パチスロ規制緩和を勝ち取った切り札は行政の天下り受け入れか

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◆ミリオンゴッド凱旋や沖ドキ!!の設置を続けるホールはなくならない!?

 前回の本稿「ミリオンゴッド凱旋撤去拒否&沖ドキ再設置…自主撤去に異を唱えたパチンコ店の言い分」で北関東のホール団体理事長の声明を紹介したが、どうやら全国組織での役職を解任されたようで。業界全体としての方針に従わない以上は当然の措置かと思われるものの、旧規則機(パチンコのCR機、パチスロの5号機)の撤去やコロナ禍と厳しい状況にあるなかでの混乱は禍根を残すことになりそうだ。

 特に旧規則機の撤去は急務の課題であり、業界として定めた11月末の期限までの約半年間で現在設置されているパチンコ・パチスロ機の約4割数を新規則機(パチンコはP機、パチスロは6号機)に入れ替えなければならない。ホール団体としては期限へ向けての段階的な目標を定めているものの、あくまで目安であり強制力はなし。ホールにとって稼げるのは新規則機より射幸性が高い旧規則機である以上、期限が迫った段階での駆け込み的な入れ替えになるというのが業界関係者の予想である。

 ホール団体の調査によると、今年の2月末の時点におけるパチンコ・パチスロの総設置台数(推計)はパチンコが約240万台、パチスロが約155万台。このうち新規則機はパチンコが約150万台、パチスロが約79万台で、導入率は約58%。残りの約42%が旧規則機ということになるが、これらは新規則機時代に移行して3年が経過した今でも残され使われている、いわばホールにとっての主力機種。だからこそホール側としてはギリギリまで使い続けたいと考えており、新規則機への入れ替えがなかなか進まない要因といえる。

 例えばパチンコでは真・北斗無双や沖海4、パチスロでは番長3やジャグラーなどの人気機種が該当するが、これらが撤去されるタイミングで廃業を決断するホールも少なくないだろう。また11月末の撤去はあくまで業界団体としての自主規制であり法的には来年1月末まで設置できるだけに、本稿で紹介しているようなミリオンゴッド凱旋や沖ドキ!!同様の抜け駆け的に設置を続けるホールが存在する可能性も高い。

◆ホールの主軸はパチスロからパチンコへ

 それでも業界が存続していくためには、「旧規則機の完全撤去=新規則機への完全移行」は避けては通れない。供給側であるメーカーとしては駆け込み的な入れ替えの集中を避けるべく、新規則へ移行してから様々な施策を打ち出している。パチンコでは継続率規制の撤廃や総量規制の緩和、また時短における解釈基準の変更で遊タイムという天井も搭載されたりと、スペック面での緩和を次々と打ち出している。

 正直、ここまで自由度が高いものになるとは個人的に驚いているが、大当り出玉が約3分の2になってしまうという3年前の規則改正時の絶望感はほぼ払拭されたというファンも少なくないだろう。実際、ホール側も営業の主軸をパチスロからパチンコへと移行しつつあり、パチスロを減らしてパチンコを増やすという店舗が急増中だ。

◆パチスロもスペックを緩和

 大手メーカーでさえリストラを進めているパチスロも、パチンコほどではないがスペック面の緩和を進めている。今年に入ってからベースを下げて初当たりを軽くしたという触れ込みの6.1号機基準の新機種が市場へ投入されているが、ホールからは意外に悪くないという評価も聞こえてくるものの、ビッグタイトルでさえ導入台数は伸び悩んでいるのが現実。

 いくら初当たりが軽くなったとしても、やはり5.9号機から搭載され新規則機に受け継がれた有利区間(※AT・ART機の出玉が増える部分を最大1500G、もしくは2400枚で打ち切るというもの)、つまり実質的な出玉リミッターがある以上はパチスロ復権はないだろうというのが多くの関係者の見方。有利区間を搭載していないノーマルタイプが、ボーナスの払い出し枚数が約300枚から約250枚に減っても健闘しているのとは対照的に、主力になって欲しいAT・ART機は厳しいままというのが現状だ。

◆有利区間が3000Gに緩和されるが……

 メーカー側としても有利区間が足かせとなっているのは重々承知ながら、規則で明文化されていないATやARTを行政側に認めさせるための存在として自主的に有利区間を定義した以上、なかなか一気に撤廃はできないという事情もある。それでも緩和の方向へ動き出しているようで、メーカー団体がその方向性を発表した。まず第1段階として5月20日からの新成分について、有利区間を1500Gから3000Gへ緩和。ただし某メーカーの開発担当者によると「出玉面には変化なし」とのこと。

 一撃最大2400枚というリミッターは残るが、有利区間のゲーム数が倍増することで「ある程度深いゲーム数にいっても2400枚を出し切れる可能性が高まりますし、ゲーム性は間違いなく向上します」(前出・メーカー開発担当者)と、6.1号機以上に魅力的な機種開発が可能になるはず。

◆メダルレス機を巡り新たな団体が設立!?

 また第2段階ゲーム数規制の完全廃止も発表されたが、これは「業界で推進しているメダルレス遊技機から実施」(発表から引用)としている。メダルレス遊技機、いわゆるメダルレスパチスロはその名の通りメダルを使わず、クレジットだけでの遊技を想定しているもの。パチンコでも循環式と呼ばれる管理遊技機というものがかねてから計画されているが、そのパチスロ版として立ち上がったものだ。

 2年前のものだが、メダルレス遊技機の資料によると、メリットとしてセレクターやホッパーという機械的な構造物がなくなることによるゴト行為の撲滅、またメダルを使用しないことによって衛生的かつ利便性の向上などが挙げられているが、大きな目的になるのが「出玉情報等を用意に確認できる」ことで「射幸性の抑制」につながるとしている。

 パチンコの管理遊技機も同様だが、そもそもの発端が「出玉情報を一元的に管理できるシステムに接続」するのが目的であり、故に“管理”という名前がつけられた経緯がある。なぜ出玉情報を一元的に管理すれば射幸性の抑制になるのか、そもそも遊技機は型式試験で射幸性の問題をクリアできているはずという疑問もあるが、全体的な構想では一元管理できるシステムは新たに立ち上げられるであろう団体におかれるらしい。そこが新たな行政側の天下り先になるのは想像に難くないが、とはいえ天下りを餌にしてパチスロにおける有利区間の完全廃止という現時点での悲願については目処がついたといえそうだ。

 ただパチンコの管理遊技機が数年間も計画段階のまま日の目を見ないことを考えれば、メダルレスパチスロがいつ登場するかの予定は未定といった状況。11月の旧基準撤去までには有利区間3000Gの機種が間に合いそうだが、出玉面の緩和がないだけにゲーム性は向上したとしてもファンが求める射幸性にどこまで応えられるかは分からない。これで挽回できなければ体力があるホールが進めているパチスロからパチンコへの島転換を抑制できないだろうし、体力がないホールの廃業も止められもしないだろう。

◆入替を促すためにマス媒体への広告が解禁

 なお他にも入れ替えを促す施策として、この4月からテレビや新聞などマス媒体における機種広告も解禁された。東日本大震災後のバッシングによって自粛されてから10年、あれほど氾濫していたパチンコ・パチスロの広告が一切なくなったことは少なからずファン離れに影響したともいわれているが、今回の解禁は新規則機への入れ替えを少しでも即したいというメーカー側の思惑もあるらしい。

 それがどれほどの効果があるのかは判断つきかねるが、旧基準機の完全撤去まで残すところ後半年。コロナ禍の収束が見通せないなか、その時にどれほどのホールが業界から退場し、またどれほどのファンが離れていくのか、多くの業界関係者はできれば想像したくないというのが本音ではないだろうか。 <文/キム・ラモーン>

【キム・ラモーン】
25年のキャリアを持つパチンコ攻略ライター。攻略誌だけでなく、業界紙や新聞など幅広い分野で活躍する。

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