PTAがツラい…。子供のための活動なのに、組織に振り回されて

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◆家計にも影響するPTAの活動

 また、この時期がやってきた……。新年度が始まると同時に訪れる第1回目の保護者会。その日に行われるのが、そう“PTA役員決め”だ。3人の子供がいるパート主婦のHさん(39歳)はこう漏らす。

「うちの学校の役員は点数制。本部役員は2点、平の役員は1点で、子供1人につき2点を超えないといけないんです。うちは子供が3人だから、つまり平役員なら6年間引き受けなければならない。すでに2年やりましたが、まだあと4年も残ってると思うと気が遠くなります」

 Hさんは、一度は本部役員を引き受けて、合計年数を減らすことも検討しているという。だがそうなると、ほぼフルタイムで働いているパートの仕事は勤務日数や時間を減らさないと両立できないだろうと予想する。

「PTAのために家計が厳しくなるっておかしいですよね……」

 とは言え、参加しなければしないで、人間関係は厄介になる。Hさんの憂鬱な気持ちはまだまだ続きそうである。

◆頻繁な飲み会、ダブル不倫、PTA活動が家庭不和の原因に……

 PTA活動がツラい……。そう感じている保護者は少なくないだろう。都内の小学校でPTA会長を務めたRさん(52歳)はこう話す。

「校長から依頼されたことに加え、うちは地元で長く商売をしており、父も会長経験があるため、半ば義務的にPTA会長を務めました。いやあ、想像以上に大変でしたね。うちの学校には長くPTA役員を引き受けているボスママ的な存在の女性がいて、その人を中心に様々なことが決まっていたんです。

 まずは飲み会ですね。そのボスママが飲み会大好きで、他の小学校の保護者や地元の青年会議所のメンバーと頻繁に飲み会をしていたんです」

 飲み会は月に1〜2度行われ、二次会、三次会と続き、帰宅は常に午前。母親とはいえ出席者の大半が女性である会で深酒をすることに、当然ながら妻はいい顔をしなかった。

「PTAを口実に、ただ飲み会を楽しんでいるだけじゃないの?って責められましたよ。僕にとっては苦痛でしかなかったので、半年くらい経った頃に、『健康診断で病気が見つかり、ドクターストップがかかってしまって』と断るようにしました」

 さらに、問題に感じたのが飲み会費だったとRさんは言う。一次会はPTA会費から捻出されるが、二次会以降はなんと会長負担がこれまでの慣習だったというのだ。

「頻繁に行われる単なる飲み会の会費が、父母から集めたPTA会費で賄われていること。二次会以降は各校の会長が負担するのが通例だったんです。え? 俺が払うの?って不満顔になりそうでしたけど、大人なので堪えましたよ。

 ちなみに、例のボスママは『PTA役員になればタダ酒が飲めるよ』を口説き文句に役員メンバーを集めていたとも聞きました。人のお金でタダ酒を堂々と飲む姿勢もおかしいし、そもそも人妻がよそのダンナと夜中まで頻繁にお酒を飲むっていうのもおかしくないですか?」

 もちろん理解のある夫で、「子育て関連は任せっぱなしで悪いね」と快く送り出してくれる家庭もあるだろう。一方で、家庭内別居状態など夫婦不和の逃げ口としてPTA活動を選ぶ人がいてもおかしくない。結果、Rさんの学校でもW不倫が出てしまったと言う。

「あの2人が付き合っているらしい、2人で飲んでいるのを見た…そんな噂が耳に入るようになりました。もう、知らないふりをするしかないですよ。問題が多いと感じることがたくさんありましたが、何かを変えるのも難しかった」

 下の子の卒業のタイミングで会長を辞められたRさんに、PTA活動の感想を聞くと「いい経験になった」と苦笑いをしていた。

◆学外の活動も加わり負担は増す

 PTA活動は、すべての子供たちのための社会教育活動とされている。組織としては大きく、日Pと呼ばれる「公益社団法人日本PTA全国協議会」があり、全国の都道府県に設けられたPTA協議会・連合会が正会員として加盟している。ただし、各学校のPTAがこうしたPTA協議会・連合会へ加盟するか否かは任意である。

 実はPTAはこうしたPTA協議会・連合会を頂点にしたピラミッド型の巨大な組織として成り立っているのである。PTA活動をしていると、本部役員が「都小Pの〜」などと話しているのを耳にすることもあるかもしれない。本部役員になると、PTA協議会・連合会の仕事をすることも出てくるため、活動は学校内に収まらなくなってくるのだ。

 ちなみに、このPTA協議会・連合会に加盟していることで、どんなメリットがあるのだろうか。地域によって異なるが、この協議会に参加していることで、スポーツ大会に出席できて粗品がもらえるとか、観劇などのチケットがもらえるなどの特典があったりする。だが、それも平日の日中の時間帯に設けられていることが多く、定員割れを起こすことも多々あるのが現状だ。特典とはいえ、人数集めが必要なありがた迷惑な存在になっているのも否めないのである。

◆PTAをなくしたら意外なところから反発が……

 労多くして実り少ない状況に疑問を持った某地域の小学校PTA役員は、協議会からの脱退を検討した。当時、副会長職に就いていたMさん(45歳)はこう話す。

「仕事量が多いため、特に本部役員のなり手が見つからず、毎年とても苦労するんです。学校内のPTA活動と違って、本部は学校外に出て行くことも多いので、『自分の子供のためなら』という気持ちにもなりにくいんですよね。そこで、本部役員から疑問が出たんです。そもそも、PTAって“子供のための活動”じゃない?って。なんで、組織に振り回されなければならないんだ?って」

 なんと、本部役員自体が、PTAの存在に疑問を持ったというのだ。

「子供のためのお祭りを自主的に企画するなど活動自体は活発だったんですよ。だから逆に、『親子が笑顔で育児ができる状況じゃないとPTAって意味ないよね』と本部役員で意気投合するようになったんです。

 そして、みんなが嫌だ嫌だと役員を押し付け合うのではなく、本来のボランティア精神をもとに、子供のために何かをしたいと思う人たちが集まって何かをする父母の会に変えたいと、一度、協議会から脱退しようと決意したんです」

 1〜2年かけて本部役員は深く話し合い、いざ、協議会からの脱退を申し出たところ、意外なところから反発があったという。

「10年前、20年前にPTA役員をしていたOBやOGが『なんてことをするんだ!』と文句を言ってきたんです。子供が成人してもなお、地域事業と称して、PTAと関わり続けるOBやOGは、それこそPTA大好きな人たち。ストレートにいえば、PTAという枠組みの中で、お友達や居場所を作りたい人たちなんですよ。

 彼らは、『古き良き伝統を絶った』『とんでもないことをする』と感じたようです。なぜ脱退に至ったのかというこちらの説明も聞きやしない(苦笑)。結局、数年後に新しい役員たちは再び加盟することにしたようです。まあ、その頃は、私も子供が卒業していたので、もうPTAとは関わりがない状況だったんですけどね」

 組織を変えるのも難しい、変えたとしてもまた元どおりになる可能性がある……。煙たい存在であるPTAが大きく変わるのは、一体いつになることか。

<取材・文/中山美里>

【中山美里】
フリーライター。性風俗、女性問題、金融犯罪などを中心に執筆。未婚で1児を出産後、結婚。3児の母。愛人に走る女性をルポした『副業愛人』など著書多数。女性のお金や生活事情に関するルポ、詐欺事件を多く扱う。性とお金に対する欲望と向き合う人間をフィールドワークし、取材執筆を続けている。日本プロダクション協会の監事も勤めている

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