借金500万円男が海物語で放った起死回生の一発

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―[負け犬の遠吠え]―

ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。
それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。

「マニラのカジノで破滅」したnoteが人気を博したTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載は50回目の節目を迎えました。

 今回は、高校時代のお友達とパチンコに行って大勝ちしたお話です。


◆友達と集まるために必要なほんの少しの理由

 もう9年の付き合いになる友達の実家がなくなるということで、当時の友人達5人ほどで、久しぶりに湘南の近くまで行った。彼の親と面識があるかと言えばほとんど無いし、湘南にも思い入れはない。ただ、ほんの少しの「集まる理由」があって、30を目前にしてみんな少しずつ物足りない生活をしていた。

 1時間電車に乗って、あまり思い入れのない駅に降りる。

 初めて出会った19歳の頃、みんなフラフラしていた。パチ屋と雀荘を往復し、大学を留年したり辞めたりしながら毎日ラーメンを食っていた。19歳くらいというのは、働かなくても無敵だった。

 女子高生が「ウチら最強」と思っていたなら、僕たちは「このまま人生もなんとかなるんだろうな」と思っていた。

 それから9年、一生大学生だと思っていたアイツも、ずっと雀荘の店員をしていると思っていたアイツも、何やかんやで生活している。どういう経路で入ったのかわからないが大企業にいるヤツ、遊ばなくなってから心機一転大学生活に精を出し就活に成功したヤツ、バイトばっかりだけどなぜか遊ぶ金は確保しているヤツ。

 人生は、意外と何とかなる。

 久しぶりの再会を色濃くするために特別な昼食を、と話し合うが、結局ラーメンに落ち着く。

 友人の家に行くと、母親が荷物の整理をしていたので、ゾロゾロと手伝いをする。年季の入った家具を外に出していた。学生の頃は誰かのために動く度に時給計算をしてはため息なんかをついていたが、この歳にもなってくると、そんな打算も無くなって満足感を得るようになる。一分一秒が惜しい時代はとっくに過ぎていた。

「なんでも言ってください!全部手伝うんで!」

 我ながら、いい歳の取り方をしたのかもしれない。

 高校を卒業してからの友達だから、卒業アルバムが出てきても興味が湧かない。記憶にない他人の思い出を捲りながら適当に笑う。家で寝てるよりは楽しい。

◆人生を体現するモノポリー

 部屋の隅を漁ると、ディズニー映画のVHSとモノポリーが出てきた。「友達の実家」には大体モノポリーが置いてあるが、今までちゃんとルールを把握している人間も、かつてモノポリーの思い出があった人間も見たことはない。

 思うにモノポリーは、ある程度年季の入った家の中に紛れ込んでしまう、人の形をしていない座敷童なのだろう。

 経年劣化で、さながら古書の風格さえ纏ったルールブックを見ながらモノポリーを遊んだら、その中で金がない3人が早々に破産した。3人とも途中まで金を大事に貯金してたが、早々に物件や土地に投資した連中が稼ぎ始めるのを見て慌てて買い出し、資本主義レースに乗り遅れてジリ貧になってしまった。

 思えば3人全員が勉強も就職も遅いほうだった。現実から目を逸らし、ギリギリまで遊び、いよいよ周りの友達が遊んでくれなくなってから床に貼り付いた重い腰を上げるようなトロい生き方をしてきた。

 モノポリーはかなりリアルなゲームだ。

◆あの頃の思い出はラーメンと、麻雀と、パチンコくらいだった

 さあ、もうやることがない。酒を飲むか? いや、飲めない。昼から酒を飲んで楽しかった時代も終わってしまっていた。

「久々にパチンコでも行く?」

 誰かが言った。金銭感覚だけが大人になって、みんなしばらくパチンコを打っていない。こんなに長い付き合いだというのに、あの頃の思い出はラーメンと、麻雀と、パチンコくらいだった。

 28歳たちがぞろぞろとパチンコ屋に向かう。かつてはスロットの期待値稼働しか許さなかった連中が、金回りがよくなってから確率を捨てた。あの頃一日中パチンコ屋で奮闘していた姿はない。

「勝ったら高いメシでも食おうぜ」

「ノリ打ちにする?」

「一人いくらまでにする?」

「2、かなあ」

「まあ、そんくらいだろうな」

 最後は僕のセリフだったが、ここで心臓を掴まれた気持ちになった。2万!? ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれよ。僕はまだ借金が400万近くある。財布に入っているのは1万円札と、13枚の1000円札。4000円で終わる単発底辺バイトを繰り返している証拠だ。

 ここまでずっと「なんやかんや生きている28歳」の感じを出してきたが、僕に関してはなんやもかんやもない。ギリギリのラインなんかとうに割っていて、全部諦めているだけだ。こいつらみたいに就職をしているワケでもない。

 だが、こんなクズだからこそ一番仲のいい友達に張らなくていい見栄を張る。彼らの前では「楽天家で面白い俺」でいたかった。それ故の見栄だ。どれだけ金が無かろうと、友達と久しぶりに行くパチンコで2万円を惜しむ人間にはなりたくなかった。

「正直4パチじゃもう興奮しないよな。俺たちはカジノを知っちゃったし」

「だよな〜」

ここで逃げたら芯の芯までダサくなってしまう。もう自分を認められるのは自分だけなのだ。

「適当に打ってくるわ、化物語とか。」

パチンコに勝てる台なんてない。パチンコを打つという選択は純粋な運試しでしかなかった。ただ、早く覚悟を決めるために目についた台に座る。

「忍・・・!」

 P<物語>セカンドシーズン。スペックも演出も知らないまま、2万円が吸い込まれた。台に失礼な態度で臨んだのだから当然の報いだろう。尻の間が汗でびちゃびちゃになる。残金は3000円。おしまいだ。

◆お座り一発に救われる

 震える手をポケットの中に突っ込んで隠しながら喫煙所に向かう。こういう時はクラッとするまで深くタバコを吸ってしまうしかない。

 友達が先にいた。

「どう?」

「いや、ダメだったわ。」

「やっぱハングリー精神が足りなくなったよな。神様は見てる」

「こうやっていろんなものが余裕になっていって、いろんなものに必死になれなくなって、刺激が足りないって嘯く大人になってくんだろうなあ」

 エモい会話だったが、内心ではそんなこと少しも思っていなかった。2万円を失った。でも友達に付き合ったせいだとは思いたくない。数年ぶりの思い出に高いも安いもない。納得しろ、納得しろ、自分。

 納得するためには、一回台無しにするしかない。これまでの人生もずっとそうしてきた。納得できない結果を受け入れるには一度全部捨ててしまえばいい。滑り止めで進学した大学も辞めた。生活の旗色が悪くなった瞬間に借金をしまくった。会社とソリが合わなくなったから退職した。

 だったら3000円も使い切ってやろう。

「口直しにどうでもいい台打ってくるわ〜」

 Pギンギラパラダイス夢幻カーニバル。全く思い入れのない台だ。海物語シリーズは老人ホームだと思っている僕にとって、台無しにするにはちょうどいい台だと思った。

 だがギンギラパラダイスは僕を殺さなかった。

「オ〜ハニ〜イヤ〜サンバ〜オエオエオ〜」

 お座り一発サンバのリズム。気持ち良すぎる。

 せめて1万円返ってくればいいと思っていたが、これが7万円分も当たり続けた。しかもこの台、ビッグボーナスでたっぷり1500発近くも出るからあっという間に当たってしまった。

 令和3年の大工の源さんは、この台だろう。

 帰りにみんなでピザを食べた。さっきの2万円が本当はめちゃくちゃ惜しかったから、負けた時は本当に絶望していた、という話をすると

「なんでそんな見栄張ってたんだよ」

 と笑われた。

「せめてお前らの前では、自信満々で相変わらず面白いままの俺でいたかったんだよ」

 とは、言わなかった。

〈文/犬〉

―[負け犬の遠吠え]―

【犬】
フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩

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  • 日刊SPA!

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