「日本一有名な八百屋の経営者」がテレビに引っ張りだこなワケ。昨年の出演回数は300本超え

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「らっしゃい! らっしゃい! 安いよ安いよー!!」

 朝、青果市場から仕入れたばかりの旬の野菜や果物が、激安プライスのPOPと共に所狭しと店頭に並ぶ。お昼時を過ぎても客足は途絶えることなく、店内は常に人でごった返しているが、そんな喧騒のなか毎日店頭に出て慌ただしく立ち働いているのが、テレビのワイドショーなどでもお馴染みのスーパーアキダイ社長・秋葉弘道氏、その人だ。

 この5年だけでも、テレビ出演回数は実に年間250本以上を数え、昨年は300本の大台をも超えたという。天候不順や野菜高騰、レジ袋の有料化や消費税の総額表示……生活に直結するニュースが報じられるたびに引っ張りだことなる秋葉氏は、名実共に「日本一有名なスーパーの経営者」と言っても過言ではないだろう。

 なぜ多くのメディアは彼をこぞって取り上げるのか? 今回、その真相に迫った。

◆リアルタイムで現場の声を拾えるメリット

――今日もテレビの取材が来ていました。1日に取材が複数入ることはよくあるんですか?

秋葉:今日はTBSが来てるけど、テレビはNHKのEテレも含めて地上波全局が取材に来ますよ。でも、こちらから「ぜひ!」ってお願いしてるわけじゃなくて、たまたまこうなっちゃった(笑)。なぜ、ウチの店ばかりに取材が殺到するのかよく聞かれるけれど、理由は一つじゃない。

 大企業に取材を申請する場合、企画書を送って、精査されて、何日かたってOKかどうか返事が来ますよね。でも、ウチの場合、朝に俺のスマホが鳴って「今から行っていいですか?」とか、「今日の今日」ですぐ取材というパターンばかり(笑)。メディアの皆さんにとってはリアルタイムで現場の声を拾えるのは、メリットなんでしょう。

――特に、即時性が重要な報道番組で重宝されるのはわかります。ただ、取材対象がどこの店でもいいというわけではないですよね。

秋葉:うん。テレビ局はADさんがリサーチを重ねて、ここなら大丈夫と取材先を決めるわけですが、ウチは一日の仕入れが800万円ほどと個人店にしては多いし、付き合いのある市場がいくつかあるので仕入れ値が比較的安定しています。普通は、個人店によって価格にバラツキがあるからね。それに、東京は物流が多いので、地方のように同じ地域なのに値段が大きく変わるということもない。

 2つ目の理由としては、平均的な価格相場の東京の八百屋だから、全国放送に適している。ただ、声をかけてくれる機会が多いのは、取材先を決めるリサーチの手間が省けるからでしょう(笑)。でも、それはウチが信頼できる店と思ってもらっているから――と受け止めています。

 だから、関西や九州から東京に転勤してきたディレクターさんの中には、「『スーパー関係の取材で困ったら、秋葉社長に電話してみな』とプロデューサーに言われて、連絡しました」という人が何人もいたくらいです。

◆取材に答えるとき、いい加減なことは言わないのが自分の責任

――テレビ業界では、スーパーや青果価格のネタで「困ったらアキダイに行け」というのが常識と聞きました。また、オンエアで流れるのは短時間にもかかわらず、社長の人柄とわかりやすくて親しみやすい語り口が視聴者にもウケていると評判です。

秋葉:俺はあくまでも一庶民。難しい話をされてもわからないし、庶民目線の話しかできないよ。ただ、取材に答えるとき、いい加減なことは言わないのが自分の責任と思っています。

 お付き合いさせてもらっている複数の市場は、それぞれ産地の人たちとの間に太いパイプを持っていて、そこから情報が入ってくる。産地の生産者の人たちも俺を知ってくれているので、市場の売り子を介して、例えば産地で洪水が起きたとか、大雪が降ったとかの情報をくれるし、写真をスマホに送ってきてくれることもあります。

’16年に北海道東部が豪雨に襲われたときも、多くの畑が冠水し、プカプカ浮いた玉ねぎが流されていく様子を撮った動画を送ってくれた。それを知ったディレクターに動画を貸してくれと頼まれて、ニュースで映像が放送されましたよ。

◆産地の生産者と消費者の「橋渡し役」になれたらいい

――ちなみに、取材はノーギャラだそうですね。たくさんテレビ番組に出ても、店の売り上げが増えるわけではないのに、なぜ取材に応じるのですか?

秋葉:いい商品を売って、「おいしかった!」ってお客さんに喜んでもらうのが何より嬉しいのと同じで、マスコミの皆さんの役に立つのも嬉しいんです。もちろん、本業は八百屋だけど、取材を受けるのも自分の役割だと思っています。

 というのは、毎年のように夏に豪雨被害が出るけど、生産者の人たちが産地の惨状を伝えたくても、どう発信していいかわからない。だから、俺がそういった人たちを繫ぐ「橋渡し役」になれればと思っています。逆に、豊作で生産過剰なら、野菜を無駄にしないために「今、安いからお買い得ですよ!」って、一生懸命ウチの店で売りますよ。

 取材を受け始めたのをきっかけに、産地の事情や生産者の気持ちがわかるようになった。自分はちょっとだけちゃんとした企業の経営者でもあるけど、毎朝市場に仕入れに行くし、店にも立つので、商品を実際に見て触れている。売り上げも数字というデータではなく、お客さんが買っていく姿を見ているわけです。

 だから、消費者の気持ちもわかるし、取材で仕入れ値を聞かれてもすぐに答えられる。経営者目線も消費者目線もあり、引き出しが多いから、マスコミの皆さんからしたら使い勝手がいいんでしょ(笑)。

※6/1発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです

【Hiromichi Akiba】
’69年、埼玉県生まれ。アキダイ代表取締役。高校の3年間、青果商でアルバイトに励むが、卒業後は大崎電気工業に入社。退社後、青果商などを経て、’92年にアキダイ創業。現在、東京都内に5店舗・千葉県内に1店舗を展開し、パン工房や居酒屋も経営する

取材・文/齊藤武宏 撮影/浅野将司


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  • 6/3 15:52
  • 日刊SPA!

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