「若いのにパソコンができないなんておかしい」と激怒する上司の理不尽さ

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 会社でも家庭でも、旅行先でも……ありとあらゆる分野でデジタル化が進んだ。わずか数年前には「パソコンなんか使いたくない」「若手にやらせておけばよい」とふんぞり返っていた管理職のオジサンたちも、人差し指で慣れないキーボード入力を、たっぷり時間をかけてでも行わないと「仕事をしたとみなされない」というような世の中になった。

 そんな中、デジタル分野に疎い人たちが、詳しい人たちから見下されるなどの出来事もあちらこちらで発生している。これは「テクノロジーハラスメント」とか「デジタルハラスメント」などと呼ばれるようにもなっているそうだが、特に新入社員や入社数年目の若手社員たちは、真逆の形で「ハラスメント」の洗礼を受けているという。

◆上司からの「逆デジタルハラスメント」に悩む若手社員

 東京都内の中堅商社勤務、入社5年目の若手社員・松山峻さん(仮名・20代)は憤る。

「入社直後に配属された部署の上司が、新人に向かって“ブラインドタッチもできないのか”と怒鳴り散らすんです。僕は、学生時代に何とか会得していましたが、周囲の知人はパソコンよりスマホ派。タイピングよりもスマホのフリック入力の方が早いと言って、卒論もスマホで書く人がいるほど」(松山さん、以下同)

 事あるごとにこうして圧力をかけてくる上司は、若手を集めてこうまくしたてるという。

◆「若いのにパソコンができないなんておかしい」と激怒

「若いのにパソコンのこともわからない、なんでうちの会社に入れたんだ、人事部は無能だ、と。実は、この上司だけが悪いのではなく、会社全体にそうした雰囲気があり、エクセルやワードを使う業務、パワポでの資料作成など、デジタルっぽい仕事はすべて若手に投げる。上司は全然残業しないのに、若手は残業ばかりです」

 ちなみにこの上司、パソコンのログインで小文字で入力すべきところを大文字で入力していることに気が付かず、何度もエラーを出してアカウントをロックさせ、「何もしていないのにパソコンが壊れた」と大騒ぎをするようなレベルだというから、松山さんたちの気苦労は相当だろう。

 だが、松山さんは若手と言っても5年目。さらに若い、右も左もわからない状態の新卒社員たちは、こうしたハラスメントを受け続けることで「自分は無力なんだ」と、本来は感じる必要のない絶望に苛まれているという。

◆面接で「ホームページが作れる」と言ってしまったばかりに…

「入社面接のときに、ホームページ作りが趣味、といったのがすべての間違いでした。入社後は営業部に配属されたのですが、直属の上司から“取引先のホームページを作れ”と命じられて、その後もいろいろと無茶な要求をされました」

 こう話すのは、本来であれば社会人3年目を迎えているはずだった神奈川県在住のフリーランスデザイナー・星田エミさん(仮名・20代)。ホームページ作りが趣味、というのは事実だが、ホームページを簡単に作成できるツールを使っての話。

 アパレルやカフェを経営している知人の手伝いという形で、おしゃれだが、あらかじめ用意されたテンプレートを使った簡単なつくりのホームページを作成していただけだった。

 しかし、上司の頭の中では「ホームページが作れる=ITの専門家=何でもできる」という風に、イメージが独り歩きしてしまっていたようだ。

「要求は次第にエスカレートしていき、会社の悪口がネット掲示板に書かれているのを上司が見つけた際には、投稿者を特定しろだの、ハッキングはできないのか、とまで言われて……。挙げ句の果てには、甥っ子の結婚式用のビデオを編集しろとまで。さすがにしんどくなって会社を辞めました」(星田さん)

 なぜか、こうした上司たちの頭の中には「パソコンができる=ITの専門家=何でもできる」というイメージが出来上がっているようだが、パソコンやスマホはあくまでもツール。

 車の運転ができるのだから、F1レースにだって参戦できるだろう、というのと同じだ。彼ら自身がIT知識と触れ合うことを拒絶しているためか、理解してくれる可能性はゼロに近い。

◆決して専門家ではない

 問題は根深そうにも見えるが、若手が悩むロートルの無茶ぶりについて、社内でも問題視されていると話すのは、食品会社の人事部勤務・中田紳一郎さん(仮名・30代)。

「若手はデジタルネイティブ世代で、物心ついた時にはスマホを触っていたという子も多いのですが、だからこそ、ネットやガジェットに詳しいというわけではなく、いちユーザーとして利用する以外のことには疎い。セキュリティへの関心も低く、そのあたりは外部から専門家を招くなどして、勉強会を行っています」(中田さん)

 中田さんによれば、デジタルネイティブ世代だからこそ、既存システムやサービスの仕組みについては「あって当然のもの」として知ろうとしない傾向があるという。

 先述した車の例と一緒で、我々が生まれた時に車はあったが、運転はできるものの、車を作ることもできなければ、車が動く仕組みを詳細まで把握している人間など、製造者や専門家以外にはいないのである。

 こうしたハラスメントを受けた若者に向けて、中田さんがアドバイスをする。

「うちの社内にもそういうロートルはいますが、当然仕事ができる人たちではない。仕事もないのに年功序列で人の上に立ってしまっただけなのですが、仕事がないからそうやっていびっているだけ。若手は気にしないでほしいし、反面教師として参考にしてほしい」(同)

<取材・文/森原ドンタコス>


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