aikoのラブソングが「恋愛中の全女子に刺さる」ワケ

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ラブソング。正直、共感なんかしたことがなかった。

「かっこいい」「おもしろい」と思う人はいても、「好き」という気持ちが涙とともに溢れることも、ごはんが喉を通らないくらい苦しくなることもなかった。

面倒くさそう、そういうの。

そんな恋愛低体温女子の私を変えてしまったのがaikoの歌と一人の男だった。そして、16歳の冬から私の人生にaikoの歌は欠かせない存在となった。

■暗号だらけのはずだったaikoの歌

恋人や好きな人がいる・いないの話で盛り上がる中高生時代。いる派の女子たちはaikoの「ボーイフレンド」を歌って浮かれ、「初恋」を聴いて泣いていた。

へー。私は、イマイチ分からなかった。

しかし、高校1年生の冬。いつも相談に乗ってもらっていた年上のお兄さんのメールが待ち遠しくなるという異変が起きた。

返事が数時間空くと新着メールの問い合わせをしてみたり、送った後のメールを何度も見返して「ちょっと長すぎたかな」と一人反省会をしたりするようになってしまった。

授業中も休み時間も携帯が気になる私。

そんな私を見た友人がイヤホンを差し出し、そこから流れてきたのが『彼の落書き』というaikoの歌だった。

“今日もやっぱ連絡はない きっと忙しんだと思ってみたり”

まずい、aikoに見られてる。

ありえないのに本気でそう思った。私のために作られた歌だと思った。

恋の沼にいる人にしか分からない暗号だらけの歌だと思っていたのに、自分が変わったのかと思うくらい気持ちが分かる……!

『天空の城ラピュタ』でムスカが言った、「読める。読めるぞ……!」と興奮していたあの状態に私はなっていた。

私は、好きな人がいることを自覚した。

■片思いは「キラキラしていてけっこーつらい」

好きな人がいる生活は、私にとってハイパーミラクルタイムだった。

朝の駅のホームで好きな人を見かけるかもしれない。それだけで早起きができた。

かわいくなりたくて髪を巻いては、コテで首や額にやけどの跡をつくった。メールが来れば、消えてほしくなくて保護もした。会話からその人の情報収集をするのが楽しかった。

でも、誰かに口出しされたくなかったから、この片思いを打ち明けていたのは、親友とaikoの歌たちにだけ。

こんなふうに一瞬一瞬はきらめいていたけど、片思いはけっこーつらかった。

「好き」という気持ちに気づいてしまった私は、うれしくなったり、5分後には不安になったり悲しくなった。

ぼんやりした苦しい気持ちや涙の理由に、言葉という輪郭をしっかりつけて「これだよ」と刻んでくれたaikoの歌たち。シングルやアルバムが出るたびに、今のこの気持ちに寄り添ってくれる歌があるんじゃないかと飛びついては、たくさん抱きしめてもらった。

喉まで来ているこの気持ちを彼に伝えたら、明日からが変わってしまうかもしれない。

私のこと、「好き」だとは思っていないかもしれない。

宝物のメールは、会話の時間は、もう増えなくなるかもしれない。

ブラウンチェック柄の制服のスカートを履いて彼に片思いをした高校生の私は、どの季節が来ても「好き」という言葉をちゃんと伝える勇気がないまま大学生になってしまった。

■最後の告白チャンス

大学生だった好きな人はサラリーマンになり、高校生だった私は就活中の大学生になった。話す内容は変わらないようで、でも少しずつ出てくる単語は変わっていた。

距離も近くなったようで遠くに感じることもあり、4年間の片思いを隠しながら成長していくのはしんどかった。

いや、本当は隠せていなかったからこそ4年間も黙っているのが苦しかった。

就活の相談をするために会うことになった夏の夕方。これが最後の告白チャンスだと思って覚悟をして行った。人生の最終回みたいな気分だった。

もしかしたら両思いかもしれないという希望を2%くらい膨らまして、いろんな会話をしたけれど、どのタイミングで切り出せばいいのか分からなくて、酸欠みたいに頭が白くなっていく。

頼んだアイスコーヒーも氷が水になって、「早くしろ!」と煽っているみたいだった。

ラストチャンスの帰り道。私は、やっぱり言えなかった。その年も、「ずっと好きで、まだ好きです」と言えなかった。

言えないまま、手を振る好きな人の後ろ姿を見て手を振っていた。

その後に、うっかり再生したのがaikoの『Kiss Hug』。

“友達だなんて一度も思ったことはなかった”

“暑い帰り道に見えなくなるまで 本当に小さくなるまで見ていた

あなたが好きだったの 今も今も…“

やっぱり、aikoは見ていると思った。

aikoの歌詞の良さは、見たことのある目線や風景、半径1m以内にあるような物がでてくることで、まるでその場にいて体験しているような共感力があるところだと思っているが、本当にたまに「自分のことなんじゃないか」って思わせるミラクルな歌がある。

そういう歌は、ばっちりその状況にはまる時に聴くと、とんでもない衝撃を与えてくる。

悔しいのと、うれしいのと、よく分からない涙があの日たくさんたくさん流れた。

きっと私と、aikoの『Kiss Hug』しかしらない出来事。

長い長い片思いは、未練もなくスッキリ卒業できる日がちゃんと来たけど、やっぱりこの歌との思い出と、あの夏の帰り道のしんどさだけは忘れられず、聴くたびに喉がキュッと詰まってしまう。

片思い中、一番近くにいてくれた大切なラブソング。

(文:yuka hanaue、イラスト:オザキエミ)

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