「まさか夫が…!?」妊活が原因で、夫婦に生じた亀裂。焦った35歳妻が下した決断

「やめるときも、すこやかなるときも、あなたを愛する」と誓ったはずなのに…。

“やめるとき”は、愛せないのが現実。

思い描いていた結婚生活とは程遠く、二人の間に徐々に生じ始める不協和音。

「こんなはずじゃなかった」と不満が募ったとき、そもそも「この結婚、間違ってた?」とふりかえる。

あなただったら、この結婚生活やめる?それとも…?

▶前回:条件を下げ、35歳で結婚した下落合に住む女。彼女に待ち受けていた、予想外の新婚生活

Vol.4 妊娠を望む年上妻の葛藤


【今週の夫婦・結婚4年目】
夫:純也(32)歯科医
妻:美月(35)メガバンク勤務


日曜日の8時。もう少し寝ていたかったのに、スマホの振動で目が覚める。

眠い目をこすりながら、スマホを充電器から半ば乱暴に引っこ抜き、メッセージを確認した。

『お義母さん:美月ちゃん身体細いし、虚弱体質かな?と思って。すごくいい漢方見つけたので送ります。ぜひ飲んでね!』

― 漢方……。

「美月、どうした?神妙な顔して」

寝癖で髪がサイヤ人のような夫の純也が、寝転がったまま尋ねた。

「お義母さんが漢方薬送ってくれたみたい。冷え症に効くやつだって」

そう私が答えると、純也は自分の母親が妻を気遣っていることが嬉しいのか、満足そうに微笑んだ。

― でも、こういうのって本人が診察してもらわないと意味がないんじゃ…。

そう指摘したい気持ちをグッとこらえ、お礼の言葉をLINEで送る。

結婚する前は、話しやすい義母で良かったと思ったが、こんなにしょっちゅう連絡してくるのは予想外だった。そもそも、義母が漢方薬を送ってくる理由は、単に私の冷え症を心配しているからではない。

私たち夫婦に、子どもがいないからだ。

子どもができないことに悩む妻・美月が夫に提案したこととは?

3回目の緊急事態宣言が発令されたGW真っ只中に、私は誕生日を迎え35歳になった。

世間では、出生率の低下が問題視されているが、私の周りは妊娠・出産した友人が多く、SNSでの報告をよく見かける。

― どうして私は妊娠しないの…?

かれこれ3年近く、タイミングを見計らってトライしているものの、毎月何本もの検査薬を無駄にしている。

私は、昔から生理痛がひどく、結婚前は低容量ピルを飲んでいた。医師に相談したら、痛みが軽減されるだけでなくPMSも緩和されると言われたから。腹痛だけでなく、頭痛やイライラ感にも悩まされていた私はピルに救われた。

無知な男性にピルのことを話すと色々と勘違いされそうなので、これまでの彼氏には特に言わずに過ごしてきた。

― 夫なんだから、純也には話そう。

そう思い彼に説明したのだが、その判断はやはり間違いだった。


彼は何を思ったのか、それを義母に伝えたのだ。

その時に、ちゃんと低容量ピルについて説明しなかったのだろう。義母は私に、「女性側が避妊する必要があるほど、遊んできたのか?」と意味不明なことを言ってきたのだ。

その時は、さすがにイラっとしたが、義母に対して強く言うことができず、怒りの矛先は夫へ向かった。しかし、義母に伝えた純也に悪気はなく、強く責めることができなかった。

義母は、結婚後3年経っても子どもができない私に対して、今度は、「まだピルを飲んでいるのか?」とか「妊娠しにくい身体なのでは?」などと探りを入れてくるようになった。

そして、勝手にサプリメントや漢方などを送りつけてくるようになったのだ。

そのことがプレッシャーになりイライラする私とは対象的に、純也は、日付が決まっている営みにも萎えた表情を見せることなく、協力してくれる。

『純也との子どもが、どうしても欲しい…!』

そんな思いが高まったある日、思い切ってある提案をした。

「私、半年に一回は婦人科に行ってるけど、詳しい検査はしてないし、一度二人でちゃんと検査してみたいんだけど、どうかな?」

純也は、素直に同意してくれた。

「そうだよな。俺は、運動もしているし元気だと思うけど、それで美月が安心するなら一緒に検査しに行こう」

夫婦で不妊検査を行ったら、驚きの結果が…

私たち夫婦の休みが重なるのは、週に一度。純也が勤める歯科医院が定休日である日曜日だけだ。

私たちは、世田谷にある有名な不妊治療専門クリニックへ予約を入れ、朝イチで診察をしてもらった。私と同様に検査結果は後日かと思っていたのだが、夫の方はすぐに結果がでた。

「美月、ごめん…」

クリニックから戻り、自宅でのランチタイム。目の前の、牛のラグーソースのパスタに手をつけられないまま、純也はうな垂れている。

私も、気の利いた言葉をかけたいのに、ショックで何も出てこない。

純也の検査結果は、“いることはいるが、数が少ない”というものだった。しかも、基準を少し下回る程度ではなく、かなり少ない。

私の方も、結果待ちなので何とも言えないが、とにかく二人で絶望感を味わうことになってしまった。

「とにかく、食べようか」

パスタが冷めて伸びる前に、食事を済ませようと純也に声をかける。

純也は、か細い声で返事をし、ゆっくりとパスタを口に運んだ。



1週間後。

私の検査結果が出たが、異常はなかった。

もちろん年齢のことがあるので、妊娠率は高くないことに変わりはないが、卵子数を推測するAMH検査の値も平均値だ。

しかし、私の検査結果を知ってから、彼の様子はさらにおかしくなった。常に元気がなく、私の顔色をうかがうような態度。

そもそも、私が結婚を急いだ最大の理由は、子どもが欲しかったからだ。

いくつかの恋愛を重ね、ふと気づいた時には、周りの友達は次々と結婚し、SNSで子どもの写真ばかり見かけるようになっていた。

純也と出会ったのは、焦りがピークだった頃。

年下で、運動経験あり。しかもタバコは吸ったこともなく、お酒も嗜む程度。これならすぐに妊娠できるだろうと浮き足立った。

でも、まさかそんな純也に少なからず、不妊の原因があったとは。

― どうして私だけ、順調に事が進まないのだろう。

自分の検査結果が出たあと、ついつい夫を責めたくなってしまう気持ちを抑え、「離婚原因 不妊」とネガティブなワードを夜な夜な検索しては、寝付けない日々が続いたある日のこと。

私はいい加減話し合おうと、夕食時に切り出した。

「ねぇ、純也。子どものことなんだけど…」

話しかけた瞬間、かぶせるように彼が尋ねてきた。

「俺と別れたい?」

― え…?今なんて?

純也は、見たこともない泣きそうな顔をしている。


私は、予想もしていなかった純也の言葉に、動揺した。そして、この1ヶ月心の中で彼のことを責めてばかりだった自分を後悔した。

― もっと早く、純也と話し合えばよかった。

私は子どもが欲しい。もちろんそれは今も変わらない。

だから、今すぐに子どもを持つことを諦めろと言われても、納得できないし、そんなの悲しくて悔しい。

― だけど…純也と別れることは、考えられない。

先に泣き出したのは、私の方だった。

「純也、ごめんね。私、あなたと別れる気はないよ。そりゃ子どもはできれば欲しいけど、それは、純也と夫婦でいることが前提なの」

純也は、テーブルの上で私の手を握った。

「美月、ありがとう」

不妊治療すれば可能性はあるし、口うるさい義母も原因を知れば、少しは大人しくなるだろう。

落ち込まないと言ったら嘘になる。

最悪、“子どもを持たない”という選択を、いつかしなければならないかもしれない。

だけど、子どもが欲しいという想いよりも、彼と一緒に居たい想いの方が強い。

そのことを、私は実感した。

未来はどうなるかわからないが、少なくとも、夫婦の絆は、一層強くなった気がした。

お互いを思いやれる二人ならば、きっと乗り越えられる。そんな気がする。


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