“黒子”から“看板選手”へ…フル稼働で王者・川崎をけん引する山根視来

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 名古屋グランパスとの頂上決戦を2連勝し、5月8日には大型連休期間ラストのガンバ大阪戦に挑んだ川崎フロンターレ。鬼木達監督はキャプテン・谷口彰悟ら主力数人を休ませるなど、メンバーを入れ替えて挑んだ。

 それでも、地力が落ちないのが2020年2冠軍団の強さだ。序盤から主導権を握り、前半終了間際に長谷川竜也のドリブル突破からレアンドロ・ダミアンが今季10点目となる先制弾をゲット。後半は相手の堅守に多少なりとも苦しんだものの、途中出場の三苫薫が見る者を魅了する。高速ドリブルから右足を一閃し、好セーブ連発の東口順昭も反応できないコースへ2点目を突き刺した。終わってみれば2-0の完勝。今季開幕からの無敗記録を継続し、勝ち点を早くも41まで伸ばした。

「(川崎は)球際の速さが素晴らしいし、距離感の良さも僕らとは違った。それに攻守の切り替えの速さも際立っているので、すぐに相手ボールになってしまう。名古屋との試合を見てもマテウス選手に一気に4人が集まってるシーンが多く見られましたけど、人数をかけて奪い切ることを徹底している。それに攻撃面では三苫選手、長谷川選手の個の力。僕らDFからしたらすごい嫌だなと感じました」と対川崎公式戦5連敗を喫したG大阪の昌子源も悔しさを吐露するしかなかった。

 果たして独走する王者を止めるチームは現れるのか……。それが今季J1最大のテーマになりつつあるようだ。

 強者の風格さえ感じられる川崎を力強く支える1人が、27歳の右サイドバック(SB)・山根視来だろう。前述の通り、鬼木監督は過密日程を考慮し、選手を入れ替えながらシーズンを乗り切ろうとしているが、山根だけは開幕から公式戦フルタイム出場を続けている。コロナ中断から夏以降の連戦に突入した昨季J1でも3試合欠場、1試合途中交代のみで、それ以外はフル稼働した。加えて、今年3月の日本代表活動にも参戦。日韓戦で先制弾を叩き出す活躍も見せているのだから、まさに「鉄人」の称号にふさわしい存在と言っていい。

 特筆すべきはタフさばかりではない。4日の名古屋戦での2点目に象徴される通り、攻守両面で躍動感を前面に押し出し、勝負を左右するゴールを決められる決定力も目を引く。

「あの場面はアキさん(家長昭博)が外で張っていて、中のスペースが開いていた。左に展開して、薫がえぐって相手が反応できないクロスをしっかり上げてくれたので、あとは押し込むだけでした。ほぼほぼ薫のゴール」と本人は謙遜したが、右SBがあの位置まで侵入していたこと自体が驚きだ。

 その山根のプレーに改めて着目すると、家長が外に開いている時には必ずと言っていいほどペナルティエリア中央寄りの位置にいて、いつでもシュートを打ちにいける態勢を整えている。相手がカウンターを繰りだすことを考えるとハイリスクのポジショニングではあるものの、守備になると確実に戻って4バックの一角に入り、曺貴裁監督仕込みの球際と寄せの激しさでピンチを防いでいる。攻守の判断と使い分けが実に見事なのだ。この一挙手一投足を目の当たりにすると、もっともっと高いレベルにトライさせてみたくなる。

 幸いにして、5月末からは再び日本代表活動が控えているし、6~7月にはアジアチャンピオンズリーグ(ACL)もスタートする見通し。彼にはチャレンジの場が用意されている。

 前者で言えば、まだ山根は代表キャリアを踏み出したばかりだ。「代表選手として見られているかどうかはわかりませんけど、継続して入っていくためには結果を残さないといけないし、Jで目立たないといけない」と彼自身も語気を強めるように、高値安定のパフォーマンスが必要不可欠と言っていい。

 3月シリーズには酒井宏樹と室屋成という森保ジャパン常連の右SB陣が不在だったが、最終予選を視野に入れると彼らの存在価値はやはり大きい。彼らとの競争に勝たなければ、代表定着は見えてこないのだ。

「サッカーの映像を見るだけでも海外はスピードがメチャメチャ早いし、ゆっくりしてる時間がほとんどない。日本代表の試合に出て『これだけ違うのか』と感じたし、すごい刺激を受けました。特に酒井宏樹選手は昨年10・11月の試合を見て、3バックでもSBでも強度や対人の強さは圧倒的で、正直、『代表の中でも化け物だな』と(苦笑)。フランスでもネイマールとかを相手に止めてる選手なので、違いはかなりあると思います」

 このように物言いは慎重だが、彼には幾多の苦難を乗り越えてきた芯の強さがある。東京ヴェルディ時代にユースに上がれず、茨城県のヴィザス高校時代に東日本大震災に遭い、2016年に湘南ベルマーレ入りしてからはケガで試合に出られず、1年でJ2降格の憂き目に遭った。こうした挫折経験が今のブレイクの原動力になっているのは間違いない。

 そうやって愚直に積み重ねてきた1つ1つのプレーを全力で示しているからこそ、鬼木監督は彼をピッチに送り出し続けている。指揮官の絶対的信頼をひしひしと感じながら、山根には「川崎を支える黒子」から「真の看板選手」へ飛躍を遂げてほしい。

 それだけの資格が、今の彼にはある。

文=元川悦子

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