【ネタバレ・解説】『アトミック・ブロンド』超絶アクションで魅せるスパイ映画!時代背景の解説も

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シャーリーズ・セロンによる本格スパイアクション『アトミック・ブロンド』。作品の魅力と、舞台となった東西冷戦末期の時代背景などについて解説します。

『アトミック・ブロンド』あらすじ

1989年11月、ベルリンの壁崩壊前夜。イギリスの情報機関MI6の諜報員が殺害され、スパイたちの記録が記されたリストが奪われた。東西冷戦の終焉が近づき東ベルリンが混乱に陥る中、東西両陣営がともにリスト争奪戦に動き出す。

女スパイ、ローレン・ブロートン(シャーリーズ・セロン)は、殺害された諜報員の遺体回収を名目に、奪われたリストの奪還と二重スパイ「サッチェル」の正体を突き止めるよう命じられ東ベルリンへと向かう。

ベルリンに潜伏中のパーシヴァル(ジェームズ・マカヴォイ)と組み、リストの内容を記憶しているという東ドイツの秘密警察「シュタージ」所属の協力者スパイグラス(エディ・マーサン)を西側へ逃亡させる作戦を立てるが、現地で暗躍するソ連のKGBの追撃に遭い、失敗。行動が事前に漏れていることに気付き、組織内に内通者がいると確信する。

任務遂行の中で親しい間柄となった新人スパイからある情報をもたらされたローレンは、内通者の正体とリストの所在へと近づいていく。
リストに書かれた衝撃の事実、そして二重スパイ「サッチェル」とは何者なのか……?

動乱の時代を舞台に描く、本格スパイアクション!

アトミック・ブロンド

アトミック・ブロンド

2017年/アメリカ/115分

作品情報 / レビューはこちら

華麗な身のこなしでなみいる敵を打ち倒す美女スパイ―。
シャーリーズ・セロンが過酷なトレーニングの末に臨んだ本作は、度肝を抜かれるアクションが満載だ。
屈強な男たちを相手に狭い車で繰り広げる車内アクション、包囲された部屋から脱出するため縄を片手に3階からのダイブ、被弾し窓が割れる中でのカーチェイス(東ドイツの薄暗い町並みがまた最高)。

特に目を見張るのは後半、セロンがノースタントで挑んだ7分半にも及ぶバトルシーンだ。狙撃されたスパイグラスを守るため建物内に逃げ込んだローレンは、階段を上り下りしながら、襲い掛かる敵を一人また一人と返り討ちにしていく。殴られ蹴られ、血まみれになりながら繰り出されるアクションの数々は圧巻だ。
敵側のやられっぷりも見事で、とんでもない格好で階段から落ちたり、壁や床に体中が打ち付けれたりして、観ていて実際に無事でいられたのか心配になるほどだ。

本作の超絶アクションを手掛けたのは『ジョン・ウィック』などの87イレブン・アクション・デザイン。スタントマンとして名をはせていた、本作の監督であるデヴィッド・リーチとチャド・スタエルスキが立ち上げたアクション制作会社で、スタントやアクションコーディネート、出演俳優の訓練までも行う、現在のアクション映画界を牽引する存在だ。
本作でも彼らの手腕が光り、これまで観たことがないようなリアルで迫力あるアクションシーンを堪能することができる。

また、1989年の時代設定をよりリアリティあるものにするためのこだわりも随所に光る。ベルリンの壁の落書きの精巧さは目を見張るものがあるし、東ベルリンの社会主義国家らしい色合いの小道具や衣装にも心奪われる。カーチェイスシーンに映りこむ車は、当時の東ドイツの国民車だった「トラバント」を東欧諸国で探しまくり500台かき集めて使用しているというから驚きだ。

ピンヒールにミニスカート、露出度の高いドレスなど、ファッショナブルでセクシーなローレンの装いにも注目したい。

原作はアンソニー・ジョンストン作、スティーブン・パーキンズ画による2012年のグラフィック・ノベル「The Coldest City」。続編となる「The Coldest Winter」が2016年に発行されている。

東西冷戦とベルリンの壁崩壊

前述のとおり、本作の魅力の一つが迫力のアクションシーンであることは疑いようもないが、「冷戦末期のベルリン」という異様な熱気に包まれた時代を舞台にしているという点も頭に入れて起きたい。

第二次世界大戦後、アメリカ(資本主義陣営)とソ連(社会主義陣営)は対立を深め「冷戦」と呼ばれる時代に突入する。互いが核武装を進めたことで一触即発の緊張状態が続き、すわ核戦争による第三次世界大戦勃発か、という手前までいったのが1962年の「キューバ危機」(その際の攻防を題材にしたのが映画『13デイズ』)。
70年代にはいると、ソ連との対立が深まる中国のアメリカへの歩み寄りや、イスラム勢力の台頭、中東における単純な東西の対立構造の崩壊など、社会情勢は目まぐるしく変わっていく。80年代には、ポーランドやハンガリーなど東欧諸国で共産主義体制が倒れたことをきっかけにして西側諸国へ逃れる東ドイツ国民が続出。東ドイツ国内でも各地で反政府デモが起こり民主化の機運が高まっていた、というのが映画の時代。

当時の西ベルリンは「ベルリンの壁」により周囲をぐるりと囲まれていた。西ベルリンは、東ドイツにある西側陣営の孤島のような立地だったのだ。またベルリンの壁そのものが東西冷戦を象徴する存在であり、作中暗躍するスパイたちの攻防は、イギリス、フランス、アメリカ、そしてソ連といった、ベルリンを支配していた国のパワーバランスをそのまま象徴しているともいえる。

前述のとおり1989年の秋ごろは民主化を求める声が高まってはいたものの、まだ東ドイツ政権側は強硬姿勢を崩してはいなかった。しかし11月4日に東ベルリンでも百万人規模の大規模なデモが起こり(スパイグラスを逃亡させようとしたシーン)、政権も収拾がつかない状態に陥る。
そして11月9日、出国規制緩和の日時を「直ちに」と誤って発表してしまったことから、東西双方から人々が検問及び壁に殺到、混乱の中、国境ゲートが解放される。
11月10日未明にはどこからともなく重機が運び込まれ、ベルリン市民らにより壁が破壊されていった。

映画は、その混乱の裏で暗躍するスパイたちを描いている。自由を勝ち取ったベルリンの民衆とは対照的に、彼らは各国の思惑に翻弄され続ける。例え時代が変わっても「スパイである」ことからは逃れられないのだ。

391811 01: A girl rides on a swing at the Berlin Wall Park in Penzlauer Berg July 11, 2001 in Berlin, Germany. The Berlin wall, which was constructed in 1961 by the former government of the German Democratic Republic (GDR), will mark its 40th Anniversary on August 13. Pieces of the wall are still standing in parks around the city and are honored as historic monuments. (Photo by Nina Ruecker/Getty Images)

【ネタバレ】「サッチェル」の正体と冷戦の終焉

ベルリンの壁が崩壊したその夜、ローレンはパーシヴァルが自身を盗聴していたこと、そして彼がリストを手に入れ、その情報から自分をなき者にしようとしていると気づく。
そう、二重スパイ「サッチェル」とは他でもない、ローレン自身のことだったのだ。

ローレンはパーシヴァルに罪を着せて殺害し、MI6に帰還する。

彼女は手に入れたリストを渡すため「サッチェル」としてKGB幹部に会うが、直前で取引は失敗。幹部らを撃ち殺し、その場を後にする。
その足で彼女が向かったのはCIA専用機。ローレンはKGB、MI6の二重スパイではなく、CIAの三重スパイだったのだ。

かくしてリストはCIA(アメリカ)に渡り、冷戦の終わりがはじまった……。

すでに続編製作の報が届いている本作『アトミック・ブロンド』。おそらく舞台は冷戦終結後になるだろう。新たなパワーゲームが繰り広げられる中で、女スパイ、ローレンがどのような活躍を見せるのか……。期待が高まる。

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