知られざる少年院生活の実態「幼稚園児レベルの告げ口されるから、誰も信用できない」

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茨城一家殺傷事件の岡庭由征(26歳)が医療少年院から退院後わずかな期間で凶行に及んだことで、再び少年院の矯正教育に疑問符が付けられている。一体塀の中ではどのような矯正教育が行われているのか?

◆医療少年院で5年間過ごすも起こった悲劇

 茨城一家4人殺傷事件の容疑者、岡庭由征(26)は幼少時代からセミや蛙を切り刻んで遊ぶなど「サイコキラー」の片鱗を見せていた。高校では切断した猫の生首を教室に持ち込み、その後、女子中学生2人に切りつける連続通り魔事件を起こしている。

 家宅捜索では、サバイバルナイフや鉈など計78本の刃物を押収。このほか、硫化水素を発生させる約45㎏もの硫黄のほか、猛毒リシン含有物なども見つかっており、岡庭容疑者が次の“標的”を探し求めていたのは明白だ。

 岡庭は通り魔事件により医療少年院で5年間を過ごし、’18年に満期で出院した。だが、この間に更生できなかったのか、疑問も残る。

◆「微笑み合い」も罰則対象。知られざる少年院生活

 今回、少年院で矯正教育を受けた経験のある10~20代の男女に取材した。若かりし彼・彼女らは、犯した罪も、更生への道もまちまちだが、そもそも少年院の中ではどのような生活が営まれているのか?

 傷害事件で関東地方の少年院に17歳から1年間収容されていた21歳の元少年・Aさんが話す。

「体育の時間に筋トレルームで、外からの知り合いと顔を見合わせて微笑んだんです。そしたら『先生、筋トレ中に3寮のA君と2寮のE君が“ニヤけ合い”してました』って告げ口されちゃって……。外なら『愛想がいいですね』って褒められるようなことですよ。

 あと私語もダメ。ほんと、幼稚園児レベルの告げ口をされるから、だれも信用できないんです。寝るとき以外は姿勢も注意され、行進は指の曲げ方まで決まっててロボットみたい。とにかく厳しいので二度と戻りたくないです」

 時間割を見ると、少年院での生活がいかに慌ただしいかが伺える。懲罰本位の刑務所と異なり、社会復帰を目指した更生に重きを置く少年院では、法務省の職員である法務教官が現場の指導を担う。教室が設置された寮を中心とする少年院のイメージは、刑務所よりも全寮制の学校に近い。

◆更生プログラムの内容は施設により若干異なる

 ただ、施設によって更生プログラムの内容に若干の違いがあるようだ。窃盗事件で高校2年だった17歳のときに逮捕され、今春まで11か月間を上越地方の少年院で過ごした19歳の少年・Bさんが言う。

「教育は、自分に与えられた課題を皆の前で暗記して発表するのが基本です。自分がいた少年院には農園があって、そこでトマトを育て、田んぼをシャベルで1.5mぐらいの深さまで掘って軟らかい土を入れる『天地返し』をやりました。手はマメだらけになります。少年院のコースを使って大型特殊免許も取りました」

 Bさんは現在建設業に従事。少年院では読書や資格取得の勉強に没頭したと話す。

 更生プログラムでは、心理学の知見を取り入れたさまざまな試みもなされている。例えば、犬の飼育、マインドフルネスの導入など外部講師による講義や講演も積極的に行う。なかでも「ロールプレイング」は多くの少年院が実践している。

 現在20歳の元少女・Cさんも、覚醒剤の使用で入院した女子少年院で、薬物非行防止指導の一環として体験した。

「社会に出てから自分が誘われそうな先輩役を他のコにやってもらって、断れるかを試すんです。外に出て何が引き金になるかを先に考えて、それに似たシチュエーションを演じます」

◆教育内容は『背中を見て覚えろ』

 今回、取材に応じた現役のベテラン法務教官Dさんは、そういった試みも更生に一定の効果は見られるが、少年院の教育はあくまで生活指導に重点がおかれるという。

「少年院がやることなんて、どこもあまり変わらないんです。私が勤める少年院では、発達障害の有無や犯罪傾向の分類によって寮は分かれていても、実習などは混合で行われ、指導の差はほぼありません。教育内容は、体系的というより『背中を見て覚えろ』的な、暗黙知によるものです」

 先述の通り、少年院では出院後の再非行に繫がる少年同士の交流を固く禁じている。少年には出院まで担任の法務教官が1人決められ、密なコミュニケーションを取りながら生活を送る。

 元少女・Cさんは「先生が『昨夜あなたのこと考えてたんだけど』って話してくれて、家でも私のことを考えてくれてるのが嬉しかった」と当時を思い返す。彼女の場合、教官の熱意に触れたことが、更生のきっかけになったという。

◆毎日の日記のやりとりで問題点の照準を絞る

 担任教官と少年は毎日の日記記入と記載内容へのフィードバックを通して一対一の対話をする。法務教官のDさんは、この“交換日記”が「実質的に日本の少年院における矯正教育の中心」と説明する。

「担任は面接も行いますが、勤務中は何かしらの配置についており、十分な時間は取れません。しかし日記は毎日受け渡しします。作文も週に4、5本。文字のやりとりは、少年が抱える問題点の照準が絞りやすいんですね。

 その他、当たり前のことができないコも多いですから、『おはよう』の挨拶の仕方から歯の磨き方、箸の上げ下げから爪の切り方、ボールペンの蓋で耳かきをしているコがいれば注意し、パジャマの着方から夜寝るときの『おやすみ』まで、日常生活すべてが指導です」

 犯罪白書によると、2015年時点で出所後5年以内矯正施設再入所率は、刑務所から出所した者の37.5%に対して、少年院出院者では22.7%。この数字だけ見ると少年への矯正教育はある程度効果があるように感じるが、一方で、今回の事件のように、矯正不可能と思われるような人間も入ってくる。

 取材対象の少年たちに「少年院で岡庭のような人間は更正できるか?」を問うと、「人種が違う」「難しい」という答えが返ってきた。殺傷事件のあった境町が地元のAさんにいたっては「無理です。自分が殺してやりたいぐらい」と断じた。

 現状では、悲劇を繰り返さない仕組みが整備されているとは言い難い。矯正教育や治療の内容、出院後の社会のサポート態勢のアップデートは今後も課題となる。

 また、厳罰化の流れにあった少年法の改正案が5月21日に可決成立した。今後罪を犯した18、19歳については「特定少年」と規定し、起訴(略式を除く)された段階での実名報道を解禁。従来の全件家裁送致は維持するものの、その後、成人と同様の刑事手続きを取る検察官送致(逆送)されることになる。

 厳罰化が少年たちの更生にどのような影響を及ぼすことになるのか? しばらくの間注視する必要があるだろう。

◆元・法務教官のジャーナリストが語る矯正教育の現在地

 茨城一家殺傷事件の容疑者を巡る報道から見える、幼少期から続く常軌を逸した残虐性からは、’97年に神戸連続児童殺傷事件で社会を震撼させた「酒鬼薔薇聖斗」こと元少年Aを想起させられる。

 矯正教育の現場を取材し『少年A 矯正2500日全記録』(文藝春秋)を上梓して話題となった東京少年鑑別所元法務教官でジャーナリストの草薙厚子氏が振り返る。

「神戸の事件では、2人の死者と3人の重軽症者が出た。殺害した少年の身体の一部を中学の校門に置くなど、強い暴力性を伴った特異な犯行でした。世間を騒がせた事件でしたから、法務省は威信を懸けて“国家プロジェクト”として更生に取り組んだのです。

 少年院の矯正教育は、入所前から聞き取りや観察などを徹底的に行い、少年ごとに個別のカリキュラムが組まれます。基本的に、入院期間は定まっておらず、更生したと認められるまでは出院できません。神戸の元少年の場合、『性的サディズム』の治療と、『愛着障害』を治療するため、精神科医を中心に法務教官が両親を演じるなど、もう一度育て直すことに注力しました」

◆社会全体で対応すべき問題

 茨城の事件の岡庭容疑者との共通点はあまりにも多いという。

「神戸の元少年の影響を受けたのはほぼ間違いない。両者とも広汎性発達障害(現・自閉症スペクトラム障害)の診断を受け、同じ医療少年院に入院。もちろん、自閉症スペクトラム障害=犯罪者ではないです。

 岡庭容疑者にも治療は行われたようですが、十分な成果が得られたとは思えません。専門的なスタッフは恒常的に不足し、また、出院後のサポートも不十分だった」

 第2、第3のモンスターは今後も出現する。少年院にすべてを押し付けず、社会全体で対応すべき問題なのではないか。

【ジャーナリスト・草薙厚子氏】
元・東京少年鑑別所法務教官。地方局アナウンサー、ブルームバーグL.P.でニュース・デスクを務め、独立。著書に『となりの少年少女A』(河出書房新社)など

<取材・文・撮影/池田 潮 写真/法務省矯正局>


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この記事のみんなのコメント

1
  • ***

    6/1 14:16

    更正なんて所詮無理ですな。危険分子は若いうちに絶たないとな。生きていても仕方無い輩共、人間のクズ。殺処分にすべき。例え刑期が終わろうが関係無い、凶悪犯罪やった輩共なんか信用できるか!麗事言う奴いるが無理。凶悪犯罪犯して何人か殺人したけど刑期終えたらチャラなはなりませんな。誰が雇うか!娘が結婚したいと言って連れてきて刑期終えたから関係ないなんて言う親、殆ど居ないわ!取り返しのつかない事はあるんじゃ

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