大坂なおみも公表した「うつ」 「うつは伝染する」は本当か

拡大画像を見る

女子テニス世界ランキング2位の大坂なおみ選手がうつ病に苦しんでいることを告白し、「全仏オープン」を棄権したことで、今あらためてメンタルヘルスに注目が集まっている。

日々想像を絶するようなプレッシャーや緊張の下でプレーするアスリートにも、そうでない人にも、「うつ」は等しく襲い掛かる。大切なことはその性質について知っておくことだろう。

■「うつは伝染する」その真意と対処法

個人的な問題だととらえられがちな「うつ」だが、実は社会的な側面も大きい。

『鬱は伝染る。 最もありふれた精神疾患は,どのように蔓延ったのか,どうすれば食い止められるのか』(マイケル・D・ヤプコ著、福井義一監訳、定政由里子訳、北大路書房刊)は、うつの社会的文脈に焦点を当てつつ、自己否定的でストレスにつながる洞察や行動のパターンを変えることが根本的な回復や感染予防になると説く。

気になるのが、タイトルにある「伝染る(うつる)」だ。もちろん、うつは風邪のような形で他人に伝染することはない。ただ、人間関係のトラブルを通じてまん延する。仕事や家庭、友情など、人間関係が難しくなると、うつは確かに増加するのだ。その意味で、本書ではうつは「社会的に伝染する」としている。

これは具体的には、ある抑うつ的な人が周囲の人との間でトラブルを抱えた時、そのトラブルは相手の生活や精神状態に影響することを意味する。

一人の抑うつ的な人が治療を受けなければ、その抑うつが少なくとも三人の他人の生活に影響する。一人の抑うつ的な親が治療を受けないと、その子どもは抑うつ的でない親の子どもよりも。少なくとも三倍は抑うつになりやすくなる。人間関係は、病原菌が病気を蔓延させるのと同じくらい確実に、抑うつを蔓延させることができる。(P21より引用)

ここで断らなければならないが、「だからうつの人には近づくな」と言っているわけではない。むしろ逆である。うつは「人間の内側で生じるもの」であるのと同時に「人と人との間で生じるもの」であるため、人間関係を含めた社会的な要素が解決のカギになる。薬でうつの症状を抑えることはできるが、それは「人間の内側で生じるもの」という、うつの一要素にアプローチしているに過ぎない。症状は抑えられても、解決にはならないのだ。

では、社会としてうつの蔓延にどう取り組んでいくべきか、というのが本書の主題である。社会という言葉が漠然と感じられるなら、「組織」でも「学校」でも「家庭」でもいい。ある集団のなかに抑うつ状態になったメンバーがいたら、どのように接していけばいいのか、うつが集団の中に蔓延しないためには何が必要なのか。そして、自分が抑うつ状態にあると感じたら、それをどう考えて、自分の行動をどう変えていけばいいのか。

あらためてうつに注目が集まっている今、本書は必読だ。

(新刊JP編集部)

関連リンク

  • 6/3 18:00
  • 新刊JP

スポンサーリンク

記事の無断転載を禁じます