AKB48出身の酒豪アイドルが愛する居酒屋の名店にいまこそ行きたい!

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第73回 加賀屋

■おっさんの坩堝に足を踏み入れていた元AKB48

 アイドルだってメシを食う。20歳過ぎれば酒だって飲む。今回は酒豪アイドルのご紹介。前回の奈津子に引き続き、「あの頃。」な感じのキャスティングになるが、元AKB48の田名部生来の登場だ。16年10月の「グループユニットシングル争奪じゃんけん大会」で優勝した3期生である。

 自分が利用した店に誰か来店していないか調べるのが、本連載でのネタ探しの基本パターン。ついこの間も取材場所に指定されたのが、東京都民にはおなじみの居酒屋チェーン「加賀屋」の総本山直系、「ニュー加賀屋 新橋店」だった。言い訳がましいが、相手が居酒屋ライターだからで、ぼくが望んだわけではない。

 そこでまさかとは思ったが、誰か女性タレントがこの店に来ていないか調べると、18年月14日放映の『有田哲平の夢なら醒めないで田舎出身!東京にかぶれたい女子の理想SP』(TBS系)に出演した田名部が、新橋でのハシゴ酒で1軒目に訪れているではないか! よりによって、おっさんの坩堝である加賀屋に……?

 なかなか外で公然と飲めない反動で、最近は仕事中にふと居酒屋の光景が脳裏をよぎったりする。自炊メニューを考えるのも億劫だし、夕飯=宅飲みになるので、つまみ類も用意せねばならず、食事自体が面倒でたまらない。

 そんな日々でも、今月20日までの緊急事態宣言延長に、みんなが唯々諾々と従っているわけではない。開けている店もあれば、そこにたむろする客もいる。

 特に先月12日から月末までの延長決定以降、営業再開に踏み切った店はかなりに上り、中には前回取り上げた肉汁餃子のダンダダンなど、チェーン店もけっこうある。加賀屋もそのうちの1軒だった。

 お相手の居酒屋ライター、塩見なゆさんによれば、「おそらく系列店も多くが開けているだろう」とのこと。都内や周辺に50店ほど点在する加賀屋には、「加賀屋」と「ニュー加賀屋」と「加賀廣」の3系統がある。

 チェーンといっても正確には、暖簾分けシステムの店なのだ。「ニュー」と付くのは、元のオーナーが引退し、新たに弟子などに店舗を継がせる場合や、同駅周辺に2店舗目を出す際に付けられるんだとか。

 看板などに奴凧が描かれているのが本家筋のサインで、新橋店の店内外にも燦然と輝く。それは「安い・旨い・ボリューム満点」の王道居酒屋メニューを提供してくれる証明でもある。加賀屋は地元に近い池袋にも2軒あり、ちょくちょく通っていただけに、乾杯のビールをぐいっと飲み干した後、懐かしさとありがたさで、ちょっと涙が込み上げてきた。

 しかも、さすが安サラリーマンの聖地、新橋店は活気が違う。21時でもほぼ満席。客のおっさん率はさほどでもなく、老若男女のバランスが取れているが、誰もマスク会食などせず、飛沫は大丈夫かという勢いでがなり、はしゃいでいる。緊急事態宣言下にあるのを忘れそうだ。

 こんな下世話な店に、いかに年頃になったとはいえアイドルが、しかも、おひとり様ハシゴ酒の口開けにやって来る。大した度胸だ。洒落ではなく、生来の酒好きである。田名部はちょうど番組放映日のTwitterにこうTweetした。

「ここ最近、禁酒守ってるのでただただ飲みたくなりました…。ハッピーバレンタイン。私の中で新橋といえばバイスサワーです。覚えておいてください。」

■バイスサワーにホッピーが似合う店

 写真のバックに写るメニューは間違いなく加賀屋だ。番組のまとめを読むと、いちおうこんな流れだったらしい。

「普段から1人で行動する田名部は、ディズニーランドも1人で行くという。居酒屋ではサラリーマンに絡まれたが、それも田名部は嫌に感じないという。ししゃもをツマミにビールやホッピーなどを飲み、次の店へ移動。はしご酒を始めた。

(略)3軒目は馴染みの占いスナックを訪れ、占い師の言葉に涙した。その後も5軒まで飲み歩き、シメに海鮮丼を食べるため築地に消えた…」

 って、まるで漫画やドラマの『ワカコ酒』じゃないか。いや、もっと闇が深いような……。田名部はだから時々、Twitterに「断酒している」と綴るのか。おそらく痛飲し、なにかしでかしては、禁酒を自らに強いるのだろう。

 番組の他の出演者は元モー娘。の久住小春、モデルとしてブレイクした当時の朝比奈彩、まだデビューしたての井上咲楽。そこに若槻千夏とギャル曽根がオブザーバーとして加わる体で、共通するのはそれぞれがかなりの田舎出身ということ。田名部は滋賀県近江八幡の出なのだ。

 今をときめく朝比奈や井上は、そこで田舎出身を自虐ネタに、スタバやお洒落な自然食レストランなどを巡っては、しっかり笑いを取っていた。

 しかし、それまでにも吞ん兵衛アピールをしてきた田名部がいくら安酒場を巡っても、違和感がないのであまり笑いを誘えない。そもそも地方出身者が都会を気取るギャップを嗤う、番組コンセプトから大きく逸脱している。

 まぁ、そんな田舎者にも優しいのが加賀屋。新橋店は確かに築地が近いだけに、他店より俄然、鮮魚メニューが豊富だ。実際、平目の刺身など肉厚で実に旨かった。

 看板の大串焼きとんの中でも、人気のスタミナ焼きはタレに漬け込んだカシラだが、これまたメシのおかずにもなるほどの、絶妙な味加減。柔らかなシロも抜群で、噛むほどにじわっと脂が口中を満たす。ホッピーがノンアルビールのように喉を走っていく……。

 少なくとも、田名部はこの喜びを知っているわけだ。アイドル業を続ける反発からか、次第に渋好みになる、あるいはそう振る舞う女性タレントは多い。しかし、加賀屋を愛するだけあって、どうも彼女は筋が違う。そもそも精神年齢が高く、質実剛健な大衆酒場の魅力を見抜けるのだ。

 ただ、市井のそんな女子は、残念ながら往々にして男性化してしまう。田名部の孤独癖にその傾向が現れている、とは言わないでおくが……。

(取材・文=鈴木隆祐)

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  • 6/12 10:00
  • 日刊大衆

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