【コラム】どんでん返し映画の魅力vol.1

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「どんでん返し」映画は、常に観客を飽きさせない。最後の最後で衝撃的な結末が用意され、観客は大きな満足感を得る。これからご紹介するどんでん返し映画は、だからこそ誰が観ても決して飽きない作品であること請負の作品ばかりである。

■映画を観ること

映画を観る楽しみには、大きく分けて2つある。

ひとつは、1895年リュミエール兄弟によってフランスで産声を上げた映画が、『ラ・シオタ駅への列車の到着』でスクリーンからほんとうに列車が飛び出してくれるのではないかと映画創世記の観客が度肝を抜かしたように、純粋に「動き」を捉えるその運動性を視覚的に楽しみことだ。リュミエール以後、それは映像の魔術師ジョルジュ・メリエスによってさらに大衆的にエンターテインメント化していくのだが、カメラのフレーム内で繰り広げられるあらゆる躍動感に観客は目を釘付けにされた。その意味では、これまでに製作されたすべての映画作品が「アクション映画」だと言っても過言ではないだろう。

もうひとつは、前述した視覚に訴える映像表現だけでなく、よりストーリー性のある映像作品のストーリーを楽しむという姿勢である。リュミエール以後、フランスに代わって映画大国となったアメリカのハリウッド映画作品では、筋の省略による引き締まったエンターテインメント作品が数多く生み出されることになる。それはつまり、映画の脚本術がリテラシーとして飛躍的に向上したことを意味している。

■映画の両輪

現代の映画ファンは、後者の脚本(ストーリー)で映画を観るタイプの観客が多い印象がある。確かに優れた映画作品の脚本は決まって良質なものが多いし、そうしたよく出来たストーリーのキャラクターには、観客がうまく自分自身を重ね合わせて感情移入が出来る。しかし筆者としては、前者の「アクション映画」としての側面をないがしろにされては映画のアイデンティティ自体は保証されないも同然だと思えてならないのだ。それに、ある脚本家がどれだけ優れたストーリーを考えついたとしても、それはすでに誰かが物語った筋の焼き直し、あるいは構造の複雑化としてでしかあり得ない。一言で言ってしまえば、二番煎じということである。

ここで面白いことに、この映画を観る楽しみとして挙げた2つの特性の両方を同時に持っているジャンルがあることに気がつく。所謂、「どんでん返し」ものの作品がそれだ。どんでん返し映画では、常に観客を飽きさせないために、キャラクターの葛藤をうまく使いながら、展開に展開を重ね、最後の最後で衝撃的な結末を用意して、大きな満足感を与えようとする。するとそれは一見、ドラマのストーリーだけを追っていくような姿勢のようにみえて、ドラマをうまく展開させるために必ず最も印象に残るアクションが演出されているものである。どんでん返し映画に限らず、真に面白い映画作品のほとんどがこの2つの特性がきちんと両輪として機能している。

さて、これからご紹介するどんでん返し映画は、だからこそ誰が観ても決して飽きない作品であること請負の作品ばかりである。

■『サイコ』と『ユージュアル・サスペクツ』

1960年、公開当時、観客に他言を禁じた宣伝で爆発的な興行成績を記録した巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』は、ドラマがさらに次のドラマを生んでいく巧みなプロット展開とアンソニー・パーキンス扮する殺人犯の常軌を逸した凶行がショッキングで鮮烈な印象を刻み、映画史屈指の名作となった。何を隠そう、映画監督を志していた筆者も高校生の頃、旧作上映に毎日のように通い詰め、あのシャワーシーンに代表される映像表現に目を丸くした覚えがある。良質な脚本を手にしたヒッチコック監督が、プロットだけを追う推理物語にすることなく、視覚に訴える映像的才能を存分に発揮した。もし本作が単純なミステリー映画であったのなら、繰り返される殺人の謎解きに終始し、時代を超えて何度も鑑賞される作品とはならなかったはずである。とはいえ、ヒッチコック監督は映像表現に傾いてしまうきらいがあり、次に映像と物語がうまく手を結んだ『ユージュアル・サスペクツ』(1995)に話題を移したい。

名優ケヴィン・スペイシーが第68回アカデミー賞で助演男優賞を受賞した『ユージュル・サスペクツ』は、どんでん返し映画の代名詞である。密輸船爆破とともに消えた大量のコカインとドル紙幣の行方を追う刑事が、取り調べで容疑者から口々に聞くカイザー・ソゼという名が深い謎を生む本作。黒幕であろうこのソゼという人物の存在を追うことに終始する本作の衝撃のラストが、どんでん返し興奮の定番となった。しかしブライアン・シンガー監督は、ラストの種明かしでアクションを忘れていないのがまた秀逸である。さらに本作もやはり『サイコ』同様に鑑賞前の観客に結末がバレないようにパンフレットに工夫を施したプロモーションを行なっている。

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