「実は、夫が…」妊娠中なのに他の男と密会した27歳女。彼女が打ち明けた悩みとは

リカ@殺伐とした自宅


夫には多分、ほかに女がいる。

妊娠してから半年以上も、レスだから仕方ないのかもしれない。半年も平気な男はいないだろうし、拒絶している私にも原因があるのかもしれないけれど…。

行為をすれば、お腹が張る。子宮が伸縮して赤ちゃんが苦しくないか、心配になる。

性病や子宮頸がんになり得るリスクも少なからずある。もしそうなったら、経腟分娩をすると赤ちゃんに感染する可能性もあるため、帝王切開になってしまうことも…。

考えすぎかもしれない。

でも、こういうことを一切何も考えず、能天気に自分の性欲をぶつけてくる夫を汚らわしく感じてしまう。


「ねぇマーくん、そろそろバースプランを決めなきゃいけないんだけど、出産は立ち会ってくれるよね?」

「え!?出産に立ち会うとレスになるからオススメしない、って経験者に言われたことあってさ。それに俺、血とかグロいの苦手だし」

これ以上レスが続いたら、夫婦関係は冷め切ってしまう。

レスは妊娠期間だけに留めておきたいと思った私は、夫に立ち会いを強要するつもりはなかった。

「わかったわ。じゃあ立ち会いはしない、ってことにするわね」

「そうしよう!」

マサルは、安堵したように言った。そして、すぐに別の話をしてきた。

「今夜、『東麻布 天本』に行くんだけど、一緒に行かない?連れが体調崩しちゃってさ。久しぶりにリカと飯食いたくて」

「ごめん、今日は約束があるの。“古い友人”と久しぶりに会うんだ…」

天本には心惹かれたが、それ以上に大切な予定が、今夜私にはある。

古い友人って一体誰?妊娠中に別の男と密会した理由とは…?

悪阻がひどかったので、『毎週木曜日は必ず美味しいものを食べに行こう』という約束を守ることができず、私たち夫婦は長い間、食事を共にしていなかった。

悪阻が終わっても妊娠中は食べ物に気を使うため、気軽に外食に行くこともできない。

365日外食で、家事は一切やらなくて良いという条件は最高だと思っていたけれど、家で食事をする機会がないと、夫婦の溝はどんどん深まっていく。

「それに、妊娠中は水銀が含まれているお魚は控えた方がいいから、せっかくお鮨を食べに行っても楽しめないかもしれないし」

「なんか、妊婦って大変だな。楽しんで」

「…そちらこそ、楽しんでね」

マサルを送り出した私は、お腹が目立たないようにGUCCIのメンズサイズのフーディーを着て、ある友人からの連絡を待った。

リカ@秘密のドライブ


『リカ、着いたよ。マットブラックのゲレンデね』

自宅マンションの地下駐車場へ向かい、車寄せで待機していたメルセデス・AMG G63に乗り込んだ。

真っ赤なレザーシートに座ってハンドルを握るユウセイ(27歳)の姿は、そのまま車のCMとして流せそうなくらい美しかった。

「ユウセイ久しぶり…!遂にGクラス、ゲットしたんだね」

「去年、主演男優賞を獲ったときに一括で買ったんだ。どっちが早くこの車買えるか競ってたのに、リカは金持ちと結婚してブガッティ買ってもらったらしいじゃん。嫌味な女〜」

ユウセイと私は20代前半のころ、恋人役としてドラマで共演することが多かった。撮影に入ると3ヶ月間毎晩遅くまで顔を合わせるため、気が合えば急速に仲が深まる。

誰にも言えない話も心置きなく話せる仲となり、私たちは“ある大きな秘密”を共有するほど、打ち解けた。

夜な夜な二人で演技論を語っているときに、「熱愛発覚」と報じられてしまったこともあった。

そのため、マサルと付き合い始めてからは、人目を気にして彼に会わないようにしていたが、私はもう限界だった。リスクを冒してでも、ユウセイに会わずには、いられなかった。


「私だって本当はこの車が欲しかったのに、真っ赤なブガッティに乗ってるリカが見たいからって夫が勝手にプレゼントしてきたのよ」

「ふ〜ん。順調そうだね。今日は、急にどうしたの?」

ユウセイは真っ直ぐに前を見つめている。私も真っ直ぐに前を見つめ、信号が青になると同時に本音を打ち明けた。

「…会いたかったの。心の底から信頼できて何でも話せる相手って、やっぱりユウセイだけだった…」

「とりあえず、高速乗っちゃうね」

ユウセイはそう言うと、高樹町から高速に乗った。

左手に大きく見える東京タワーに見送られ、都心から逃げ出すように、彼はアクセルを踏み込み速度を上げた。


密会するには個室が安全だと思われているが、出入りを目撃されたり、店員や他の客に会話を盗み聞きされたりする可能性が少なからずある。

部外者が入れない自宅マンションの地下駐車場で合流し、すぐに高速に乗ってドライブをすれば、誰にも邪魔されることなく二人だけの時間を楽しめる。

完全なる密室で、リカとユウセイの秘密の会話の内容は…?

「夫は私自身を愛してくれているわけではなくて、“日本一美人な女優・沢山リカ”を妻にしたかっただけなのかなって、最近すごく感じるんだよね」

東京の夜景を横目に、レインボーブリッジを渡りながら、私が吐露した愚痴を、ユウセイは優しく受け止めてくれた。

そして、核心をついてきた。


「まぁ、男ってそういうとこあるよね。でもさ、リカは自分のすべてを彼にさらけ出してるの?弱い部分とか見せたことある?自分自身を愛して欲しいと言いつつ、格好つけてんじゃないの?」

10代から芸能界に身を置いて、学校も休みがちだったから、幼い頃からの親友なんていない。

生活レベルもライフステージも同じくらいのアサミやマコとは、楽しい時間を共有できるが、本音を打ち明けることはできない。

嫉妬もない、マウンティングもしてこない、気を使わない、お世辞も言わない、馴れ合いもしない、何を言っても引かない…。

本音を言い合えるユウセイは、私にとって唯一無二の貴重な存在なのだ。

「あぁ…確かに。悪阻で苦しい時、ボロボロの姿を見せたくなくて一人にさせてって寝室にこもってた」

どんなに辛くてもマサルに一切頼ることができなかった。マサルだけじゃない、振り返ると、人生で一度たりとも誰かに甘えたことなんてなかった。

「出産も、立ち会ってもらわない予定。夫は美人でキラキラしてる完璧な私が好きだから、耐えられないと思って」

「マサルさんはリカに壁を感じてるかもね。強い女だと思ってそう。本当は、こんなに繊細で脆いのにね。そういう部分を受け入れてくれる確信がないと、さらけ出せないというのもわかるよ」

私は夫であるマサルにも、一度も弱みを見せたことがなかったのだ。ユウセイと話していて、初めてその事実に気がついた。

本音がとめどなく溢れてきて、あっという間に羽田空港に差し掛かり、マサルとの楽しかった海外旅行の思い出が蘇る。

「マサルとのデートは、全て非日常だったから楽しかったのかも…」

プライベートジェットで、マサルと世界中を飛び回っていた夢のような恋愛期間を思い出す。コロナ禍に婚姻届を出してから、魔法が解けたように現実を突きつけられた。

「結婚生活って、日常の積み重ねだもんね。日常は誰しも地味で平凡なもの。私、家にいるときは美人じゃない瞬間もあるし、天真爛漫でもないの。だから、つまんないって飽きられるのが怖いのかも」

破天荒と言われていた起業家と、天真爛漫と言われていた女優が結婚しても、オフである日常は普通に人間としての営みを繰り返すだけ。

「珍しく弱気だね。天下の沢山リカに飽きる男なんているの?」

「マサルは、あれでも日本一の起業家だから引く手数多よ。女遊びの一つや二つ承知の上で結婚したのに、妊娠中はセンシティブになってるのか弱気になっちゃう」


ぼんやりと窓の外を見つめていると、川崎浮島町の工場夜景が見えてきた。

無機質の冷たさと美しさが共存する鋼の要塞を自分と重ね、涙が溢れ出す。

「その涙、マサルさんに見せられたらいいのにね。でも、彼の前では“スイッチ”が入って、涙なんて一粒も出ないんでしょうね」

「ふふふ、その通り。さすが、ユウセイよくわかってるね。私って可愛くないなぁ」

泣いたり笑ったり、ユウセイの前では気を使うこともなく、自分をさらけ出すことができる。涙も鼻水も何だって見せられる。でも、マサルには綺麗な部分しか見せられない。

「美人は三日で飽きるっていうのは顔だけ見てて中身を知ろうとしないから飽きるんだよ。そういう単純な男は嫉妬させちゃえばいいんじゃない?今日のことが週刊誌に撮られたらマサルさん火がついちゃったりして」

「だめよ、炎上しちゃう。私とユウセイは神に誓って何もない、純粋な親友だから撮られても構わないけど、夫も世間も何も知らないからね」

私たちが共有している大きな秘密は、世間どころか誰も知らない。芸能界でも知っているのは私だけかもしれない。

「でも、あの時はリカと熱愛発覚って、撮られて助かったよ。ゲイってことがばれそうだったから。あれで火消しできたんだよね。日本は未だに理解がないから、セクシャリティがバレたら干されるところだったよ」

「いつか、堂々と言える日が来るといいね。きっと私たちが生きてる間に、もう少し世界は優しくなってくれると思う」


怪しい車がいないことを確認し、気分転換に外へ出た。

ベンチで体育座りをして、夜風に当たる。横浜の夜景を見ながら、色んなことを語り合った。

誰のことを好きになっても別にいいよね?
性別なんて関係ないよね?

妊婦だって夜ドライブ行ってもいいよね?
夫以外の友人と夜景見たっていいよね?

恵まれているように見える人間も、誰しも悩みを抱えている。

不安や悲しみを悟られないように、キラキラした笑顔を作っている。

誰だって、泣きたい夜はある。

世界がもう少し優しくなることを願って、二人で頬を濡らした。


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