ペルー発、女性監督が乳児売買を描く野心作『名もなき歌』7月公開、予告編到着

2019カンヌ国際映画祭・監督週間で注目を集め、2020年のアカデミー賞では国際長編映画賞・ペルー代表に選ばれた新鋭女性監督メリーナ・レオンの『名もなき歌』が公開決定。ポスタービジュアルと予告編が公開された。

1988年ペルー、実際に起きた事件を基にした衝撃のドラマ

1988年、政情不安に揺れる南米ペルー。貧しい生活を送る先住民族の女性ヘオルヒナは、妊婦に無償医療を提供する財団の存在を知り、首都リマの小さなクリニックを受診する。数日後、陣痛が始まり、再度クリニックを訪れたへオルヒナは、無事女児を出産。

しかし、その手に一度も我が子を抱くこともなく院外へ閉め出され、赤ん坊は何者かに奪い去られてしまう。夫と共に警察や裁判所に訴え出るが、有権者番号を持たない夫婦は取り合ってもらえない。新聞社に押しかけ、泣きながら窮状を訴えるヘオルヒナから事情を聞いた記者ペドロは、事件を追って、権力の背後に見え隠れする国際的な乳児売買組織の闇へと足を踏み入れる――。

現代社会の様々な問題を浮き彫りにした野心作

ペルー出身の女性監督、メリーナ・レオンの長編デビュー作となったこの作品は、かつて新聞記者だったメリーナの父が追った、実際に起きた事件に基づいて作られた。2019年カンヌ映画祭・監督週間以来、世界10数か国の映画祭において作品賞ほか32部門で受賞。昨年のアカデミー賞・国際長編映画部門ではペルー代表作品に選ばれ、本賞ノミネートは逸したものの、その抑制を利かせた演出スタイル、モノクロ×スタンダードの画面に際立つビジュアル・センスは、新たな才能の誕生を実感させた。

赤ん坊を奪われた母親の悲哀と絶望、そして、孤独な新聞記者が内に秘めた苦悩と使命感を描いた本作は、貧困と格差、人身売買、民族差別とジェンダー差別、全体主義とテロリズムといった社会問題を浮き彫りにし、現在と地続きであることを静かに提示してみせた野心作。

『名もなき歌』は7月31日(土)よりユーロスペースほか全国にて順次公開。

(text:cinemacafe.net)

2021/6/14 13:30

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