【コラム】どんでん返し映画の魅力vol.2

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「どんでん返し」映画は、常に観客を飽きさせない。最後の最後で衝撃的な結末が用意され、観客は大きな満足感を得る。これからご紹介するどんでん返し映画は、だからこそ誰が観ても決して飽きない作品であること請負の作品ばかりである。

■クエンティン・タランティーノ監督のセンス

『ユージュアル・サスペクツ』が製作された1990年代には、他にも秀逸な才能が誕生している。犯罪強盗計画で集められた6人の犯罪者たちの裏切りと不信を描いた『レザボア・ドッグス』(1992)で監督デビューを果たしたクエンティン・タランティーノ監督は、本作で出演の他、脚本を兼任し、男たちの緊張感漲る会話劇を室内劇仕立てで見事に表現した。映像演出と脚本の両輪をフル稼働させるタランティーノ監督ならではの表現性は続く『パルプ・フィクション』(1994)で花開き、世界が認める才能となった。タランティーノ監督の製作意欲はその後もとどまるところを知らず、オーストリア出身の怪優クリストフ・ヴァルツにナチスドイツの親衛隊大佐役でアカデミー賞をもたらした『イングロリアス・バスターズ』(2009)やイタリア製西部劇であるマカロニ・ウエスタンへのオマージュを込めた『ヘイトフル・エイト』(2015)など、アクションと会話のセンスを織り交ぜた独自の世界観を確立している。特に『ヘイトフル・エイト』は渾身の一作であり、猛吹雪の夜に馬車がたどり着いた先の宿屋で乗客たちを含めた8人は、憎しみにあふれ(ヘイトフル)ながら、一夜を共にし、タランティーノ監督は、ここに驚くべき室内劇をこしらえていくのである。

■『ヘイトフル・エイト』の緊張感

床の上をふてぶてしく歩き回るブーツとその鈍い音、会話を交わす者たちの白く震えた吐息とその視線の交錯、この「密室内」にある悉くが等しく「サスペンス」を纏い始め、タランティーノの自家薬籠である饒舌な台詞回しの往復が一触即発の状況を現出させる。そして、宿をあずかったという、いかにも怪しげなメキシコ人の冷えた手がピアノの鍵盤に触れる時、いよいよ物語は動き出す。その震えた音が一発の銃声を予感させ、実際にそれは画面上に響き渡る。だが、これは序奏にすぎない。8人の中のただ一人の女性には何か「秘密」がありそうだし、その「秘密」の視線を孕んだ、とある飲み物が「鮮血」の不吉な連鎖を辺りにまき散らすことになる。タランティーノ監督の「宙吊り空間」では、瞬く間に炸裂する暴力の理不尽さに目を背けることなど到底出来ず、それが理不尽であればあるほど、観客は当たり前のように自ら精神を麻痺させ、どんどん血を求めていってしまう。そうして、その加担に自覚的になった頃、もはや事態は思わぬ方向へ推移してしまっている。これはタランティーノ監督の作品だから当然ラストへ期待をするのだが、その期待をいつも大どんでん返しとして観客に提示するタランティーノ監督はやはり一流の映画作家と言えよう。

■マーティン・スコセッシ監督の技法

さて、そのタランティーノ監督が大きな影響を受けた人物がいる。名優ロバート・デ・ニーロの代表作である『タクシードライバー』(1976)のマーティン・スコセッシ監督は、タランティーノ監督にすればもはや神として崇めるべき対象である。確かにそれは両者に顕著な作風であるバイオレンス描写をみたら明らかで、レオナルド・ディカプリオとマット・デイモンがそれぞれ好演した『ディパーテッド』(2006)では、相手に銃を向け、うむとも言わせぬ間に引き金を弾き終わっているあの殺し方の超スピードは、スコセッシ監督の発明とも言うべきで、事実本作が無冠の帝王と称されたスコセッシ監督に初のアカデミー賞をもたらしている。『ディパーテッド』も邪魔者を抹殺し、遂に成功を手にしたと思った男が最後の最後で窮地に見舞われるというどんでん返しものの典型であるが、念願のオスカー像を手にしたスコセッシ監督が次に撮った『シャッターアイランド』(2009)は、古典的なホラー映画の雰囲気を帯びた見事などんでん返しものに仕上がっている。映画ファンには人気の高いスコセッシ作品の中で最も評価の低いこの『シャッターアイランド』をなぜか筆者は偏愛している。

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