ディズニーが新進の映像作家を支援するプロジェクト「Launchpad」珠玉の短編6作品レビュー

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Disney Launchpadは、様々なバックグラウンドを持つ新世代の若き映像作家をディズニーが発掘・支援し、ユニークな視点で描いた彼らの短編作品を世界配信する、まさに“Launchpad(ロンチパッド=発射台)”となるようなプロジェクト。第1弾となる短編映画6作品が現在ディズニープラスで配信されている。

コロナ感染拡大により人々の価値観が大きく変わろうとしている現在、企業の評価は資産や売り上げだけではなく、そのフィロソフィーに共感できるかが大きな鍵となる時代になってきた。
マーベルやスター・ウォーズなどのフランチャイズや、ピクサーやディズニークラシックなど大ヒットアニメを世に送り続け、映画業界とそれに関わるビジネスに君臨するコングロマリットという印象が強かったディズニーが新たに取り組んだのが、新人の発掘そして育成という投資と社会貢献を兼ね備えた新しいプロジェクトだ。
このプロジェクトが持つ意味は、ここ最近、ルーカス・フィルムやFOXなど完成形を買収して巨大化してきたディズニーの方針から大きく転換する大きな一歩だと感じる。

©2021 Disney

短編映画は、尺が短いからこそ映画を作る側、そして観る側にとっても明確なメッセージが伝わりやすいという一面がある。
今年のアカデミー賞短編実写映画部門で最優秀賞を受賞した『隔たる世界の2人』も、タイムループというユニークな要素を加えながらも、ジョージ・フロイドさん殺害事件を機にアメリカで沸き起こった黒人差別と警官の暴力に抗議する社会運動「Black Lives Matter」を想起させるテーマが明確なストーリーだった。

Disney Launchpad第1弾となる今回は、「発見」がテーマ。
1,100人を超える応募者から選出されたアジアや南米をルーツにもつ新進気鋭の6人の映像作家が、人種・ジェンダー・異文化など多様性をテーマにユニークな視点で描き、各話約20分弱の短編が収録されている。

©2021 Disney

(後列左から)モキシー・ペン、ハオ・ズン(前列左から)アクサ・アルタフ、アン・マリー・ペイス、ジェシカ・メンデス・シケイロース、ステファニー・アベル・ホロヴィッツ

自分とは異なる他者を理解し尊重し合う事の大切さを描いた6本の短編を観て、ディズニーの新しいプロジェクトに向けた意気込みを是非感じとってほしい。

『リトル・プリン(セ)ス』

©2021 Disney

ストーリー

引っ越して来たばかりの中国人の少年ロブは、スクールバスの中で知り合ったバレエが⼤好きな7歳の中国⼈少年ガブリエルと仲良くなる。家族ぐるみで親交を深めることになったが、ロブの⽗はガブリエルの「⼥の⼦らしい」⾔動に気づき、2⼈の友情を引き裂こうとする。

©2021 Disney

中国湖南省出⾝のモキシー・ペン監督は、自らの幼い時の経験を映像化したと語っている。
劇中、ガブリエルがピンクのヴェールからのぞく世界が映し出されるが、このシーンはまさに自分の思想や判断基準が、他人と全く同じとは限らないというこれからの時代に求められる多様性への理解を象徴しているかのようだった。
ピンクや人形遊びが好きなのは女の子という古い固定観念に縛られたロブの父親に対し、ありのままの息子を受け入れているガブリエルの両親、そして、ガブリエルのために作った人形にピンクのチュチュを着せていた偏見のない純粋な心を持つロブ。今後の新しい価値観をさらりと描いた監督の手腕が光る一編だ。

『若きバンパイアの憂鬱』

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ストーリー

メキシコ系アメリカ⼈で、半分⼈間・半分バンパイアのヴァル・ガルシアは、⼈間の世界でもモンスターの世界でも⾃分の正体を隠していた。ところがある日、⼈間の親友がモンスター学校に迷い込んできてしまい、ヴァルは⾃分⾃⾝と向き合うことを決意する。

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テネシーで⽣まれ育ち、現在はロサンゼルスを拠点に活動するメキシコ系アメリカ⼈のアン・マリー・ペイス監督は、モンスターと人間の間に生まれた少女の葛藤を描いている。
バイセクシャルでもある監督は、2つのアイデンティティに悩んだ自らの体験に基づいて、多文化の共存や決められた型に収まらない⼼の在り⽅を描いている。
一つ気になったのが邦題。原題は「Growing Fangs」=成長する牙、というバンパイアでもある彼女の決意を象徴した絶妙なタイトルだが、『若きバンパイアの憂鬱』という邦題はこの作品のポップさが伝わらず、いささか違和感を覚えた。

『トラになろう』

©2021 Disney

ストーリー

親を亡くした悲しみを乗り越えられないアヴァロン。4歳の⼦供の⼦守をするうちに、意外にも悲しみが少しずつ癒やされていく。

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10年間舞台の演出をした後、映画に転向したステファニー・アベル・ホロヴィッツ監督の作品は、傷ついた少女の心の変化を描いた一編。他の短編が明確なテーマがあるのに対し、本作は、驚くようなシーンや奇抜な仕掛けも全くないシンプルなストーリーが淡々と綴られている。それなのに演じる俳優の演技と彼らの感情の変化を表す見事な演出で最後まで飽きることなく観ることができた。また男性カップルに育てられているノア役を演じた少年の愛らしさが強く印象に残った。

『ディナーをどうぞ︕』

©2021 Disney

ストーリー

全寮制のエリート学校に通う中国⼈留学⽣は、まだ留学⽣が誰も採⽤されたことがないリーダー役の試験に挑戦し、努⼒ではその役を勝ち取れないと気付く。

©2021 Disney

人種差別や留学生の厳しい現実を描き、6本の中では一番ほろ苦さの残る一編。世の中ハッピーエンドばかりではないんだよ、というディズニーへの皮肉もほんのり感じられるが、主人公は自分の気持ちをさらけ出すことによってその鬱憤を晴らし、ただでは終わらないところが痛快だった。人気ドラマ「ツインピークス」のローラ・パーマーの父親役で知られるレイ・ワイズが、良き理解者のふりをした偽善者の校長役で登場している。

『最後のチュパカブラ』

©2021 Disney

ストーリー

⽂化が存在しなくなった世界。伝統を守ろうと奮闘する孤独なメキシコ系アメリカ⼈の⼥性 が、知らず知らずのうちに古代の⽣き物を呼び出してしまう。

©2021 Disney

映画を観る理由の一つとして、異文化に触れる点があると常々思っているが、この作品では名前はなんとなく知っていたチュパカブラが出てきて私自身にとっては6本の中では一番のお気に入り作品となった。映画にはファンタジーとイマジネーションが必要不可欠だと改めて思わせてくれる。日本における河童やツチノコのような存在のチュパカブラと老女とのやりとりが何とも微笑ましく、チュパカブラの外見がディズニーの人気キャラクター、スティッチになんとなく似ていると思ったのは気のせいだろうか…。

『イード』

©2021 Disney

ストーリー

イスラム教徒でパキスタン移⺠の少女アミーナは、イードの⽇、学校を休めないと知りショックを受ける。イードを休⽇にするためにアミーナは孤軍奮闘して署名活動を始める。アミーナの願いはかなわなかったものの、両親が学校で開いてくれたパーティーですれ違っていた姉と再び⼼を通わせ楽しいイードを過ごす。

©2021 Disney

イスラム教の断食明けの祭り“イード”がテーマの本作は、クウェートでイスラム教徒のパキスタン⼈とスリランカ⼈の両親に育てられたアクサ・アルタフ監督作品。元々移民についてのストーリーを撮りたかったと語る監督だが、この作品を観ていると、アメリカにはいろんな人種が住み、異なる文化が共存していることを改めて感じることができる。この狭い日本に暮らし、同じ人種としかほとんど触れ合わない生活を送るイードを知らない自分に新たな「発見」を教えてくれた作品だった。

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  • 6/14 12:20
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