列のAbemaがいまいちうまくいっていないテレビ朝日が、『TELASA』という配信サービスをやっと作ったのが20年4月です。ネットフリックスなどのVODサービスや、各種サブスクが溢れている中、新たに月額料金を払うユーザーは少ないですよね。加入者が増えず、オリジナル番組もほとんど作れていない状況です。他局と違って不動産業など、放送以外に収入源がないのも苦しいところです」(放送作家)

 世帯視聴率は、テレビをよく見る世代の人数を奪い合う、という側面もあった。少ないパイを争っても、共倒れは目に見えている。テレビになじみのない人も多い若い世代に目を向けるということは、他局以外のライバルたちをはっきりと認識することでもある。飽和するメディアやコンテンツの中で、いかにテレビ番組に振り向かせるか。これまで高視聴率を取るために高齢者に向けた番組が生まれていったのと同じように、若者にも見られる番組へと内容も変化していかなければならないのだ。
(月刊サイゾー編集部)

※「月刊サイゾー」11月号より転載。関連記事は「サイゾーpremium」でお読みいただけます。

※本記事は2020/12/31 16:00にアップしたものを、再掲載いたしました。

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