元自衛官YouTuber、憧れの自衛隊を辞めてSNSに活路を見出すまで

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 外出自粛期間中の運動不足や食生活の乱れで“コロナ太り”してしまい、YouTubeでダイエット動画を探した人も多いはず。そんな中、約370万回再生を記録して大きな話題を呼んだ“自衛隊式ダイエット”というものがある。

◆YouTubeで話題の“自衛隊式ダイエット”、投稿主の正体は…

 投稿主のYouTuberは、かざりさん。彼女が運営するチャンネル「かざりぷろじぇくと」の登録者数は約24万人。ダイエット動画のほかにも衛生隊員のバッグの中身をチェックしてみたり、89式小銃を分解してみたり……清楚な雰囲気からは想像もつかないが、実はかざりさん、元自衛隊員だったのだ。

 “恐ろしく美しい元自衛隊員”のキャッチコピーでタレントや女優、モデル活動も行っているそうだが、どのような紆余曲折を経て、現在に至るのか。今回は直撃してみた。

◆インドアな性格のアニヲタが自衛隊員に

「インドアな性格でヲタクなんです」

 自身のことをそう語るかざりさん。自衛隊と聞けば、運動神経や体力が優れた者が入隊するイメージがあるかもしれない。しかし、運動神経がよいわけでもなかったという彼女が、いったい、なぜ自衛隊に……!? そのきっかけは、“アニメ”にあるんだとか。
 
「学生時代はかなりインドアでした。もともと、『攻殻機動隊』や『ヨルムンガンド』などの漫画やアニメに出てくる“戦う女性”に惹かれたんです。女性と銃という、アンバランスな組み合わせが好きだったんです」

◆コミケで同人誌を販売しながらコスプレも披露

 絵を描くのが得意だったため、高校卒業後は日大芸術学部に進学。入学後は、念願のコミックマーケット(コミケ)に参加し始めた。コミケは国内最大規模の同人誌即売会だが、会場に集うコスプレイヤーたちも注目の的となっている。かざりさんは自ら編集した同人誌を販売しながら、コスプレも披露していたという。

「コスプレは高3から始めていました。最初は『テニスの王子様』というアニメの幸村精市というキャラ。なぜコスプレをするのかと言えば、“そのキャラクターとひとつになりたい”という願望からでした。

 当時は「身内撮り」と言われている、自分たちだけで写真を撮影して楽しんで、満足していました。大学に入ってコミケに行って、こんなに参加者やカメラマンさんがいることに驚きました」

 大学ではグラフィックデザインを学び、同級生は広告代理店などに就職するような環境で、なぜ自衛隊に入隊したのだろうか。

「大学に入ってから、ガルパン(アニメ『ガールズ&パンツァー』)にハマって。実際に戦車を見てみたい!と思い、陸上自衛隊の駐屯地に遊びに行ったことが、自衛隊に興味を持ったきっかけです。学生時代に、予備自衛官補になった後、自衛隊を受験して自衛官になりました」

 自衛隊への入隊に、最初は両親も反対したという。もちろん、周りからも驚かれた。

「日芸からは自衛官になる人はたまにいるのですが、デザイン科からは初めてだったそうです。音楽学科から自衛官になる方もいましたよ。実は自衛隊には“音楽隊”というものが存在します。『海上自衛隊の歌姫』と言われる三宅由佳莉さんは、日芸の音楽学科出身なんですよ」

◆規則正しい寮生活に自由はあるのか?

 とはいえ、文化系な学生時代を過ごしたかざりさん。脱落者も出ると言われるほど過酷な自衛隊の訓練や寮生活についていけたのだろうか。

「入隊の試験には、体力テストはないんです。それまでできなくても、ある程度のレベルまでは、訓練で引き上げてもらえます。

 ただ、今までは常に昼夜逆転しているような、マイペースな生活だったので。時間に追われる自衛隊としての行動には慣れるまでが大変でしたね」

 自由気ままな学生生活から一転、規則正しくなったという。

◆自衛隊に入って生活態度が改善

「寮生活は6人部屋で、つねに誰かがいる状態。時間を守らない、身だしなみがちゃんとできていない、ベッドメイクができていないなど……そういったことで連帯責任で怒られました。

 そのおかげで、今でも毛布をたたむのが得意。横から見たときに綺麗に揃っている状態を“バームクーヘン”って呼ぶんですけどね。自衛隊に入って、自分自身の生活態度が改善され、健康的になりました」

◆「もう一度青春を送っているような気分」

 外出などの制限もあった。その中で、どのように過ごしていたのだろうか。

「自由な時間もありますし、申請を出せば、土日も外出できました。普通の女の子と変わらないですよ。同期といっしょに可愛い服を買いに行ったり、自衛官だしスタミナをつけようと思って、焼肉を食べに行ったり。

 特に服装の規定などはありませんでしたが、『容姿端麗でいなさい』とは言われていました。休みの日には、化粧もしていましたよ。訓練中は、日焼け止めだけは塗っていました」

 ベールに包まれた女性自衛官の日常だが、意外と自由もあるらしい。そこで、気になるのが恋愛事情だ……。

「恋愛は自由でしたよ。でも別の部隊の方だと、お話しする機会があまりないんです。唯一食堂が接点だったので、私はそこで携帯の番号を渡されました。でもばっと顔を上げたら、いなくなっていたので誰だかわからなくて(笑)。

 好意はありがたかったのですが、仕事に集中したいと思って。教育隊の時期は、もう一度青春時代を送っているみたいな気分でしたね」

◆難病にかかり、志半ばで自衛隊を除隊

「陸上自衛隊は、前期と後期教育に分かれていて、前期では3カ月で自衛官になるために必要な基礎知識を身につけるんです。そして、どの職種に向いているのか前期教育中に適性検査と、面接での希望調査があります。

 私はもともと広報活動がしたくて。入隊試験での面接でも伝えたうえで入隊していました。適性検査と希望調査の結果、通信科に配属となりました」

 通信科に配属となり、明るい展望が描けていた頃、思いもよらぬアクシデントが襲った。

「広報活動を本格的にするうえで、3曹という階級にならないといけないんです。3曹に昇任するための試験には、体力検定がありました。でも、その試験を受ける前に大腿骨頭壊死症という病気になってしまったんです」

 聞き慣れない病名だが、これは国から難病指定されており、俳優の坂口憲二さんが患っていると発表し、芸能活動を中止したことで話題ともなった。

「昇任もできないのにずるずる自衛隊にいて、部隊に迷惑をかけるのが自分自身で許せなかったので、任期満了で退職しました。でも何も貢献できないまま退職してしまったので、それが心残りでした」

◆SNSをフル活用、YouTuberとして貢献したい

 かざりさんは、自衛隊員としては広報活動ができなかったことを悔やんだ。しかし、その魅力を伝えることを諦めなかった。学んだ知識や経験をより多くの人に知ってもらいたい——。

 YouTubeである。2020年にチャンネルを開始。いまや再生回数300万回を超えるような“バズる”動画を生み出すなど人気を得ているが、最初は手探りだったと振り返る。

「それまで動画をつくったことはなくて。本屋さんで本を買ったり、完全に独学で『Premiere Pro』というソフトを使い始めました。いまも難しい編集は勉強中ですが、頑張っています。

 やっぱり、物をつくるのが好きなんです。 (約370万回再生の)自衛隊体操の動画も、バズらせようと狙ったわけでもなくて。自分の好きなことを一生懸命にやっただけ。ネットでは、それが大事なのかもしれないです」

 動画をつくりはじめてしばらくはあまり再生回数が伸びなかったというが、「ある日から急にバーンと伸びた」と話す。

 こうしてSNSで自衛隊ネタを発信し続けた甲斐もあり、現在は“YouTuber”として正式に自衛隊とコラボして広報活動を行うように。募集ポスターのモデルとしても起用されている。今後、彼女が目指すものとは?

「自分が興味を持ったものは、なんでもチャレンジしてみたいという性格です。いまやってみたいことのひとつとしては、“ガンアクション”ができる女優になりたいと思っています。自衛隊ではアサルトライフルの89式小銃を使用していました。自分で言うのも恐縮ですが、普通の女優さんよりは銃の扱いには慣れていると思います。根性もあります。オファーお待ちしています!(笑)」

かざり
三重県出身。タレント、女優。現在は、元自衛官タレントとして、防衛省や自衛隊の広報活動も行っている。Twitter:@kazariri、YouTube:かざりぷろじぇくと

<取材・文/池守りぜね、編集・撮影/藤井厚年>

https://youtu.be/HEdm-hcOwIY

【池守りぜね】
出版社やweb媒体の編集を経て、フリーライターに。趣味はプロレス観戦。 ライブハウスに通い続けて四半世紀以上。家族で音楽フェスに行くのが幸せ。Twitter:@rizeneration

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