日本だけじゃない!? アメリカでも起こる世代間闘争「ブーマーvsミレニアルズ」を笑いに変えたネイト・バルガッツィの最新作

拡大画像を見る

 人気スタンダップコメディアン、ネイト・バルガッツィの2年ぶりとなる新作『Great Average American』が先日、Netflixからリリースされた。無表情のまま淡々と、そしてどこまでも冷静に物事を描写するその語り口でこれまで多くのコメディファンを魅了してきた。

 本作ではコロナ禍のため、客席はソーシャルディスタンスを守るために間隔があけられ、観客も全員マスクを着用した上で舞台上に視線を送った。会場はハリウッドのユニバーサルスタジオの特設屋外ステージ。60分間の公演中にヘリコプターや飛行機が幾度となく上空を飛び、その度にジョークが遮られるというまさにイレギュラーな状況でのショーだった。

 それでもネイトは持ち味の、多くの人が共感しうる、日々の生活に根ざしたジョークで話を巧みに展開していく。結婚し、一児の父でもある彼は、夫婦生活の中で起こる些細ないざこざや、娘との愉快なやりとりなどをネタにして笑いを誘った。放送禁止用語などは用いずに、抑制の効いたことばで展開されるそのエピソードは見る者に情景を鮮明に思い浮かべさせると同時に、ネイト・バルガッツィというひとりの人間の性格や生き方をも感じ取らせてくれる。

 それはまさにタイトルの「Great Average American」(=とんでもなく平均的なアメリカ人)ということばの通り、市井のアメリカ人が切り取る日常が語られた温かい笑いだ。

 中盤に差し掛かり、ネイトは自身の「世代」に言及する。

「俺が生まれたのは1979年。まさに“はざまの世代”なんだ」

 日本と同様にアメリカにも世代に関する多くの呼称が存在する。第二次世界大戦後の1946年からケネディ政権時代の64年にかけて生まれたいわゆる「ベビーブーマー世代」、そこからベトナム戦争終結(75年)までの期間に生まれた「X世代」、そして80年代序盤から00年までに生まれた「ミレニアル世代」などと区分され、しばしばそれぞれの世代の特徴などがメディアや日々の会話でも取り上げられる。

 確かに79年生まれのネイトはこのどこにも属していないが、自身は自らの世代を「幸運だ」と語る。

「俺たちは二つの世界を生きることができたんだ。子どもの頃は今みたいに世の中が過敏じゃなかったから、子どもたちだけで外で遊ぶこともできたし、パソコンなんて億万長者しか持ってなかった。でも高校になったら今度は、インターネットの時代が来て、ポケベルに携帯、その後にはSNSの時代になったんだ。その両方を経験できたのは俺たちだけだ」

 幼少期にIT革命を経験したミレニアル世代は、最初のデジタルネイティブ世代とも言われている。

 ネイトはツアーで訪れたホテルでのエピソードを話す。

「クロームキャスト(テレビに装着するストリーミングデバイス)が故障したからフロントに電話したら、直しに来たのが俺よりかなり年上のブーマーだった。直せるわけないって諦めてたんだけど、彼らは”諦めない世代“だからあれこれやってくれたんだ。でも結局ダメだった。そしたら『あと1時間後に若い奴が出勤するから大丈夫だ』ってそいつが言うんだよ。その若い奴の年を聞いたらミレニアルズだって言うから、それなら大丈夫だって確信した。だってテクノロジーと一緒に育った世代だからね。でも、結局、その若い奴ってのは、ついぞ出勤すらしてこなかったんだ。ミレニアルだな」

 無断欠勤を平気でする「最近の若者」を描いたこのジョークに会場は、この日一番の歓声をあげた。このジョークには客席のブーマー世代も、ミレニアル世代も大きな拍手を送っていたのが印象的だった。

 世代間で起こる軋轢は、なにも日本に限ったことではない。

 19年ごろから「OK Boomer」ということばが流行した。これはブーマー世代の説教や「最近の若者は……」のような発言に対し、それらをあしらい、受けながす際に用いる表現で、「はいはい」「老害は黙っといて」というニュアンスでTikTokなどのSNSを中心にミレニアルズやティーンの間で広まった。

 世代間の経済格差も問題となっている。現在アメリカでは全体の富の50%以上をブーマー世代が独占しているのに対し、主力労働人口のミレニアル世代はわずか5%未満しか有していないと言われている。「ブーマー世代のツケを若い世代が払わされている」という意識を持つミレニアル世代も多くいる。

 そしてコロナ禍で両者の溝はより深まりを見せる。街に出歩きお祭り騒ぎをする若者の映像がニュースに映し出されるたびに、「これだから感染が収まらないんだ」と眉をひそめるブーマー世代。

 一方で、新型コロナのワクチンはブーマー世代から接種され、彼らの一部はレストランやバー、リゾートにも繰り出しているのに対し、若い世代にはまわってこず、「年寄りのせいで俺たちが割りを食っているんだ」という若者の不満が実際、連日ニュースでも報道されている。

 人種や宗教といった「分断」を癒すと宣言したバイデン政権にとって、「世代間の分断」も大きな壁として立ちはだかる。

 会場の隣の席の人だって「世代」も「考え」も違うに違いない。それでもひとつのジョークに一緒に笑えれば、その瞬間「分断」は消えて無くなると信じている。何色にも染まらない「きわめて平均的なアメリカ人」で且つ「はざまの世代」にいるネイト・バルガッツィだからこそ、笑いを通してアメリカを、そして世界を変えられるかもしれない。

<ネイト・バルガッツィ>
1979年テネシー州生まれ。ニューヨークでスタンダップコメディアンとしてのキャリアをスタートさせ、これまでネットフリックスのスペシャルに3本出演したほか、ジミー・ファロンともツアーを行うなど精力的に活動。全米でヘッドライナーとして公演を行う実力派コメディアン。

<Great Average American>
ネイト・バルガッツィの2年ぶりとなるスペシャル。ハリウッドのユニバーサルスタジオ屋外ステージでの収録。子育てや友人関係、結婚生活など生活に根ざしたエピソードで展開される1時間。共感を呼ぶ内容で、批評家たちからも高評価を得た。

  • 4/27 18:00
  • サイゾー

スポンサーリンク

記事の無断転載を禁じます