緊急事態宣言下でも授業や出社が再開。「完全にチキンレース」の現場

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 東京や大阪などの大都市に続き、新型コロナウイルス感染者数の増加を受けて、沖縄県も緊急事態宣言を発令。全国の感染者数は微増か横ばいではあるものの「まん延防止等重点措置」の適用地域も拡大し、コロナ収束の兆しは一向に見えてこない。

 そんななか、これまでは休校だった学校や、リモートワークに移行していた職場にも人が戻りつつあるというが、不満の声も聞こえてくる。現場では何が起きているのか。

◆学校や職場に人が戻ってきたが…

 関東在住の私立大学3年生・藤岡絵理奈さん(仮名・21歳)が不満をぶちまける。

「ずっと自宅学習、リモート授業だったんですが、4月の終わり頃から対面授業が再開されました。ところが、行ってみると、来ているのは生徒だけ。先生だけはリモートで、プロジェクターに映し出されたスクリーンの中で授業してるんです」(藤岡さん、以下同)

 教室には、対面授業の再開を喜ぶ生徒がたくさんいたが、換気もされておらず、友人との久々の再会を喜ぶ一部の生徒たちがおしゃべりに没頭。当然、「密」状態はあちこちで起きている。藤岡さんは、気が気ではない日々を送っているという。

◆気が気ではない日々

「本当は、4月の頭には授業開始と言われていたから電車の通学定期券も買ったんですけど、5月スタートに延びて1か月ぶんがムダになりました。大学の職員や担当教授に相談してもわからない、知らないばっかり」

 一人暮らしの生徒のなかには、バイトもできず家賃も支払えないため、実家に一時帰宅しているパターンもあったと話す。授業再開に合わせて地元から再度上京してきた知人は、学校に翻弄されて鬱状態に陥ったとも言う。

 結局、なぜ通常授業が再開されたのか、未だに学校側から詳しい説明はない。感染者が減った、危険性が減少したなどのエビデンス(根拠)も提示されず、藤岡さんは強い不満を抱いている。

◆どこの部署が最初に出社させるか「完全にチキンレース」

「完全にチキンレース状態だった。どこの部署が最初に出社させるか、社内でお互いの出方を見合っているんですから」

 こう話すのは、都内のコンサル会社勤務・坂本祥太さん(仮名・30代)。昨年の夏以降、ほぼ全社員がリモートワークへ移行したが、今年に入り、社員を出社させる部署が増え始めているという。

「打ち合わせも会議もリモートで可能ですが、結局会って話したほうがいいね、となる。部署ごとに、こっそり出社している社員がいるのは知っていましたが、今年に入り、ある部署が出社に切り替えました」(坂本さん、以下同)

 リモートワークは会社全体の決定であるし、逆らうことは感染リスクを高めることにもつながる。そんなことは許されないはずだと誰もが思っていた。だが、会社のトップはそれを黙認したという。

「全員リモートワークから、全員出社になり、さすがにおかしいと一部の社員が上と掛け合ったそうですが、『ライバル会社はすでに全員出社にしている』と言われてしまったそうです」

 感染拡大が続く中でも、同業ライバル社が「出社」していれば「我が社も」となるのは、いかにも日本企業らしい文化というか、日本人らしいというか……。

◆リモートワークから「出社」体制に戻った理由が曖昧

 関西地方在住の保険代理店勤務・辻本善彦さん(仮名・40代)の会社でも、感染者数が増加の一途を辿っていた最中にリモートワークから出社に切り替わったが、その理由はあまりにお粗末なモノだった。

「出社が再開された理由を誰も知りません。一部の年配社員が、パソコンやメールが使えず、リモートワークができないと上に訴えていたので、それに社長が応じる形だったのでは……と言われています」(辻本さん、以下同)

 今年4月頃には、ほぼ全社員が出社。一応、部署のスペースを区切ったり、それっぽい「対策」は行われていたが、5月に入ってから案の定、複数の感染者が出た。

「昨年の春に感染者が出たときは大騒ぎ、会社は閉鎖、全ての部屋が消毒されるなどしていたのに、今回は特に動きもなくて」

 いずれも、なんらかのエビデンスによって「登校」や「出社」が再開された、ということではない。さらに、その理由を問うても誰も答えられず、誰が決めたのかさえ曖昧になっているとも言う。

 平時なら笑っていられた、そうした「日本らしさ」に流されるまま、世界の流れからいつの間にか逸脱し、漂流している、なんてことにならなければいいのだが……。

<取材・文/森原ドンタコス>


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