インスタ映えするインスタグラマーが「あえてコンプレックスを晒け出す」ワケ

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 スマホが普及し、SNSが台頭してきたことで生まれたのが「ユーチューバー」や「インスタグラマー」だ。最近では、ライブ配信アプリを生かして収入を得る「ライバー」も登場しており、ネットを主戦場として活動するインフルエンサーはさらに多様化しているといえよう。

 華やかな世界ゆえ、憧れを抱く職業として注目されるインフルエンサーだが、収入を安定させるにはかなりの努力が必要になる。
 
 今回はファッション、メイクなど、“美”について発信し続けているインスタグラマーの伊藤実祐(みゆちゃい:29歳)さんに、インスタグラマーとして仕事をするようになった背景や今後の展望について話を聞いた。

◆学生時代から芸能に憧れるも、担任の勧めで看護の道へ

 伊藤さんは大阪出身で、小中高と過ごした学生時代では「とにかく目立つことが好きだった」と当時を振り返る。

「クラスの学級委員長や体育祭の団長などを務め、人の上に立ってまとめることを率先してやっていましたね。お母さんからも『人見知りせず、物事に動じない性格』と言われていて、アクティブに学校生活を過ごしていたと思います」

 ただ進路を決める際は、特になりたい職業や将来像を思い描いておらず、担任の先生の言われるがままに看護学校の道へ進むことを決めたという。

「『伊藤は頭がついてくれば、看護の世界で活躍できる』と先生に言われ、親にも看護学校へ行った方がいいと念押しされたんです。私自身も、なんとなく『看護の道へ進んでみるか』といった軽い気持ちで高校卒業後を考えていたため、自分の意思を持って、進学したわけではなかった。

 むしろ、高校生の頃は倖田來未やEXILEのような歌って踊れる芸能人になりたいと思っていて(笑)。今振り返れば、学生時代から芸能の仕事に憧れを持っていたのかもしれません」

◆中途半端な気持ちで入ったがために、看護学校を半年で中退

 こうして看護師を目指すべく、看護の専門学校へ通うことになったものの、わずか半年で中退してしまったそうだ。

「中途半端な気持ちで入ったので、モチベーションが続かなかった」と話す伊藤さんは、続けてこう語る。

「何度も泣いてしまうくらい、勉強がすごい大変で……。でも、周りの学生はやる気に満ちあふれていて、積極的な姿勢で勉強する姿を見て温度差を感じたんですね。ここは自分のいる場所ではないと。そう悟って中退を決意しました。もちろん、親に大反対されるのは覚悟の上で、『学費の150万円はアルバイトで貯めて返すから、看護学校やめたい』と切り出したんです」

 それからというもの、ローソン、ユニクロ、焼肉屋や立ち呑み居酒屋など、さまざまなアルバイトを掛け持ちしながら資金を工面していったという。

 そして20歳になったのを機に、福利厚生がしっかりと完備されている病院のリハビリ助手の職へ就くことになる。

「もともと医療事務免許はあったので、ハローワークで探し、リハビリ助手として働き始めました。日中の仕事を通して、社会人の経験を積もうと思ったんです」

◆思わぬ形でサロンモデルとしてデビューすることに

 ここまではごく普通の生活を送っていた伊藤さんは、久しぶりに会った友人にインスタグラムを教えてもらったことで、アカウントを作ることになったそう。

「『インスタっていうSNSは面白いから登録した方がいい』と友人に勧められたので、とりあえずアカウントを作ってみたんです。投稿する内容もごはんの写真や彼氏との様子など、最初はごくありふれたものだけでした。初めからインスタグラマーになろうとは全く考えてなかったんです」

 そんなある日のこと、友人から「美容師デビューするための作品撮り(編注※1)をさせてほしい」と声をかけられ、サロンモデルとして偶然白羽の矢が立ったという。

※1ヘアスタイルの写真を撮り、PRや宣伝に活用すること

「美容院のホームページやネットの集客サイトに載せる宣材写真を撮る際に、サロンモデルを起用するわけですが、そんな仕事があること自体、全然知らなくて(笑)。本当に興味本位でモデルを買って出たんです。後日上がってきた写真をもらい、インスタにたまたま投稿したところ、今までにない反響があり、他の美容師からサロンモデルの依頼がDMで来るようになった。案件をひとつずつこなし、また『#サロンモデル』というハッシュタグもつけて投稿を繰り返していったところ、どんどん依頼も増えていったんですね」

◆「自分も金額交渉できるようになりたい」。無報酬から脱却するための努力

 一躍サロンモデルとして頭角を現し始めた伊藤さんだが、始めたばかりの頃は無報酬で依頼を受けていたという。

 いわば、SNSヘ投稿する写真との“等価交換”としてサロンモデルの案件をこなしてきたなかで、次第に『金額交渉できるようになりたい』と考えるようになったそうだ。

「初めは盛れて、可愛い写真を撮ってもらえるので、交通費を払ってでもサロンモデルの案件を受けていました。ただ、場数をこなすうちにカメラ写りやポージングを練習し、サロンモデルとしてお金を払いたくなるような価値を出せるように努力したんです。というのも、サロンモデルだけで生計を立てている人もいると聞いて、自分もそんな女性になりたいなと心の底では感じていました」

 こうした努力が身を結び、あるとき大阪で名を馳せる有名な美容師からサロンモデルの依頼が舞い込んできた。

「その美容師からお声がかかると、仕事の数が増えると聞いていたので、『これはチャンスだ!』と身震いしました。その人に撮ってもらった写真をインスタにアップしてから急激にフォロワーや撮影依頼が増えていったんです。1ヶ月に70件以上も案件をこなすこともありました」

◆案件の依頼が増えすぎたタイミングで、独立を決意

 しかし、撮影依頼があまりにも増えすぎて、やむなく断るケースも結構多かったそうだ。

 平日の日中はリハビリ助手に勤しみ、夜の時間や土日にまとめてサロンモデルをこなしていた伊藤さんは、いつしか独立しようと考えるように。

「サロンだけではなく、アパレルやウェディングのモデル案件もいただいていたのですが、そういうのは決まって平日の日中が多く、リハビリ助手の仕事の関係で断るしかなかった。ただよく考えてみると、私が断ったことで他の誰かがモデルを務めるわけで、なんとなく切ないというか悔しいというか……。どうせなら、せっかく依頼が来たのを全部引き受けたいと思い、完全にサロンモデル1本でやろうと決心しました」

◆等身大の自分を見せ、素の自分を晒け出すこと

 24歳の時に上京し、東京を中心に活動するようになった伊藤さん。現在インスタグラムのアカウント(@miyu.61)はフォロワー数が29万人を超える。

 いわゆる“インスタ映え”が話題になった頃は、おしゃれなロケーションで全身を写した写真を投稿するユーザーが多いなか、伊藤さんはバストアップやメイクアップ系の写真を投稿したり、またフォロワーからのDMの質問をストーリーに流してコミュニケーションを図ったりと、今では一般的になっているトレンドを先取りしてきたのが、多くのファンを獲得できた要因になっているそうだ。

 そんな伊藤さんに、フォロワーと仲良くするために心がけていることについて聞くと「等身大の自分を見せることが大切」と説明する。

「インスタはもちろん、綺麗に見せる写真加工や“映え”を作るテクニックも重要ですが、何より私が意識しているのは『コンプレックスを晒け出す』ことなんです。背骨が曲がっていてスタイルがよく見えないことや、肌が汚いことなど、普通は隠したくなることも、嘘をつかないで素の自分を見せる。また、インスタグラマーとしてやっている手前、企業から広告案件をいただくことも多いのですが、あくまで『自分が使ってみて、本当にいいと思わなければ宣伝しない』というスタンスでやっています」

◆“可愛くなろうという努力に勝る可愛さなし”。自身の原体験から生まれたアパレルブランド

 コロナ禍の2020年5月からは、上京後Instagramマーケターとして執行役員CBOを務めているネクスター株式会社のグループ内で、D2Cファッションブランド「 Emélla (エメラ)」を立ち上げ、同ブランドのクリエイティブディレクターとして新しい道への挑戦に乗り出した伊藤さん。

 アパレルをやろうと思ったきっかけは「コンプレックスを抱えている女性に、少しでも自分を好きになってもらうような洋服を作りたい」としながらも、サロンモデルをやり始めた頃のコンプレックスが原体験になっているという。

「サロンモデルをやる前は正直、『自分はイケてる』と思っていたんです。それがモデルの仕事を始めて可愛い子に囲まれると、自分の至らないところが目立ってしまい、コンプレックスに感じるあまり、自分のことが好きじゃなくなった時がありました。

 そんな時、お母さんに言われた「まず自分で自分のことを好きになってあげな、誰も実祐のこと好きなってくれへんで 」という言葉を思い出して吹っ切れたんです。そこからはメイクの練習やエステ、エクササイズなど自分を美しく見せるために努力を重ねていき、一番興味を持ったのがファッションでした。 色々なコンプレックスを抱えていても、気に入った洋服を着ていれば自信が持てるというか、自己肯定感を高められると感じたんですね。そこから、2年くらいの構想を経て、独学でラフ画の書き方や生地の選び方を学んでいきました」

 こうして誕生したEméllaは、伊藤さん自身が体現してきた“可愛くなろうという努力に勝る可愛さなし”をスローガンに、ECサイトを中心に展開していくという。

◆今後の展望は?

 さらに、今年4月からはYouTubeチャンネル「伊藤実祐のみゆちゃいchannél」も開設し、さらなる飛躍が期待される伊藤さんに、今後の展望を聞いた。

「インスタだと伝えられる情報や世界観は限られるため、もっとファンの方と交流できる手段としてYouTubeチャンネルを始めました。ただ、YouTubeはインスタに比べて加工ができないため、容姿のことで何か言われるんじゃないかとずっと不安だったんです。

 もし、失敗してファンの信頼が揺らいだら、インスタグラマーとして再起もできないのでは。そんな懸念もありましたが、自分の顔のメイク方法や加工術を1本目の動画で暴露して、ありのままの自分を発信していくことを心がけたことで、今ではだいぶ慣れてきました。今後は二足の草鞋ならぬ三足の草鞋ではありますが、インスタグラマーとしての自分、魅力的なYouTubeチャンネルを作っていくこと、そして Emélla を『伊藤実祐のブランド』という印象から『ブランド』として独り立ちさせられるように頑張っていきたいと思います」

<取材・文・撮影/古田島大介>

【古田島大介】
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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