映画『幸せの答え合わせ』レビュー!イギリスから生まれた新たな結婚映画の秀作!

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6月4日(金)より公開されたイギリス映画『幸せの答え合わせ』をネタバレなしでご紹介。「熟年離婚」を題材にした本作では「ホープ・ギャップ」と呼ばれる崖がある町を舞台に、変わりゆく夫婦の関係や、両親を見守る息子を丁寧に描きます。主演のアネット・ベニングの魅力をはじめ、壮大なロケ地についても解説します!

ヒューマンドラマの多くで描かれる夫婦関係。結婚という契りを交わした夫婦の関係や破綻を描く作品は数多くあります。そのなかで特に印象的なものが「離婚」という題材。近年は多様なライフスタイルが認められつつあり、離婚をネガティブにとらえないことがあります。Netflix映画『マリッジ・ストーリー』やTVドラマ「リコカツ」など、離婚を通して夫婦の関係性を独自に描く作品も生まれました。

今回ご紹介するイギリス映画『幸せの答え合わせ』は、結婚に対して異様な執念を持つ妻の変化や、息子を通して夫婦の関係性を丁寧に描く上質な「離婚」ドラマとなっています。

映画『幸せの答え合わせ』あらすじ

イギリス南部にある町シーフォード。この海辺の町の付近では、崖下にホープ・ギャップと呼ばれる美しい入り江が広がっている。そんなシーフォードに住むグレイス(アネット・ベニング)とエドワード(ビル・ナイ)は、まもなく結婚29周年を迎えようとしていた。仕事を引退したグレイスは詩集づくりに時間をかけ、一方のエドワードは教師をしている。独り立ちした一人息子のジェイミー(ジョシュ・オコナー)が久しぶりに帰ってきたある週末、エドワードは突如家を出ていくと言い出し、グレイスに別れを告げた。グレイスとジェイミーはその理由を聞いても受け入れがたく、グレイスは絶望と怒りに支配される。そんな母を支えるジェイミーも、自分自身の生き方や人間関係を見つめ直していく。

出典元:https://eiga-board.com/movies/95232

幸せの答え合わせ

幸せの答え合わせ

2018年/イギリス/100分

作品情報 / レビューはこちら

イギリスの名優たちが見せる新たな家族ドラマ!

映画『幸せの答え合わせ』は、実力あるキャストによる演技や会話劇が印象的な作品となっています。それもそのはず、主要キャストを務める3名が、それぞれゴールデングローブ賞や英国アカデミー賞に受賞・ノミネートされた経歴があるのです。

妻・グレースを演じるアネット・ベニングは『華麗なる恋の舞台で』(04)『キッズ・オールライト』(10)でゴールデングローブ賞2度受賞した経験を持ち、近年でもマーベル作品『キャプテン・マーベル』(19)やアダム・ドライバー主演の実録サスペンス『ザ・レポート』(19)にも出演しています。

夫・エドワードを演じるビル・ナイは『ラブ・アクチュアリー』(03)で英国アカデミー賞、『ナターシャの歌に』(05)でゴールデングローブ賞を受賞する実力派俳優。ジュディ・デンチやマギー・スミスなど、イギリスの大御所が集う『マリーゴールド・ホテル』シリーズにも出演しています。『幸せの答え合わせ』では自分の感情をあまり表に出さない男性を演じていました。

2人の息子ジェイミーを演じるのは、1990年生まれのジョシュ・オコナー。日本でも話題を集めた『ゴッズ・オウン・カントリー』(17)で、英国アカデミー賞にノミネートされると、チャールズ皇太子役を熱演した「ザ・クラウン」(19~20)での演技も評価され、ゴールデングローブ賞を受賞する勢いのある若手俳優です。

監督は『グラディエーター』の脚本で知られるウィリアム・ニコルソン本作の監督を務めるウィリアム・ニコルソンは『永遠(とわ)の愛に生きて』(93)『グラディエーター』(00)の脚本がアカデミー賞と英国アカデミー賞にノミネートされるなど、脚本で注目を集めている人物。

近年でもコーエン兄弟と共同執筆した『不屈の男 アンブロークン』(14)やジェイク・ギレンホール主演作『エベレスト 3D』(15)の脚本を執筆。『幸せの答え合わせ』は監督の実体験がベースとなっており、1997年の『ファイアーライト』以来の監督作品となります。

ホープ・ギャップによる荘厳なロケーションが素晴らしい

(C)Immersiverse Limited 2018

本作はロケーションも素晴らしく、イギリス南部の海辺にある「シ―フォード」と呼ばれる町にある巨大で真っ白な崖「ホープ・ギャップ」の姿は必見。原題にもなっているこの崖は白亜系チョークからなる海食崖です。数百万年もの時間をかけて、海水で押し流された柔らかな石灰岩(チョーク)が崖の側面に付着し、これほどの美しい白さを保っています。

観光地としても有名で、崖から見下ろす景色は圧巻。出演したアネット・ベニングも「今まで見てきた中で一番美しい場所」と感動するほどです。監督もロケ地にかなりこだわりを持ったと語るように、ジョー・ライト監督の『つぐない』や『ハリー・ポッター』などでも、ロケ地として撮影されたことがあります。壮大な景色に魅了される作家が多いのもうなずけます!

なぜそこまで「結婚」に執着する?アネット・ベニングの演技は必見!

(C)Immersiverse Limited 2018

映画『幸せの答え合わせ』では、夫エドワードが「他に好きな人ができた」と告げると、早々に家を出て行ってしまいます。息子ジェームズは既に自立しているため、妻のグレースは突如として孤独の身になってしまうのです。

さらにエドワードが妻以外の女性に恋をし始めたのは、昨日今日の話ではない…。離婚の理由は人それぞれですが、自分なら「そんな夫、こっちから願い下げだわ!」と激怒しそう…。ですがグレースは自分の持つ「結婚」の価値観を死守すべく、離婚を決して認めない姿勢を貫くのです。

グレースの奮闘する姿はまさに「執念」そのもの。離婚の書類にサインをする場では、弁護士がいるのをよそにあらゆる罵詈雑言をエドワードに浴びせます。おまけに孤独を埋め合わせるためか、はたまた夫への見せしめか、犬に「エドワード」と名付けて、可愛がると同時にしっかり躾ける徹底ぶり。

離婚する以前からも煮え切らないエドワードに激怒してはビンタをしたり、テーブルをひっくり返したりととにかく感情と行動が激しいグレース。上品なビジュアルやロケーションからは想像できないキャラクターは必見です。

改めて考えさせられる「結婚」の価値観

(C)Immersiverse Limited 2018

本作で印象深いのは、夫の方が浮気(正確には他の女性に恋をしてしまった)をして家を出ていったのに、離婚を拒否しているのは妻という点です。よくあるケースでは浮気された相手が離婚を突き出すパターンであり、これまでの映画でもよく描かれてきました。「あんなやつ、捨ててやったよ!」なんてセリフはコメディ作品でもよく聞きます。

本作で浮気されたグレースはひどく取り乱し、絶望し、怒ります。エドワードが家を出てしばらくは何も手につかず、この世の終わりと言わんばかりの表情で虚無の日々を過ごしていました。しかしグレースは決して離婚の同意書にサインをしません。「あの人は結婚という契りを踏みにじった」と息巻くほど、彼女の「離婚阻止の執念」は燃え上がるのです。果たして彼女が本当に守りたいものはエドワードとの関係なのか、「結婚の価値」なのか…。

現代では「人生において結婚することが幸せ」と言い切ることに、疑問を持つ声は少なくありません。あらゆる幸せの定義が見つかる今、グレースの持つ「結婚の価値観」を通して、幸せの基準を考えさせられます。

成人した息子から見た「熟年離婚」とは

(C)Immersiverse Limited 2018

さらに映画『幸せの答え合わせ』で印象的なのが、夫婦の離婚を成人した息子の目線で描いている点です。ジョシュ・オコナー演じるジェイミーは少し内気で控えめな性格。恋人ともうまくいっていない中で、今度は離婚する親の板挟みになってしまう、まあまあハードなポジションに立たされます。

母グレースからは常に自分の味方になるようきつく言われ、父エドワードからはグレースへの伝言役を任されるなど、並みの子どもなら「いい加減にしてくれ!」と爆発してしまいそうなレベルで夫婦のいさかいに巻き込まれています。しかしジェイミーは2人を見放すことなく、それぞれにとって最善の形を模索するのです。

同じく子ども目線で夫婦をとらえた作品に、ポール・ダノ監督作『ワイルド・ライフ』があります。この作品に対して『幸せの答え合わせ』のジェイミーは、家を出て自立しているにも関わらず、親身に両親を支えます。ジェイミーの健気な姿は親世代だけでなく、同世代の若者にも、改めて家族という価値観を見つめ直すことができます。ジェイミーの視点を通すことで、本作は家族の価値を問う作品にもなっているのです。

(C)Immersiverse Limited 2018

本作を観ると「身近な人が人生を変える選択を迫られていたら、どう接するのか?」という点を考えることができます。

離婚や家族がテーマとなっていますが、ジェイミーがすでに自立しているなど、両親との距離感が絶妙なため、いろんな方が他人の人生について考えるきっかけになる作品だと感じました。

映画『幸せの答え合わせ』作品情報

(C)Immersiverse Limited 2018

監督:ウィリアム・ニコルソン
出演:アネット・ベニング、ビル・ナイ、ジョシュ・オコナー
2018年|イギリス|英語|カラー|スコープサイズ|DCP|5.1ch|100分
原題:Hope Gap|レイティング:G|字幕翻訳:川喜多綾子
提供:木下グループ 配給:キノシネマ
© Immersiverse Limited 2018

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