【実は奥深い感動作】子供も大人も楽しめる『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』

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ビアトリクス・ポターの名作絵本を映画化した『ピーターラビット』の続編。前作から3年、トーマスとビアが結婚し自分の居場所が失われることを危惧したピーターが、父の友人と出会い変化していく様を通し、本当に大切なものを見極めるために必要なことを描いた作品です。6/25(金)公開ですが一足早く見どころをご紹介!

あらすじ

 前作から3年−−ついに、ビアとマグレガーが結婚することに!ここ湖水地方で、ピーターはビアとマグレガーと“家族”として仲良く暮らすはずが、父親気取りのマグレガーに叱られ続け、イライラの毎日。元々マグレガーとは犬猿の仲で、ピーターの父親をパイにして食べた因縁の一族のひとりという遺恨もある。「あんなヤツ、父親じゃない!こんな生活ウンザリだ!」我慢の限界を超えたピーターは、湖水地方を飛び出し大都会へ家出してしまう−−。そこで出会ったのは、ピーターの父親の親友だったと語るバーナバス。都会でタフに生き抜くバーナバスに父親のような頼もしさを感じるピーター。しかし、人間に恨みを抱くバーナバスは、人家の冷蔵庫から野菜や果物を盗み、都会の動物たちを組織して、人間への復讐の機会をうかがっていた。ある日、バーナバスはイギリス中から市場に集まった最高級ドライフルーツの強奪作戦を計画。認めてもらいたいピーターは、湖水地方の妹や動物の仲間たちをメンバーに加えて作戦に参加する。作戦が成功したかに見えたその時、人間に捕まってしまう妹や仲間たち−−。最大の危機にピーターの前に現れたのは…まさかのマグレガー!?

子供も大人も楽しめる!不朽の名作「ピーターラビット」

 全世界で発行部数2億5000万部を超えるビアトリクス・ポター原作の名作絵本「ピーターラビット」シリーズ。実際に絵本を読んだことのない方であっても、1980~1990年代にキューピーマヨネーズのCMキャラクターとして起用されていたり、三菱UFJ銀行のキャラクターにも起用されていたりと、その愛らしいうさぎのイラストだけなら目にしたことがあると思う。

BEDFORD, ENGLAND - FEBRUARY 05: Vue hosts a special screening of Peter Rabbit just for bunnies at Vue in Bedford on February 5, 2018 in Bedford, England. (Photo by Jeff Spicer/Getty Images for Vue Cinemas)

 そんな不朽の名作が、『ANNIE アニー』などを手掛けるウィル・グラック監督の手によって映画化されたのが2018年。全世界で興行収入386億円を超える大ヒットを記録し、発祥の地となるイギリスでは『リメンバー・ミー』の記録を抜いて同年のナンバー1ファミリー映画の座を獲得。日本でもピーターラビットの吹替を俳優の千葉雄大が務めるなどして、大いに話題を呼んだ。そして、監督・キャスト続投にて製作された続編となる本作が、コロナ禍による公開延期の憂き目に遭いながらも、3年の時を経ていよいよ公開される。

シリーズ1作目『ピーターラビット』

 前作をご覧頂いている方であれば、既に見る気満々でいると思うのですが、人によっては子供向けの映画であると、優先順位低めで問題のない作品であると捉えてしまっているのかもしれません。白状しますが、かく言う私がそうでした。2018年の前作公開時はまさにそんな思考で作品を捉えており、見るのをスルー。今回の続編を目にするにあたり、初めて前作に触れました。そして、その奥深い世界観に引き込まれ、ガラッと作品に対する評価が激変!そう、この『ピーターラビット』シリーズは、ピーターら動物らのコミカルでキュートな仕草から、子供が大いに楽しめる作りになってはいるものの、実は大人が目にしても響く要素がふんだんに盛り込まれているのです。ナメてかかればかかった分だけ、きっと胸打たれてしまうものがあるに違いない。

前作で描かれていたもの。そして…

 前作をご覧頂いていない方、見たけど記憶が曖昧という方のために、軽く前作のおさらいです。イギリスの湖水地方で仲間に囲まれ生活を送っていたピーターら動物たち。大きな屋敷を構えるマグレガー家の野菜を盗もうと庭に忍び込んでは、追い払おうとするマグレガーと衝突を繰り返す毎日。近所に住む画家のビアが庇ってくれることで何とか均衡を保っていたある日、マグレガーが心臓発作で倒れ亡くなってしまう。そこに現れたのが、都会で暮らしていたマグレガーの親族・トーマス。起業のために亡き大叔父の屋敷を売りに出すべく、うさぎ退治に性を出すトーマスであったが、ビアに惹かれたことでうさぎ退治を躊躇いつつも、ビアとトーマスが親しくなることを良しと思わないピーターらと何度も何度も衝突を繰り返す。そして…。というのが前作の大まかなあらすじ。

 気楽に見ることも可能であるし、ピーターたちとトーマスのコミカルな衝突が笑いを誘う。表面上はそんな作りになっている前作。しかし、根底において扱っていたものは、非常に重く、それは戦争映画などで目にする類いのものと大差ない。そもそも、かつてピーターらの父親がマグレガーに捕らえられパイにされている(殺されている)のだが、つまるところマグレガーはピーターらにとって親の仇。大前提として、ピーター家とマグレガー家には大きな因縁がある。その因縁をトーマスは知らずにいたが、ピーターらにとっては、トーマスもマグレガー一族の一人であることは変わらない。その辺りが色濃く描かれていくわけでもないのだが、その後の展開も相まって、関係ないとは言い切れない要素の一つとなっていく。

 トーマスがピーターらに攻撃を仕掛ければ、今度はピーターらがトーマスに攻撃を仕掛ける。絶えずその繰り返し。その構図は「やったらやり返される」、つまりは報復の連鎖でしかない。そして、報復合戦の行き着く先は、どちらかが根絶やしになるまで続けるか、和解の道を模索するかの二つに一つ。しかし、そう簡単に後者は選べない。叩かれたら叩き返したくなるものだし、殴られたら殴り返したい。それが人間。誰だって自分が勝利者でありたいに決まっている。そうして和解の道を選ぶことができず、泥沼の殺し合いにまで発展していってしまうことを、僕たちは数多の歴史を通して知っている。彼らの対立もやがて大惨事を招き寄せることになるのだが、そこで和解の道を、対話の道を見出していくことになるのが、前作の落とし所であり、素晴らしい所。ある意味、「ピーターラビット」の皮を被った戦争映画と言っても過言ではない作りになっていた。(下記動画を見るだけでも、報復合戦の片鱗は感じ取れると思います。)

 そんな報復合戦の呪縛から抜け出し、戦後の彼らの日常を目の当たりにすることになるのが続編となる本作。戦争が終わったからといって、「めでたしめでたし」ということはなく、僕らが生きるこの現実同様、たとえ戦争が終わろうとも、戦争へと至る火種は常に燻り続けている。平穏な日々を維持していくためには、いつだって努力が必要不可欠。言うなれば、前作が憎しみの連鎖に囚われてしまう人の心、憎しみの連鎖を断ち切るための希望を描いた作品であったのなら、本作は平穏な日々の中であってもいくらでも生じ得る不和や誤解、どうしたら人は大切なものを見極められるのかといった、前作から地続きとなっているドラマが展開されていくのである。

大切なものを見極めるために必要なこと

 身近な人や大切な人とでさえ、些細なことですれ違ったり誤解が生じてしまう。時には分かり合えなくなってしまう瞬間だって訪れる。そんな時に、救いの手や甘い言葉の一つでも投げかけられたら、ついつい楽な方へと流されてしまいがち。そんな経験の一つや二つ、あなたにもないだろうか。前作を経て和解へと至るも、些細なことで揉めてばかりいるピーターとトーマス。本作冒頭にて結婚へと至るも、本の出版を巡って少しずつズレが生じていくトーマスとビア。二人が結ばれたことによって、自分たちの居場所や立ち位置に不安を覚え始めるピーターなど、日常の中で生じ得る様々な人間関係の不和が物語を大きく動かしていく。

 言わずもがなであるが、家族・恋人・友人だからといって、何でも分かり合えるとは限らない。楽しい時間もあれば、苦しい時間もあり、数多の時間を共有していく中でこそ関係性は育まれ、理解し合える領域や度合いが増していくもの。まだその過渡期にあるからこそ、彼らは迷い、疑い、間違える。本来向き合うべき問題から目を背け、目先の安寧に心を奪われてしまう。本作の副題「バーナバスの誘惑」が指し示す通り、亡き父の友人で、レッテルなどで自分を判断せず、心から必要としてくれる存在が現れたことで揺らいでいくピーター。自分の作品が評価されたことで舞い上がり、出版社に言われるがまま“描きたい”作品から“売れる”作品にシフトしていくビア。そんなピーターやビアの変化を汲み取り切れず、多くを取りこぼしていくトーマス。そんな彼らの心に生じていく様々な葛藤を通し、僕たちが生きるこの現実においても重要なことが垣間見えてくる。

 湖水地方を離れ、バーナバスらと行動を共にするようになるピーター。出版社のリクエスト通りに売れる作品作りを始めるビア。それまで知らなかった世界や価値観に触れることで、視野が広がったり人生が大きく激変していくこともある。それがプラスに働くかマイナスに働くかは人それぞれだが、彼らの姿を目にしていく中で、自ずと見えてくることがある。それまで知ることのなかった世界や価値観に触れるということは、それまでの日常であったり、それまでの環境や繋がりを見つめ直す機会にも巡り会えるということ。当然見劣りしてしまうこともあるが、大きく見直すことになる場合もある。離れてみて初めて気が付ける親の愛、親への感謝ではないが、当たり前だと思っていたことが実は当たり前ではなかったということに気が付けるチャンスに彼らは巡り会う。そう、何事も当たり前と化してしまえば、その価値を見誤る。一度離れてみることで多くを見つめ直し、自分にとって本当に価値あるものが何であるのかを見定めることができていく。一見コメディタッチな世界観ながらも、前作同様、物語の根底には奥深い人間ドラマが描かれているのです。

総合評価

 あれこれ重苦しいことばかり書きましたが、基本的には気軽に楽しめる作品です。根底に宿るテーマが骨太であるからこそ、より深く想いを巡らせられる作品に仕上がっているだけで、どう楽しむかはあなたの自由!お子様と一緒に見に行くのもありですし、一人で見に行くのもモチロンあり。前作を見ておらずとも楽しめると思いますが、前作のドラマを経て辿り着いた本作のテーマでもあるので、可能であれば前作も見ておくことをオススメします。是非劇場でご覧ください。

青春★★★
恋 ★
エロ★
サスペンス★★★
ファンタジー★★★
総合評価:B

『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』
6月25日(金)全国ロードショー
原題:Peter Rabbit 2: The Runaway
上映時間:1h33min
US公開日:2021年6月11日予定
監督:ウィル・グラック(『ピーターラビット』『ANNIE/アニー』) 
声の出演:ジェームズ・コーデン(『オーシャンズ8』CBSトーク番組「レイト×2ショー with ジェームズ・コーデン」司会)/マーゴット・ロビー(『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』)/エリザベス・デビッキ(『TENET テネット』)
出演:ドーナル・グリーソン(『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』)/ローズ・バーン(『ANNIE/アニー』)  
日本語吹替版:千葉雄大(ピーター)/哀川翔(バーナバス)/浅沼晋太郎(マグレガー)/安元洋貴(ナイジェル)/鈴木達央(まちねずみジョニー)/森久保祥太郎(こねこのトム)/木村昴(大道芸リス)/千葉繁(JWルースター2世)

関連リンク

  • 6/14 23:00
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