映画『Mr.ノーバディ』 くたびれ気味のおじさんがブチギレたら… 意外な展開連続の痛快アクション!

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見るからに冴えない中年男が、怒りを爆発させて悪者どもを叩きのめす!予想の斜め上を行く展開が連続する異色アクション『Mr.ノーバディ』(6月11日公開)。出だしこそコミカルながらアクションはなかなかハードで、本格派のアクション映画ファンも満足できるこの作品のあらすじと見どころをご紹介しよう!

『Mr.ノーバディ』あらすじ(ネタバレなし)

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金型工場に勤めるハッチ(ボブ・オデンカーク)は、郊外にある自宅と職場を路線バスで往復するだけの単調な毎日を送っている、冴えない中年男。見た目は地味で目立った特徴もない、「何者でもない男」だ。どちらかと言えばショボクレた感じのルックス。しかも、職場では仕事が過小評価され、家庭でも浮いている。ゴミ出しすらまともに出来ず、妻のベッカ(コニー・ニールセン)には距離を置かれ、息子のブレイク(ゲージ・マンロー)からも尊敬されない。よく言えば温厚だが、この世の理不尽なことをすべて受け入れてしまい、決して歯向かおうとしないため、弱腰だと思われてしまっている。
ある夜、ハッチの家に強盗が押し入る。反撃しようと思えば十分可能だったにもかかわらず、暴力と事態の悪化を恐れたハッチは何もしなかった。このことで失望した家族はさらに彼と距離を置くようになってしまう。
失意の中のある日、ハッチが仕事帰りに乗っていたバスに、チンピラグループが強引に乗り込んでくる。乗客や運転手にからみ、乗客の若い女性に手を出そうとしたのを見かねて止めようとしたハッチを「ジジイ」呼ばわりするチンピラたち。その瞬間、ハッチの中の“スイッチ”が入り、ブチ切れた彼は何と一人でチンピラたちを叩きのめして半殺しにしてしまう。
実は彼には、家族にも隠していた過去があったのだ。
ところが、チンピラの一人がロシアンマフィアのボスであるユリアン(アクレイセイ・セレブリャコフ)の弟・テディ(アレクサンドル・パル)だったことから、事態は思わぬ方向に展開してしまう。ハッチの身元はすぐにバレてしまい、ベッカら家族だけでなく、老人ホームに入所している彼の父・デビッド(クリストファー・ロイド)にまで危害が及んでしまう。ハッチはこの状況にケリをつけるため、ユリアンの組織に戦いを挑むが…。

キレるとコワい”ダメおやじ“、怒りの鉄拳!

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一般社会で普通に生活している、どちらかと言うと腕っぷしも強くない人間が、理不尽な悪や暴力などに対して怒りを爆発させ、驚くべき力を発揮、悪者をやっつける…。古くは『狼よさらば』(1974)に始まるチャールズ・ブロンソン主演の「デス・ウィッシュ」シリーズもこのジャンルに入るだろう。最も多いのが、「かつてスパイや殺し屋など命がけの仕事をしていたものの足を洗った人物」がこの種の物語の主人公になるというパターン。一般人と思ってナメてかかっていた悪党たちが徹底的にやっつけられるというパターンは、アクション映画ならではのカタルシスを生んでいた。
オリジナル・ストーリーである本作の脚本を担当したデレク・コルスタットが一貫して手がけてきた『ジョン・ウィック』シリーズ(2014~)も、そのバリエーションの一つと言っていいかも知れない。キアヌ・リーヴス演じる元殺し屋が、愛車や亡き妻が遺した子犬を強盗に奪われたことから復讐に立ち上がる物語で、強盗の一人がロシアンマフィアの息子で…という設定は、本作の原型と言っていいだろう。
しかし、これらの作品に共通する「ひっかかりポイント」がある。主人公を演じる俳優が有名なアクション・スターがほとんどで、どう見ても「普通の生活を送る一般市民」には見えず、敵をやっつけてしまうのも当然の流れ、と思ってしまうのだ。アクション映画としてのカタルシスを求めるならそのキャスティングは当然だろうし、ましてや「元殺し屋」とかだったらなおさらだ。しかし、そんな俳優たちが「普通の市民」だと言われても正直言って「そりゃムリ!」だし、敵も(普通なら)身構えてしまうだろう。
その点、本作のオデンカークはまさに適役。コメディアンや放送作家として有名になり、近年は映画やテレビドラマで俳優として活躍。特に、人気テレビドラマ『ブレイキング・バッド』とそのスピンオフ『ベター・コール・ソウル』の主演でおなじみだが、まさに「うだつの上がらないおっさん」そのもののルックス。当然、チンピラもマフィアもなめてかかる。これだけでもストーリー上は十分説得力がある。ところが、「昔取った杵柄」で、実はとんでもない格闘スキルの持ち主で、敵が多くても一人でやっつけてしまう。ハッチの正体については映画の早い段階で明らかにされるが、やはりここでは伏せておこう。しかし、アクション俳優でもないのにガンアクションや格闘もしっかりこなせているのは、やはり長年コメディアンとして活動してきたゆえの身のこなしを活かしているからだろう。
ハッチの“代り映えしない毎日”を表現するため、同じようなことばかりの1週間をあえてやたらと速いテンポで描く冒頭の演出からしてお見事。職場でも家庭でも同じような失敗を繰り返しているところも、彼の日常の単調さと自身の不器用さを同時に描く巧みな手法。ここで彼とその生活の“情けなさ”を徹底して描くことで、ハッチの「何者でもなさ」感がさらにアップする。ここまで徹底しているからこそ、彼がキレて以降の映画的な盛り上がりとカタルシスも倍増するのだ。

個性派揃いの共演者たちが支える痛快アクション

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本作は、他の出演者もなかなか豪華で絶妙なキャスティングが行なわれている。
ベッカ役のニールセンはアクション系の作品への出演が多く、近年は『ワンダーウーマン』シリーズでヒロインのダイアナの母親であるヒッポリタ女王役でおなじみ。
他にも、ヒップホップ・アーティストのRZA、ベテラン個性派のマイケル・アイアンサイドなどインパクトの強い顔触れが揃っているが、何と言っても『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ(1985~90)の「ドク」役で有名なロイドが、ハッチの父親役で登場するのが嬉しい。

自粛生活続きで溜まったストレスを一気に発散できそうな快作アクション。シリーズ化希望の声が殺到するのは間違いないだろう。

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