発達障害で「宇宙人」と上司にいじめられた私が、障害を強みに変えるまで

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 周囲に合わせるのが苦手で、何かと空気が読めない。そんな性質から、日々の生活で悩みを抱える発達障害当事者は多いはず。そんな「空気が読めない」という性質から、職場の上司からいじめに遭い、一時は自殺まで考えたというのが、「発達障害を強みに変える」という発信を行い続けている銀河さんです。

 自殺願望を抱いた末に病院へ行き、ASD(自閉症スペクトラム障害)傾向の強い発達障害として診断された後、一念発起して独立。自著『「こだわりさん」が強みを活かして働けるようになる本』のタイトルどおり、自身の発達障害をどうやって強みに変えることができたのか。その経緯を聞きました。

◆上司のいじめで死まで考えた末、発覚した発達障害

――銀河さんが、ご自身は発達障害だと知ったのはいつですか?

銀河:25歳の時です。当時の私は薬剤メーカーでMRをしていたのですが、社内の人間関係は最悪でした。同僚との雑談の意味がわからずほとんど参加してなかったし、上司からは「お前は営業の感覚が全然わかってない」と怒鳴られてばかり。正直、本当にダメなやつだったんです(笑)。そのせいで、会社で「お前は空気が読めない」「宇宙人だろ」という言葉を浴びせられて、上司からいじめを受けるようになり、うつ病になってしまって。

次第に、会社に行くのが嫌で朝は起きられないし、夜は眠れない。道路を走るトラックを見ると、「あそこに飛び込んだら楽になれるのに……」という希死念慮がわいてきて、「これはヤバイ」と思い、病院に駆け込みました。そしたら、先生に「あなたは発達障害の疑いがあるので、診断を受けましょう」と言われ、テストを受けたらASD寄りの発達障害だと判明しました。

◆発達障害は強みになると気づいて起業

――診断を受けたときはどんな心境だったのでしょうか?

銀河:診断を受けたときは、発達障害のことをよく知らなかったこともあり、落ち込みましたね……。「『障害』と名がつくのだから、良くないものなのだろう。こんな障害を背負ってしまって、自分はこれからの人生をどうやって生きていけばいいんだろう……」って。このハンディキャップをどうやってカバーしたら、「定型発達」と呼ばれる人たちと同じになれるのかと、悩み続けました。

でも、「発達障害=ハンディキャップ」と考えると、マイナスからのスタートになるので、なかなかモチベーションがわかなくて……。「発達障害=ハンディキャップ」と考え、その弱みをカバーするのは、マイナスを0にするということなので、どんなに自分が努力しても、苦手なことを無理してカバーするだけなら、結局は発達障害でない定型発達の人と同じスタートラインに立つことしかできないですから。

――苦手なことをカバーするのは、楽しくなさそうですしね。

銀河:そうなんです。次第に、「障害」という文字こそ入ってはいるものの、発達障害のある人たちは発達障害でない人にはないユニークな個性を持ち合わせていることに気がつきました。ならば、発達障害でない人と同じになることを目指すより、むしろその個性を強みに変えるほうがいいじゃないかと考えるようになりました。そこで、会社を辞め、当時の同僚と共に起業し、現在では発達障害者向けのコーチングを行っています。

◆パターン化は、発達障害の人が持つ強みのひとつ

――ダメ社員から起業家へと転身されたわけですね。発達障害を強みに変えるために、ご自身で具体的に意識したことはなんですか?

銀河:まず、私の場合は、こだわりが強くて、決まったパターンで物事を進めたがるんですね。「融通が利かない」と言われがちなのですが、正解さえわかれば、忠実に同じパターンを繰り返すことができるので、失敗しなくなるんです。

――同じパターンを繰り返す……ですか?

銀河:たとえば、発達障害の人にありがちなのが、「大人数の会話が苦手」ということ。会議が難しいのは、その場の人間関係が非常に複雑だということです。その場にいる人に対して、職位が上の人だから、その人の言うことにすべて従っておけばいいというわけではありません。同じ職位の上司であっても、その二人の関係性や他の人に対する影響力によって何かしらの上下関係が存在します。また、先輩社員同士の間でも力関係はあるし、好き嫌いなどもあります。

発達障害でない人は、この複雑な人間関係を、「この人を立てなきゃいけないんだな」「この人の発言には同意しておいたほうがいいんだな」とその場の空気を察することができますが、私の場合は「察する」ことができないので、誰を立てるべきなのかよくわからず、それを気にしながら話をするのが非常に難しい。正直、いまだに会議は苦手で、10人以上になると、ほぼお手上げ状態です。

◆ひとまずは「会議の流れは止めない」が大前提

――でも、ビジネスにおいて会議は避けて通れないですよね。

銀河:そうなんです。だから、複数人と同時に話すときの成功パターンをなんとかして模索し続けました。現在、一番に気をつけているのは、「会議の流れに水を差さない」ということ。私は「無駄に思えることをやりたくない」と考える傾向が強いので、その会議の主題が無意味に思えれば、何も考えずに異論を呈してしまいます。以前の私がよくやっては失敗していたのが、「そもそも論」を言い出して、会議の流れをぶった切るということでした。

病院内の処方の売上を伸ばそうとして、これまでに注目していなかったエリアで新たな施策を行うことが決まり、その内容について会議で検討しているとします。みんなが「どんな施策をしたら、処方の数が伸びるのだろうか」と知恵を振り絞り、いろいろなリサーチを進めている会議で、私は「なんで、そもそもこのエリアで施策をする必要があるんですか?むしろ別のエリアでやったほうが、効率がいいと思います。今からでも、方針転換したほうがいいんじゃないですか?」などと、空気を読まずに水を差してしまうわけです。

◆会議でも失敗しなくなった

――それは、周囲の人から冷たい目で見られそうですね……。

銀河:はい、めちゃくちゃ嫌われましたね。当時を思い出しても、「たいして経験値もない新人社員のくせに、なんでそんな発言をしていたのだろうか……」と冷や汗が出ます。現在の私は、「会議に向けて、すでに多くの人が労力を割いている。どんなに自分が無駄だと思っていることでも、そもそも決まっている事柄に対して、異論を呈してはならないのだ」と気がつきました。

そこから「進行中のものについては、絶対に自分は口出ししないようにしよう」と、決意しました。以来、大人数の会議で、大きなトラブルを起こしたことはありません。

◆ユニークなアイディアは、ワンクッション置いてから

――じゃあ、会議ではずっと黙っているのが得策ということ……?

銀河:いえ、発達障害の人は普通の人より、脈絡なくいろんなアイディアを結び付けるのが得意な傾向にあります。そこで出てくるユニークな発想は、強みだと思うんです。だから、いい意見がある時は発言していいと思うんです。

ただ、大事なことは、自分の意見を言いたいときは、ワンクッション入れること。会議中に、どうしても、自分の意見を言いたいときは、パターンも決めています。そんなときは、「本当に申し訳ありません! そもそも論の余計な意見になってしまうのですけれども……」と謝り、自分が会議の会話に水を差していると自覚していることを伝えることで、周囲の反応はぐっと変わってきますから。

定型発達の人にとっては当たり前のことに感じるかもしれないのですが、私自身はこのことを意識するようになってから、ぐっと周囲の評価が変わりました。そのほかにも、発達障害の人はさまざまな個性を持っています。ぜひ、その個性をネガティブにとらえるのではなく、ポジティブにとらえて、ご自身の強みに変えてほしいと思っています。

<銀河 取材・文/女子SPA!編集部>

【銀河】
上智大学卒。ASD(自閉症スペクトラム障害)とADHD(注意欠陥多動性障害)の当事者。ASD優位で空気を読むことが大の苦手。新卒で営業としてキャリアをスタートするも、約1年でうつ病を発症。復職し、発達障害の強みを活かして営業成績2位をおさめる。入社満3年で退社し、会社の同期が設立したCare Earth(株)に誘われて入社。現在ではキャリアアドバイザーとして、転職サポートを行っている。また、キャリアや生活で悩む発達障害の人へのアドバイスなどを中心に、コーチングも行っている。初の著書は『「こだわりさん」が強みを活かして働けるようになる本』 Twitter:@galaxy_career

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