今年の新入社員に「モンスターはいない」。コロナ禍が転じて

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 新年度が始まり、毎度お馴染み「モンスター新入社員」取材を敢行すべく、企業経営者や中間管理職に就く人々に聞き取りを開始したのだが、今年は雰囲気が違う。何かエピソードを教えてくれ、話してくれと言っても、首を傾げるばかりなのだ。

「去年までは“モンスター”と言って笑っていれば良かったんでしょうけど、今年の新人は明らかに違う」
 
 こう話すのは、東京都内の会社に勤務する中島法子さん(仮名・30代)。いったい、どういうことなのか?

◆今年は「モンスターがいない」

「新卒の子たちは、いちばん多感だった小学生高学年の時に東日本大震災を経験し、就活中にコロナ禍を経験している。学歴やスキルが低かろうと、社会で働くことを本当に楽しんでいる新人が多いように感じる」(中島さん)

 中島さんは毎年この時期、仕事ができない新人や常識が通用しない新人の登場に頭を悩ませていたが、今年は「モンスターがいない」というのである。

「2年目の部下に話を聞くと、“今年もモンスターとか言って騒ぐんですよね”とズバリ。自分より低いところにいる人の存在は精神安定剤にもなるが、それでは何も成長できないと話し始めて。私たちもびっくり。もちろん仕事ができないのは当たり前で、私たちができるように教えるのも当たり前。考え方が変わってきています」(同)

◆青春時代に震災やコロナ禍を経験

 実際、鉄道会社に就職した新社会人・小久保智さん(仮名・20代)も、自分たち若い世代が「モンスター」と形容されていることを知るひとり。だが、それを不満に思ったことはないと話す。

「最初からできるんだったら会社に入らずひとりでやればいいし、モンスターとか言っている大人たち、先輩方は冷静に見て仕事ができないというか。礼儀がないと思います」(小久保さん)

 小久保さんは宮城県出身。関西出身の両親は阪神大震災で被災し、東日本大震災では自らも被災。コロナ禍で実家の家業も傾き、一時期は大学をやめることも考えた。遊びたかった時期に我慢を強いられ、景気が良くないとされる時代に青春を送らざるを得なかった。

 そんじょそこらの大人より、人間として強くなる経験を積んでいるのだ。

◆「モンスター」が秘める大きな可能性

 我々とネットネイティブ世代との意識や価値観の違いが取り沙汰されることも多いが、神奈川県内の証券会社勤務・坂本佳彦さん(仮名・40代)は、「モンスター」とも呼ばれてしまう新人たちとのやりとりを経験し、大きな可能性を感じている。

「ネット上で匿名同士のコミュニケーションが当たり前という世代には、ハナから敬語を使う必要がない、と感じている若者もいます。一応、社会のルールに合わせて敬語を使おうという子もいますが、敬語を過度に使ったりして、うまく表現ができない。会話の端々にタメ語が出てくるようになるのですが、それを認めてあげると、驚くほどコミュニケーション能力が高いんです」(坂本さん)

◆上司に逆えず顔色ばかりうかがう先輩たちを見て…

 坂本さんは、今の若者たちの人間関係が「フラット」であることを見抜いたという。

「以前は帰国子女が生意気だ、なんて風潮がありましたが、あれと同じですね。意見をしっかり言う子が多くなりました。逆に発言できない、上司に逆らえず顔色ばかりうかがうのは、30代以降の我々だけ。若者から見ると、とてもみっともなく映るのでしょう。

 彼らをモンスターだと笑い、溜飲を下げていたのでしょうが、若い人たちは気にしていない、そもそも我々なんか眼中にない。むしろ、我々のほうが彼らに教えてもらうべきことがたくさんある」(同)

「モンスター」と聞けば、得体の知れない怖いもの、というイメージもあろう。同時にそれが「巨大」であると感じていないか。

 裏を返せば、得体の知れない新入社員たちが今後、会社の中枢を担うことを想像し、その大きな流れを拒否したいからこそ、彼らの言動を笑ってきた。

 だが、そんな非生産的な時代はもう終わったのではないか。「モンスター新人はいない」と話す人々の実情が、それを力強く物語っているように思えてならない。

<取材・文/森原ドンタコス>

―[モンスター新入社員録]―


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