うつで教師を辞めたusaoさんの漫画で、つらい心がじんわり温まる

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 新年度が始まって、1か月余りが経ちました。別れや出会い、新しい仕事や学校……大きな環境の変化に、もやもやとした気持ちを抱える人も多いのではないでしょうか。日曜日の夜になると、月曜日が来るのが怖くて不安になる。そんなあなたにご紹介したい人がいます。

◆元小学校の先生「usao」が描く、じんわり優しい世界

「ネガティブなのに、欲とプライドがある面倒くさいやつ」と自己分析したり、子どもたちに「みなさんを幸せにするためにやってきました」と正面から向かっていったりする元小学校教師のusao(うさお)さん。これだけ読むと、確かに「面倒くさそう……」と思ってしまいそうですが、彼女が日々SNSに書き込む言葉や漫画には、愛すべき等身大のひとりの女性が生きています。

 優しくそっと寄り添う漫画の投稿もあれば、「泣いて泣いてなにもかもがしんどい」と心情を吐露する投稿も。小学校教師をしながら、これまで4冊の本を上梓しました。それでも変わることなく、ひとりの人間として心の様をありありと投稿し続けるusaoさんですが、今年3月末にうつ病で教師を辞める決断をしました。

◆うつ病で教師を辞めました

 usaoさんがTwitterに投稿する『usao漫画』には、心配性だったり泣き虫だったり、言いたいことをうまく言えなかったりといった、不器用なキャラクターたちが登場します。そのキャラクターたちに「うさお」がそっと寄り添う、じんわりと優しい世界が描かれています。

 そしてusaoさんがTwitterに沈んだ投稿をすると、今度はフォロワーたちが「だいじょうぶですよ」「泣いていいんですよ」「そのままでいいんです」と声をかけます。そこにはまるで『usao漫画』のような平和な世界があるのです。彼女のTwitterのフォロワー数は、今や7万6000を超えています。

 そんなusaoさんは『usaoの先生日記』(東洋館出版社)を今年3月に上梓。子どもたちのことや教師の仕事のこと、「うつ」についてなど話を聞きました。

◆子どもたち・教師という仕事への愛

――今回先生向けの本を上梓されましたが、何がきっかけとなったのですか?

usao:Twitterで『なんでもない絵日記』として、教員生活の良さや悩みを漫画にして掲載していました。東洋館出版社さんから「教員のそばに寄り添う本を作りませんか」と声がかかり、今に至ります。新しい道を進んでいく子どもたちに感謝の気持ちを伝えたい、私の経験談が多くの先生方の力になれれば嬉しいと思い、本にすることを決めました。

――先生になりたいと思ったきっかけは何ですか?

usao:子どもの感性が好きだからです。デパートで開催されていた小学校の歯磨きポスター展で子どもがのびのびと絵を描いているのに感動し、「この感性を教えてほしい!」と思って教員になることを決めました。

◆子どもの表情はみんな好き

――usaoさんが描かれる子どもたちの照れ笑いの絵がとても素敵で、見ていて幸せな気持ちになります。usaoさんは子どもたちのどんな表情が好きですか。

usao:やる気いっぱいの時、気持ちがほどけた時、勇気を出した時。どんな表情も好きですね。

◆有名になりたい、テレビに出たい

――『usaoの先生日記』を読んで、子どもたちもusaoさんのことを思いやっているのだと感じました。どのようにしてその信頼関係が築けたと思いますか。

usao:うまくいかなくても、とにかく一生懸命子どもと向き合いました。そうしたら、子どもも、私のことをしっかりと見てくれたような気がします。

――教師だけでなく、やることが多すぎて余裕がないまま働かざるを得ない……という風潮が世の中全体にあります。悩みながら働いている教師や社会人が多くいます。それに対しての改善方法はあると思いますか。

usao:働きやすい環境を周りの人たちが作っていくしかないです。小さなアドバイスでも「ありがとう」や「手伝うよ」とか、そんな言葉が広がる環境を。1人ひとりができることだと思います。

――「良い先生になりたい」という思いとともに、「有名になりたい。テレビに出たい」とよく発言されているのはなぜでしょうか。

usao:自分が一歩踏み出すことで、今では会えない子どもたちに「元気だよ!ここにいるよ!」と伝えられるからです。また、多くの先生方をはじめ、誰かの心に何か響いたら嬉しいじゃないですか。

◆うまく生きられない自分と向き合って見えてきたこと

――『usaoの先生日記』で、「生き辛さを作る私」という漫画と「たすけたいのに」という漫画が並んでいて、usaoさんらしいと思いました。自分も辛いのに、それでも人を助けたいと思うのはなぜですか。

usao:誰かの心に、自分が生きていてほしいからです。

――学生時代にはイジメにあっていたそうですが、その頃の自分に声をかけるとしたら何とかけますか。

usao:「誰のために生きているんだ。頑張らんかい」と声をかけたいです。

――うつ病と診断されて教師を辞めるまで、どのような思いでしたか。

usao:「申し訳ない」「許してほしい」。ただただ、その言葉を繰り返してばかりでした。

◆仕事から逃げてよかった?

――Twitterに投稿していた漫画で「休むのがきつい。でも働くのも怖い。うまく休めない」というusaoさんに対して、夫のK氏がうまく導いてくれたように感じました。教師を辞めたことに「逃げたのかもしれない」とありますが、今はよかったと思いますか。

usao:まだわかりません。

――漫画を読んでいるとK氏の存在が大きいようですが、どんな方ですか。

usao:師匠のような、お父さんのような、友達のような人です。

――「逃げる」という選択に至るまで、何が壁になっていたと思いますか。逃げる選択ができないで悩み続けている人もいると思いますが、usaoさんだったら何と声をかけますか。

usao:私は漫画で「逃げかもしれない」と表現しましたが、「逃げる」という選択はないと思っています。私は私なりに道を選びました。どうか悩んでください。どうしても行きたい道があって、自分自身が邪魔をしてそっちの道にいけないのなら、人に協力してもらうしかない。でも決めるのは自分。そこは頑張らないといけません。

◆うつで通院して気づいた偏見

――ご自身がうつで通院したことにより、心療内科への偏見に気づいたusaoさん。特別学級にも同じ思いをお持ちでしたね。「同じ立場になったからこそ伝えていく」と決意されていましたが、これからそれをどう伝えていきますか。

usao:漫画で、声で、発信していくことですかね。私の声なんて小さいですけど、少しずつ届いていったらいいなと思います。

――苦しんでいる人が周りにいても、どう声をかけたらいいか、どう接したらいいかわからない人もいると思います。何もしてあげられないと自分を責めてしまう人もいるかもしれません。いま苦しんでいる立場として、どういう接し方が楽ですか。

usao:私は普通に接してほしいです。可哀想な目で見られたくないからです。気を遣われるのも苦手。私は……ですよ。

◆「弱音」がじわ~っと溶けていく

――usaoさんが漫画で弱音を吐いているのを見ると、自分だけじゃないんだと安心します。弱音を吐くことに抵抗がある人もいますが、usaoさんはどう思いますか。うまく弱音をはくコツはありますか。

usao:弱音は無理して吐かなくてもよいと思います。本を読んだりSNSを見たり、自分と同じ思いの人に出会ったりした時、自分の中にある「弱音」がじわ~っと溶けていくのではないでしょうか。

――人を助けると自分の元気も使ってしまいますが、元気を補給する方法はありますか。

usao:よく眠る。できたてのあたたかいご飯を食べる。やりたいように過ごす。といったことでしょうか。

◆いつかまた教育の現場に立ちたい

――今まで4冊の本を上梓されたことで、何か変わったことがありましたか。

usao:不思議と何も変わっていません。このままです。それが良いですよね。

――学校を辞めることになりましたが、今後はどのような活動をしたいですか?

usao:いつかまた教育現場に立ちたいです。教師じゃなくとも。

――「五月病」というように、5月は新しい環境への不安が高まる時期です。そんな時期を乗り越える方法を教えてください。

usao:まだまだ冷たい日が続きます。心も体もあたためてください。

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 悩みを繰り返すたびに「これはなんだ」と自問自答し、それでも頑張りたい、生きて誰かの役に立ちたいと願うusaoさん。枯れることのない、彼女のエネルギーに触れてみてください。

【usao(うさお)】
1991年大分県生まれ、福岡県在住の元小学校教員。講師を4年、教諭を3年経験。うつ病と診断され、今年3月に教員を辞職。SNSにて発信を続ける。著書に『usao漫画』、『usao漫画2』、『なんでもない絵日記』、『usaoの先生日記』

<文/鈴木 麦(フリーライター、古代史・老舗企業研究) 漫画/『usaoの先生日記』、usaoさんのTwitterより>


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