同棲4年目の彼氏は、一回り下の同じ干支のオンナと…。35歳・マスコミ勤務の独身女が体験した地獄

住んでいる街によって、人生は変わり、また人も変わる。

2020年、東京の街は大きく変貌した。

店は閉まり、代わりにフードデリバリーの自転車を頻繁に見かけるようになった。また時差通勤やテレワークが導入され、ラッシュ時の人は減った。

では、東京に住む女の人生は、どう変わったのだろうか? エリア別に、その実態に迫る。

今回は豊島区在住・里子(35)の話。

▶前回:「手取り36万。家賃13.5万円は、いい男に出会うための出費だったけど…」アラサー独身女の孤独

都会の喧騒に疲れた目白女子・里子(35)


「え?今なんて…?」

同棲して早4年。彼氏の龍太郎は涙目になっており、椅子の上でなぜか正座をしている。

「ごめん里子。子どもができたんだ」
「それはどういう…?」
「ごめん。浮気をするつもりはなかったんだよ。でも、向こうに子どもができてしまって…」

あぁそうか。私は浮気をされ、そして彼とその浮気相手との間に子どもができたのか。

同棲して4年になるけれど、最後に龍太郎と体を重ねたのは、何年前になるだろうか。正確には覚えていないけれど、たぶん2年以上触れ合っていない。

意外なほど冷静な自分に驚く。どこか他人ごとみたいな感覚だったが、龍太郎は無神経な言葉でトドメの一発を食らわせてきた。

「その子には僕が必要なんだよ。でも里子は、ひとりでも生きていけるよね」

この話し合いのわずか一週間後、龍太郎は部屋を出て行った。

今年の11月で36歳になる私。浮気相手は私と同じ干支の、丑年の女。なんと一回り下の、24歳の子だった。

こうしてあっけなく、私たちの同棲生活は幕を閉じた。

“ひとりでも生きていける”と男に思わせてしまうオンナ

別に、結婚願望があったわけではない。幸い、ひとりで生きていける収入もある。

― 私は、大丈夫。

どんなにそう思っていても、龍太郎の荷物がなくなり、急に広くなった部屋を見ていると、心にぽっかりと空いた穴はどうにも塞がってはくれない。

龍太郎と住んでいた、中目黒の2LDK、家賃35万強の部屋。

ふたりで住むにはいいけれど、ひとりだと妙に寂しい。

ただ悲しいかな、こんなときでも私は泣けないオンナだった。

龍太郎の言うとおり“ひとりでも生きていける”強さを無駄に身につけてしまっていた。

もっと可愛げがあれば、「行かないで」と言えたのかもしれない。でも明日も仕事があるし、生きていかなければならない。涙ひとつ流せない自分がおかしくなる。

都内の有名大学に入り、新卒で大手テレビ局へ入社。周囲が食事会やらデートで浮かれている間、私は死ぬ気で働いていた。

忙しすぎて、20代後半から5年間交際していた彼氏に振られた。

振られた当時、私は31歳。そんな時に出会ったのが、広告代理店で働いていた龍太郎だった。

「すごいなぁ。仕事、頑張ってんなぁ」

龍太郎のどこかのんびりした雰囲気が、好きだった。

優しくて、たまに出る熊本弁が可愛くて、いつの間にか私は彼のことを好きになっていた。そして交際してすぐに、同棲を開始。

不規則すぎる私の仕事にも理解があり、私も彼の仕事に対して理解があったと思う。束縛なんて一切しないため、お互い適度に距離感のある、心地よい関係だった。

最初は、35歳くらいで結婚すると思っていた。たぶん、龍太郎もそのつもりだったと思う。

でも33歳の時に新番組の立ち上げメンバーになり、結婚なんて考える暇がなくなった。

それと同時に、私は何か大事なものも見失っていたようだ。


「里子、子どもは欲しいの?」
「いつかは欲しいけど、今じゃないかな」
「そうだよね。里子のタイミングで」

交際して2年目までは、男女の関係がちゃんとあった。お互い忙しい合間をぬって、きちんと向き合っていたのだ。

ただ、いつからだろうか。

お互い背中を向けて寝るようになったのは。

― 龍太郎:里子、今日も遅いの?
― 里子:ごめん、何時になるかわからない。


そんなやり取りを何度も繰り返しているうちに、私の帰宅が遅くなっても龍太郎から連絡が来ることはなくなった。

それと同時に、ホッとした自分もいる。正直、忙しいときに連絡するのが面倒だったから。

「里子、頑張りすぎじゃない?適度に休みなよ」
「大丈夫だよ。私、仕事が好きだから」

“私は、仕事が好きだ”。呪文のように繰り返していた。仕事さえしていれば、何か救われると思っていたから。

でも目の前にある仕事に追われているうちに、私は龍太郎の存在をどこかで後回しにしていた。

なぜなら、いつでもいてくれる存在だと思っていたから。でもそんなのは、私の甘えに過ぎなかったようだ。

龍太郎だって、もう35歳。気づけば24歳の可愛い女の子とデキていた。

しかも、若い彼女はすぐに子どもができたようだ。

35歳までがむしゃらに走り続けた結果、今の私に残ったのは、誰も待っていない中目黒の部屋と、仕事だけ。

最近数本の白髪を見つけたし、急にシミも濃くなってきた。前までなかったシワも気になるし、本格的に美容医療に力を入れようと思っている。

24歳で龍太郎の子どもを授かった浮気相手と比較すると、何もかもが負けた気がした。

急に押し寄せてきた現実。自立した女が決意した、ある大きな買い物とは…

同棲と同時に、私たちは中目黒へ引っ越してきた。

中目黒に決めた理由は、お互いの通勤に便利だったことと、同棲するにはぴったりの街だったから。

雰囲気が良くて味も美味しいレストランが点在していて、公園や目黒川が近くにある。スーパーがたくさんあって生活には便利な一方、業界人が多くてお洒落な雰囲気もある。深夜遅くまでやっているバーは、すっかり常連になった。

でもこの街も、大きく変わった。

高架下の開発が進み、住んでいる人も若干年齢層が低くなったと思う。今の私には、この街は少し狭くて、そして眩しすぎる。

「私の選択って、正しかったのかな…」

カップルや家族連れだらけの目黒川沿いを歩いていると、急に悲しさと虚しさが押し寄せてくる。

現実を見つめるのがつらくてInstagramを開くと、とある不動産の広告で指が止まった。

― 目白駅徒歩8分。54平米、7,900万円。

「あれ…。買えちゃうな、これ」

その場ですぐに内覧申し込みを入れた。


—半年後—

「これで、お荷物全部になります」
「ありがとうございます」

引っ越し業者の方にお礼を言ってから、床にゴロンと寝転んだ。結局、私は広告で見たマンションを購入した。ローンは25年。幸い名の通った大企業のため、ローンの審査はあっさり通り、とんとん拍子に家の購入が決まった。

「今日から、よろしくお願いします」

誰に言うともなく、窓を開け、大きく息を吸い込む。頑張ってきた、ご褒美だ。働いてきたからこそ、私はここを手に入れられた。

昔は、憧れていた。いつか結婚して、誰かと住み、子どもが生まれて、幸せな家庭を築くことに。

でも今は、不思議とその生活に対して憧れを抱いていない自分がいる。

人生は、人それぞれ。
色々な人生の選択があっても、いいはずだ。

私は自分で稼ぎ、自分の足で立って生きていく。自分の好きな家に住み、自分の好きなようにインテリアを決め、心地よい自分だけの城を作るんだ。

「よし!ちょっと散歩に行こう」

とりあえず、駅方向へ向かって歩き出す。

目白駅周辺には学習院大学をはじめとする学校がいくつかあり、学生も多い。その一方で江戸時代から続く、由緒正しき高級住宅地もあるので、動と静が共存している、非常にバランスの良い街だと思った。

駅から徒歩5分のところには「目白庭園」があり、老夫婦が風情溢れる庭園内を、楽しそうに散歩をしている。

正直、勤務地に近い港区や渋谷区にあるマンション購入も考えた。

でもひとりの時間くらい、何にも縛られずに静かに充電したい。

緑豊かで、ひっそりと佇む住宅地を歩いていると、不思議と心が落ち着いた。肩の荷が、すっと下りていく。

街自体にすっぽりと包み込まれているような優しさを感じた途端、不意に涙が出てきた。

「あれ?なんで泣いているんだろう…」

私は、ずっと頑張ってきた。誰のためでもない、自分のために頑張ってきた。

でも脇目もふらず頑張り続けることに、少し疲れていた。

ちゃんと自分を労って、褒めてあげよう。そろそろ、この頑張りを認めてあげても大丈夫。

リモートワークが増え、通勤電車に乗る日数も減った。私はこの街に、自分らしくいられるような、“充電場所”を見出したのかもしれない。

都心なのに、どこか時間がゆったりと流れている異空間の豊島区・目白エリア。私のような、ちょっと休憩して、静かに暮らしたい人にはぴったりの場所。

そんな場所で私はもう一度、自分のために人生を彩ろうと思う。


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結婚を機に、思ってもいない場所へ引っ越しを迫られ…!?

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