MISIAとゲス極・川谷絵音の異色コラボが、ハッとする“抜け感”だった

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 緊急事態宣言の発令により、公開延期になってしまった映画『ヒノマルソウル ~舞台裏の英雄たち~』。一足先に、MISIAの歌う主題歌「想いはらはらと」が4月28日に配信リリースされました。「ゲスの極み乙女」の川谷絵音との異色コラボが話題の一曲ですが、想像以上に好相性の化学反応が楽しい仕上がりになっています。

◆いつものMISIAと違う軽さ

 「Everything」や「逢いたくていま」などバラードの名手とのイメージが根強いMISIAは、昨年の紅白歌合戦でも大トリを務め、名実ともに日本の歌姫的存在です。しかし、「想いはらはら」では、格式張った雰囲気から一変。洒脱(しゃだつ)な新境地に、ハッとさせられました。

https://youtu.be/ksJjJQmiyZU

 というわけで、作曲をした川谷絵音の働きに触れないわけにはいきません。MISIA本来の歌い上げる魅力を保ちつつ、歯切れ良さをプラスしたバランス感覚は絶妙。バイオリンのように伸びる歌声だけでなく、パーカッションやギターのカッティングのように細かくリズムを刻むボーカルは、より親密さを増したように感じます。

◆川谷の曲で“抜け感”が

「Everything」も「逢いたくていま」も、美しいハーモニーを持つスケールの大きな曲です。しかし、そこに圧倒的なMISIAの歌が加わると、息苦しさを覚えることもありました。すべてがカチッとハマりすぎていて、逃げ場がないのですね。完璧にドレスアップした人が、他人を遠ざけてしまうような感覚といえばいいでしょうか。

 そこに、川谷絵音は風穴を開けました。MISIAの歌と音楽に、着崩す余裕をプラスしてみせたわけです。感傷に偏れば重くなるところを、クリスプなリズムを持つ歌詞で中和する。“抜け”を作るのが、実に上手なのですね。
 「想いはらはらと」は、「トレンディガール」(私立恵比寿中学)に続いて、川谷絵音の確かな手腕を証明する一曲だと言えるでしょう。
 なにより、お腹いっぱいに感動させないMISIAが新鮮。意外なコラボだからこそ生まれた、嬉しい驚きでした。

https://youtu.be/kQ8dOOQfOcw

◆菅田将暉と野田洋次郎のコラボは…

 さて、もうひとつ新作映画でコラボが話題になっています。8月6日公開の『キネマの神様』。この主題歌「うたかた歌」を、RADWIMPSと菅田将暉が歌うことが決まり、4月30日に一部動画で公開されました。
 1分あまりのトレーラー映像で、泣きまくる出演陣。そのうしろで流れる「うたかた歌」、これがまた“いい”曲なのです。「ならず者」(イーグルス)を彷彿とさせる曲調に、いつも通りにまっすぐ熱い菅田将暉の歌。『君の名は。』、『天気の子』でヒットを飛ばした野田洋次郎にとって、新たな代表曲となるでしょう。

https://youtu.be/zDnrLKFtEY4

 たった数十秒ほどですが、「うたかた歌」が商品として高いクオリティを持つことに疑いの余地はありません。エンドロールで曲が流れれば、みんな涙すること請け合いです。

◆“想定の範囲内”なのがもったいない

 しかし、この“よすぎる”曲からは、新たなワクワク感が漂ってこない。なぜかというと、これまでに菅田将暉は“いい”曲ばかりを歌いすぎてきたからです。米津玄師との「灰色と青」、あいみょんとの「キスだけで」、石崎ひゅーいの「さよならエレジー」に「虹」。どれもJポップの王道で、おおまかに言えばフォークロックの名曲です。「うたかた歌」も、その系譜に連なると言えるでしょう。

 だとすれば、RADWIMPSと菅田将暉のコラボに、どれだけのレア感が生まれるでしょうか? 相手が変わっただけで、ずっと同じことを繰り返しているだけなのではないだろうか。

https://youtu.be/gJX2iy6nhHc

 つまり、菅田将暉の音楽活動全般が想定の範囲内で収まってしまっているのですね。あいみょん、Creepy Nuts、石崎ひゅーい、米津、野田。みんな、優れているのです。それは間違いない。
 けれども、悲しいかな、だいたい同じ角度と太さのベクトルの人たちが集まってしまっている。意外性がないから、突き抜けるものがないのですね。
 これは、菅田将暉という稀代のキャラクターにとって、あまりにももったいないことではないでしょうか。いつか、等身大の表現から離れて、誰も思いつかないような人の曲を歌ってほしいと期待してしまいます。

 「想いはらはらと」と「うたかた歌」。コラボ全盛の時代に、論点を与えてくれる2曲でした。

<文/音楽批評・石黒隆之>

【石黒隆之】
音楽批評。カラオケの十八番は『誰より好きなのに』(古内東子)

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