『街録ch』三谷三四郎×大森靖子 人の人生のオチは「死」しかない

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東野幸治や千原ジュニアなどの芸能人から「娘を育てるためゲイに体を売る男性」「和歌山カレー毒物事件 林眞須美死刑囚の息子」まで、多様なバックグラウンドを持つ人々に街頭で淡々とインタビューするYouTubeチャンネル『街録ch-あなたの人生、教えてください-』。2020年3月よりスタートし、現在は登録者32万人を超える人気チャンネルとなった。

『街録ch』ファンで自らも2度出演、そしてチャンネル主題歌「Rude」を書き下ろした大森靖子氏とともに、お気に入りエピソードを語ってもらった。そして二人のトークは「オチ」を求めがちなコンテンツや批判コメントに対する思いへと向かう……。

◆「おばあちゃんが家族を殺した」

――お二方が『街録ch』で印象に残ってる回って何でしょう?

大森:おばあちゃんが自分の親類を殺しちゃっていたっていう回(※平塚5遺体事件)が衝撃で。だいたいは何かググッたり、何か記事掘ったりすれば出てくるんですけど、世に埋もれている事件で。話を聞いていて、その孫が生き抜いているっていう事実だけでなんかちょっと泣けるっていうか。

三谷:あれは向こうから「出たい」ってDMで来ました。最初、アイコンは全身刺青で、しかも文章に点がなくて、ちょっと怖かったんです。だから「今忙しくて……」ぐらいの感じで、遠回しに断ろうとしたんすよ。そしたら、「おばあちゃんが家族を殺した 私は私で少年院に入っちゃいました」っていうのが連続で送られてきて。もしかして、テレビメディアだと誰も取り扱ってくれないのかなと思って、話を聞いてみようかなって感じのスタートでしたね。

僕が会って面白いと思ったのは、沖縄・石垣島で“ゆすり・たかり”で暮らしている66歳のおじいちゃん。お金持ちの弱みを握って、内緒にする代わりに金をもらうっていう。そのお金で1200万円貯めて、ロケットで宇宙に行きたいとか言うんですよ。こんなに世の中のためになってない頭のいい人っているんだなみたいな。

◆人は出会う瞬間に“素”が出る

――最初は一般の方が多かったですが、昨年あたりから東野幸治さん、千原せいじさん&ジュニアさんなど、著名な方の出演が増えてきてますね。

三谷:最近も家田荘子さん(ノンフィクション作家)が出たいって言ってくれて。多分、『街録ch』が好きなマネージャーさんが推薦してくれたんでしょうね。まあ、「私の話を聞いてほしい」みたいな人がどんどん増えてくれたら嬉しいですし、やっててよかったなと思えますよね。

テレビ番組って、エンドロールを見ても、誰が何しているかわからないじゃないですか。YouTubeは「俺一人でやっている」っていう責任感があるし、反響もダイレクトに来て、褒められれば自己顕示欲も満たされますし、この辺は新鮮な感覚です。

――いつも出会うところから動画が始まっていますが、ずっとあのスタイルなんですか?

三谷:そうですね。はじめて人と人が出会う瞬間っていうのは、素の反応が出るじゃないですか。“カメラがオンになったらもう座ってました”より、使いどころになるし尺も延びる。そこはテレビで培ったテクニックですね。

大森:でも「撮りますよ」って言われると、こっちも構えて演出しちゃうから助かる。自分が出演した回は、ずっと歌舞伎町を歩きながらの撮影だったんですけど、色んな建物や人を視界に入れながらで、会話にリズムができて楽しかった。三谷さんって、重いこと聞くときも、「なるほどなるほど。それで〜」みたいな感じで、温度感が絶妙だからスラスラ喋っちゃう。

◆「編集」でオチは作らない

――インタビューの際に意識していることってなんですか?

三谷:これもテレビ番組制作のときのクセなんですが、「わからないことをなくす」っていうのは心がけてますね。インタビューした人の会話から、“こういうことが起きました、そこからいろいろあって現在はこうなっています”っていう趣旨のVTRを作ると、「え、いろいろの部分は説明されてないじゃん」って、“使えないヤツ”認定されるんです。

だからこちらで編集してオチは作らず、本人の口から言ってもらったものですべて構成するようにしています。もともと、僕は“おばさん気質”みたいなところがあって、高校生のとき、4時間ぐらいサイゼリヤで女子同士の悪口を聞いてられる人だったんですよ。だから話が脱線したところで全然苦じゃないし、余談の中に面白さがあると思ってるんで。

大森:結局、人の人生のオチって「死」しかないよね。そういえば、 “死にたいと思うことがあったので死にます”って連絡してきた子がいて、でもそもそも生きているのって、死ぬまでに自分をなるべく良い形にまで持っていくっていう作業じゃないですか。なのに今の無様なままで死にたいとか、私に何言ってきてるんだろうと思ったことがあって。

三谷:「死にたい」って言わないと、逆に追い詰められちゃって死んじゃうんじゃないですか?YouTuberでも「アンチのコメント気にしません」みたいなこと言う人いるじゃないすか。でも絶対不健康だと思いますけどね。あんな強い毒を「気にしない」ってキャラ付けすることで、より害がありそう。誰にも相談できなくなっちゃうし。

◆取材対象者ありきのものだからこそ

――『街録ch』に書かれる批判コメントはどうしてるんですか?

三谷:やっぱり浴びすぎるとつらいから、消したりはしますね。自分の都合のいいコメントだけ残せばいいかなって。それに僕が1人で出てるYouTubeだったらいいんですけど、取材対象者ありきのものじゃないですか。無償で僕に時間を提供してくれた人を傷つけることは絶対にあってはならないので、こまめにチェックはしていますね。

――大森さんが『街録ch』に今後期待していることはありますか。

大森:まあ、普通に疲れたら休んでくれたらいいなって思います。一回「毎日やる」とか成約作っちゃうと、意外と止められなくなっちゃうんで。壊れない程度にやってねって感じです。

【三谷三四郎】’87年、東京都生まれ。『笑っていいとも!』や数々の人気番組のADを経て、『さまぁ〜ずの神ギ問』や『有吉ジャポン』などのディレクターに。その後フリーとなり、YouTubeであらゆる人々の人生を聞く『街録ch−あなたの人生、教えてください』を開始

【大森靖子】’87年、愛媛県生まれの“超歌手”。’14年にシングル「きゅるきゅる」でメジャーデビュー。現在ソロ活動の他、プロデューサー兼メンバーとしてアイドルグループ「ZOC」を率いる。7月7日に「Rude」を含む初の提供楽曲セルフカバーアルバム『PERSONA #1』をリリース

<撮影/加藤 岳 取材・文/東田俊介>


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