5か月で辞めた新入社員、感染リスクの高い職場に家族から「辞めてほしい」

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 東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に緊急事態宣言が出された。マスク着用をはじめ、こまめな手洗いや除菌を心がけても依然として新型コロナの感染者が後を絶たない。

 人が集まる場所には行かないように注意してもどうしても人が密集してしまうのが職場だ。業種によってはテレワークが不可能な仕事も多く、不安を感じながら働いている人もいるだろう。専門学校を卒業した昨春、介護職員として老人ホームに就職した内山真夫さん(仮名・21歳)は、ちょうど就職に合わせてコロナの感染が拡大。医療機関だけでなく各地の老人ホームでも次々とクラスターが発生していたが、現場で働く本人よりも同居する家族が不安になってしまったという。

◆就職直後から同業の老人ホームでクラスターが相次いで発生

「卒業の半年前に内定が決まったときはお祝いしてくれたのですが、老人ホームでのクラスター発生のニュースが立て続けに報じられると、就職を一番喜んでいたはずの母親がやたらと心配してくるようになったんです。それもこっちの身を案じるのではなく、僕から感染するのを恐れている様子でした」

 彼自身も報道を通じて高齢者施設で感染が広がっている現状を知っていたため、母親の気持ちも痛いほど理解できたとか。ただし、そのうち「仕事ならほかにいくらでもあるんだから」など遠回しに辞めてほしいと伝えてきたそうだ。

◆感染リスクの高い職場に「辞めてほしい……」と家族から圧力

「我が家は三世帯家族で祖父は心臓に持病があり、父親も糖尿病持ち。もしコロナに感染してしまうと重症化する可能性が高いため、母も神経質になっていたんだと思います。こちらもそのことは十分理解しており、僕自身がずっと気にしていることでもありました。だから、母の言い方にカチンと来ることはあっても反論することはできませんでした」

 さすがに父親には仕事を辞めろとは言われなかったそうだが、「費用は出すから」と引っ越しをすすめられる始末。だが、当時の月収は手取りで15万円台。敷金・礼金などの初期費用は負担してもらってもこの給料でひとり暮らしをするのは決して楽ではない。

 つまり、引っ越して仕事を続ける、もしくは実家に残って転職という選択を迫られてしまったのだ。

◆入社から5か月で退職

「この給料では生活するだけでギリギリだし、節約しても貯金が難しくなるのは目に見えています。もともと就職後も実家暮らしを続けるつもりだったため、その前提が狂ってしまった。コロナ禍でも働いてお金を稼がなきゃいけませんし、そう考えたら家を出てまで仕事を続けるメリットが感じられなかったんです」

 どうするべきか連日自問自答を繰り返し、働き始めて3か月後の7月上旬に退職を決意。すぐに辞表を出し、8月末で仕事を辞めたそうだ。

「でも、退職を申し出たのはちょうど試用期間の3か月を過ぎた直後だったこともあり、受理はされましたが施設長からは『できればもう少し早く決めてほしかった』と言われました。ほかの職員の方からは特に嫌味を言われるようなことはなかったですが、休憩中や仕事終わりに話しかけられることはほとんどなくなり、孤立しているのは感じました。働き始めてわずか数か月で辞める決断を下した自分のことを冷ややかに見ていたのかもしれませんが、あれはさすがに辛かったです」

 勤め先の老人ホームは慢性的な人手不足で、常にスタッフ募集をしていてもなかなか集まらない状態。「職場のみなさんには申し訳ない気持ちでいっぱい」と語るも辞めたこと自体は後悔していない。

◆転職して給料は4万円増!

「在職中は不特定多数の人間が利用する場所への事実上の使用禁止令が出されており、飲食店やスーパー銭湯、カラオケボックスなども対象でした。また、家族以外の人間との接触も控えるように言われ、ほかの職場の方たちよりも過剰な自粛を強いられていました。そのストレスから解放されたのはよかったと思っています」

 現在は地元の産業廃棄物処理業者に勤務。肉体仕事なので大変だが月収は4万円近くアップ。そこは大いに満足している。

「自分勝手な言い草に聞こえるかもしれませんが老人ホームは安月給で感染リスクも高く、私生活でも行動を制限されていました。辞めるきっかけを与えてくれた両親には感謝しています」

 介護産業は賃金の安さが以前から問題視されている。高収入の看護師でさえコロナ禍で辞める者が続出しており、彼のように割に合わないと感じてしまうのも仕方のないことなのかもしれない。<取材・文/トシタカマサ>

【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。

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