永遠に色あせないリヴァー・フェニックスの輝き 映画『スタンド・バイ・ミー』

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ロブ・ライナー監督作『スタンド・バイ・ミー』を鑑賞すると切ない気持ちになる。それは、少年時代にノスタルジアを感じるだけではない。あの頃、輝いていたリヴァー・フェニックスの才能が、今はこの世に存在しないという事実を痛感するから……。撮影秘話やトリビアと共に映画の魅力を探ってみたい。

あの夏、友達のことだけは信じられた。少年たちの冒険物語

1959年、夏。オレゴン州の小さな町キャッスルロックに住む4人の少年、ゴーディ(ウィル・ウィートン、)クリス(リヴァー・フェニックス)、テディ(コリー・フェルドマン)、バーン(ジェリー・オコンネル)は、列車に跳ねられて死んでしまった少年の死体を探しに行く。

家族には内緒で出かける少年だけの冒険。両親との関係性、家庭の事情などの悩みを抱える少年たち。この夏の友情だけは信じられた……。

1987年に公開されたロブ・ライナー監督作『スタンド・バイ・ミー』は、少年たちのひと夏の冒険を描いた作品です。田舎町での窮屈な暮らし。そして、家族の評判に振り回されてしまう少年の揺れる内面を、1950年代のポップな音楽を交えてノスタルジーたっぷりの描写で映し出しています。

スタンド・バイ・ミー

スタンド・バイ・ミー

1986年/アメリカ/89分

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原作はスティーヴン・キングの半自伝小説

映画の原作は、1982年に出版されたスティーヴン・キングの半自伝的小説「The Body」。ウィル・ウィートンが演じたゴーディが、キングの少年時代をモデルにした人物です。

ゴーディは、少年時代がから物語を作る能力があり、旅の途中で親友たちに話す「パイ食い競争の話」は、少しグロテスクで、でもウィットに飛んでいて、いかにもスティーヴン・キングらしい魅力的なストーリーです。

作者のスティーヴン・キングも、この映画が大好きで、映画公開時にはロブ・ライナー監督の元に駆け寄り、「今まで見た映画の中で最高傑作だ。」と伝えたという逸話があります。

1980年撮影のスティーヴン・キング

BOSTON, MA - JUNE 25: Author Stephen King attends a gala saluting Boston's Gregory McDonald upon the publication of his seventh novel "Who Took Tony Rinaldi?" at the Harvard Book Store Cafe on Newbury Street in Boston on June 25, 1980. (Photo by Wendy Maeda/The Boston Globe via Getty Images)

キング作品には欠かせないキャッスルロックが舞台

映画の冒頭、「1959年夏、オレゴン州キャッスルロック」というナレーションが入りますが、小説の世界ではメイン州になっています。架空の町キャッスルロックは、スティーヴン・キング作品に共通する物語の舞台となる町です。

ドラマ『キャッスルロック』(2018-2019)では、シーズン1では『IT』の世界を、シーズン2では、『ミザリー』の主人公アニー・ウィルクスの若い頃を描いています。シーズン2には、『スタンド・バイ・ミー』の登場人物でキーファー・サザーランドが演じたメリルの中年男となった姿が登場します。

『キャッスルロック』でメリルを演じるポール・スパークス

WEST HOLLYWOOD, CALIFORNIA - OCTOBER 14: Paul Sparks attends Hulu "Castle Rock" Season 2 Premiere at AMC Sunset 5 on October 14, 2019 in West Hollywood, California. (Photo by Erik Voake/Getty Images for Hulu)

ロブ・ライナー監督と4人の少年

俳優としても活躍しているロブ・ライナー監督は、主人公の4人の少年たちを演じた俳優たちに演技的アドバイスをしながら導いていました。

吹替え版では分かりづらいのですが、木の上の隠れ家で、コリー・フェルドマンが演じるテディの独特の笑い方は、ロブ・ライナー監督とコリーで、30種類もの笑い方をテストして決めた笑い方です。

ちなみに、少年たちが喫煙するシーンがたびたび登場しますが、使用しているタバコはレタスの葉で作られているとのことです。

Rob Reiner during Rob Reiner Honored with a Star on the Hollywood Walk of Fame at Hollywood Boulevard in Hollywood, California, United States. (Photo by SGranitz/WireImage)

15歳のリヴァー・フェニックスの輝き

リヴァー・フェニックスが演じたクリスは、ヒーロー的でリーダーシップあふれるキャラクターですが、唯一弱さを見せるシーンがあります。森の中で、キャンプをしながら親友のゴーディに牛乳代を盗んだ事件について語る場面です。

このシーンを演じたことでリヴァー・フェニックスは、のちの華やかなキャリアを確定させたと言っても過言ではないでしょう。

この素晴らしい演技のシーンにも、ロブ・ライナー監督の「大人に失望させられたときのことを考えてやってみなさい。」という助言がありました。

LOS ANGELES - SEPTEMBER 19: River Phoenix as Guthrie McFadden on the CBS television network serires, "Seven Brides for Seven Brothers." Pilot episode dated September 19, 1982. (Photo by CBS via Getty Images)

少年4人の個性と独特の雰囲気が良い

ゴーディは、少しオタクっぽいですが、意思の強さを感じさせる少年。クリスは、正義感を持つリーダっシプある少年ですが、アルコール依存症の父親と、不良の兄の悪い評判が足かせになっています。戦争のPTSDで精神を病んでしまった父親を愛している破天荒な性格のテディ。うっかり者ですが、憎めない可愛らしさのある少年バーン。

主人公の4人のキャラクターも愛らしいですが、キャスティングをしたスタッフの俳優を見る目の確かさにも驚きを隠せません。

ジェリー・オコンネル、ウィル・ウィートン、コリー・フェルドマン、リヴァー・フェニックスの4人は、撮影当時11歳から15歳です。彼らは、宿泊していたホテルで一緒にたくさんのいたずらをするほど仲良くなっていました。その雰囲気は、映像からも感じることができます。

『スタンド・バイ・ミー』出演者

2011年撮影。左からロブ・ライナー監督、ゴーディ役ウィル・ウィートン、テディ役コリー・フェルドマン、バーン役ジェリー・オコンネル、作家役リチャード・ドレイファス

TOLUCA LAKE, CA - MARCH 16: (L-R)Director of "Stand By Me" Rob Reiner, actors Wil Wheaton, Corey Feldman, Jerry O'Connell and Richard Dreyfuss attend the 25th Anniversary interview with the director and cast of "Stand By Me' at the Falcon Theater which coincides with the release of the 25th Anniversay edition of the Blu-ray "Stand By Me" on March 16, 2011 in Toluca Lake, California. (Photo by John M. Heller/Getty Images)

リヴァー・フェニックスと同年代の俳優たち

リヴァー・フェニックスは、当初ゴーディ役のオーディションを受けていましたが、ロブ・ライナー監督が、クリス役の方が良いと考えて変更しています。クリス役の最終選考に残ったのはイーサン・ホークで、監督はイーサンに直接「もうひとりの鳥の名前がついている子を選んだんだ。」と伝えたのだそう。

River Phoenix, nominee Best Performance by an Actor in a Supporting Role in a Motion Picture for "Running on Empty" (1988) (Photo by Barry King/WireImage)

ゴーディ役に選ばれたコリー・フェルドマンは、すでに『グレムリン』(1984)や『グーニーズ』(1985)に出演している有名子役でした。この当時、10代前半の優秀な俳優たちがたくさん登場してきていて、彼らはよくオーディションで一緒になっていました。イーサンとリヴァーも『エクスプローラーズ』(1985)で共演し意気投合しています。

その他に、コリー・ハイム、ショーン・アスティン、スティーブン・ドーフなどもオーディションを受けています。

エクスプロラーズ

エクスプロラーズ

1985年/アメリカ/0分

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1980年代のコリー・フェルドマンとコリー・ハイム

二人のコリーは、よくオーディションで同じ役柄を争っていました。コリー・ハイムも薬物に依存してしまい、2010年に38歳という若さで亡くなっています。

Corey Feldman & Corey Haim (Photo by Jeff Kravitz/FilmMagic)

薬物が奪った才能

リヴァー・フェニックスは1993年に薬物の過剰摂取で亡くなりました。23歳という若さでした。この当時、10代半ばで映画スターとなった俳優たちに対するケアは十分ではなかったのかも知れません。

ゴーディ役のコリー・フェルドマンも、『スタンド・バイ・ミー』出演後から薬物依存症になってしまいます。コリーは独特の「怒り」を抱えた俳優でした。その存在感はやはり特別でした。彼の10代から20代にかけての攻めた演技を見てみたかったという思いもあります。

リヴァーと同じ1970年生まれで、友人であり、俳優としてはライバルだったイーサン・ホークは、彼の死を受けて「ロサンゼルスのエンターテインメント業界は若い俳優にはキケンすぎる。」と考えたのだそうです。

WEST HOLLYWOOD, CA - OCTOBER 31: A general view of atmosphere (River Phoenix memorial) at the 2013 West Hollywood Halloween Costume Carnaval on October 31, 2013 in West Hollywood, California. (Photo by Barry King/WireImage)

リヴァー・フェニックスの人生は、23歳で終わってしまいました。『スタンド・バイ・ミー』での15歳のリヴァーは、永遠に美しいままです。この当時の純粋な姿の思い出を、50代になったリヴァー本人に語ってもらいたかったという無念さは、ファンの中でも一生消えないトラウマのようなものかもしれません。それくらい彼を亡くした喪失感は大きく、筆者の心の片隅にも、今もなお、小さな穴を開けたままになっています。

『スタンド・バイ・ミー』を鑑賞すると、映画の持つ少年時代の楽しさや儚さを感じると共に、この世から突然いなくなってしまったリヴァー・フェニックスという存在の大きさを感じて、懐かしく、切ない気持ちになるのです。

スタッフ

監督:ロブ・ライナー
脚色・製作:レイノルド・ギデオン
脚色・製作:ブルース・A・エバンス
製作:アンドリュー・シェインマン
原作:スティーブン・キング
主題歌『スタンド・バイ・ミー』:ベン・E・キング
撮影:トーマス・デル・ルース
音楽:ジャック・ニッチェ

キャスト

ゴーディ:ウィル・ウィートン(土井美加)
クリス:リバー・フェニックス(高山みなみ)
テディ:コリー・フェルドマン(水原リン)
バーン:ジェリー・オコンネル(亀井芳子)
エース:キーファー・サザーランド(森川智之)
作家:リチャード・ドレイファス(野島昭生)

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