夫の財布を開けると、女の家の光熱費の領収書が…。38歳の妻がそのあとにとった驚きの行動とは

毎週金曜日に、ひっそりとオープンする“三茶食堂”。

この店のオーナーの直人(45)曰く、ここで繰り広げられる人生相談を聞いていると、東京の”いま”が知れるのだとか…。

さて、今宵のお客さんは?

▶前回:「毎回、食事だけして解散。これってただのメシ友?それとも…」女の本音が分からぬ28歳男の決断

Case10:原点回帰の女・理子(35歳)


旦那の浮気を知ったとき―。

妻というものは、意外に涙が出ないらしい。

「直人さん、お代わりください」

『三茶食堂』で飲み始めて、何時間が経っただろうか。気づけば、ワインを1本空けてしまった。

「理子さん、大丈夫ですか?はい、これお水」

直人さんの気遣いに感謝をしつつ、今夜はとにかく飲んで飲んで、何もかも忘れたい気分だった。

「男の人って、浮気をする生き物って言いますもんね。だから仕方ないですよね」

—夫の浮気は、私のせいじゃない。結婚10年目、そりゃ浮気くらいするよね。

ただ、さっきから何度自分にそう言い聞かせてみても、胸の痛みは消えてくれない。

結婚して10年。連れ添ってきた夫の浮気が発覚し、虚しさと悲しさで押し潰されそうだ。

浮気はするより、されたほうが辛い。

そんなわかりきったことを、この歳にしてまさか自分が痛感することになるなんて、思ってもいなかった。

夫の浮気が発覚…その時妻はどういう行動を取るべきなのか?

夫の異変には、ずいぶん前から気がついていた。

だが昨晩、いつもは見ないようにしていた夫の財布を、なぜか開けてしまった。

そこには夫が支払ったと思われる、相手の女の名前と住所が書かれた光熱費の領収書がしっかりと入っていた。

速攻で検索すると、すぐに顔が出てきた。

自称モデルで、インスタグラマーもどきの女。一見清純そうな顔をしていながら、20代では絶対に買えない、不釣り合いなブランドで身を固めた写真ばかりだった。

—あれもうちの夫が買ったの?

夫の俊一は、何不自由のない暮らしを私に与えてくれている。

世田谷区にある4SLDKの一軒家住まい。可愛い息子もいて、お受験は成功。人から見たら羨ましがられる暮らしだと思う。

だけど、本当に私が求めているものは何なのだろうか。豪華な暮らし?ハイブランドのバッグ?

…そんなものはどうでもいい。

今は夫に対する怒りよりも、自分の存在意義のなさを思い知らされ、どうしようもない悲しみの波が絶え間なく私を襲ってくる。

「直人さんって、浮気したことありますか?」
「え?僕ですか?」

突然の質問に、直人さんは困ったような笑みを浮かべた。

「浮気はないかなぁ…とはいえ、僕もバツイチですからね」
「そっかぁ。直人さん、結婚していたんですね」

そこからお互い何も話さず、しばらく沈黙が続く。

店内に静かに流れる、ジャズの音。時々、直人さんが野菜を切っている音や、揚げ物の油がはねる音だけが静かに響く。

「理子さん。さっきの話ですけど、男性の中には浮気しない人もいますよ」

そう言いながら、直人さんが私の目の前におでんの盛り合わせを置いた。

「おでん…あれ…?これって、牛スジですか?」


関東では、滅多に見ない牛スジ入りのおでん。久しぶりに味わう関西の味に、急に実家の台所に立っていた母の後ろ姿を思い出す。

私の実家は決して裕福な家庭ではなかった。お金がなかったので、大学も奨学金で通っていたほどだ。

大阪の中でも特に下町で、今みたいな裕福な暮らしではなかったけれど、幸せだった。

両親は小さな飲食店を営んでおり、時に喧嘩をしながらも夫婦は仲が良く、そんな家庭を私は目指していたはずだ。

「どこで、歯車が狂っちゃったのかな…」

久しぶりに、牛スジのおでんを食べて実家の味を思い出したからだろうか。さっきまでは一滴も出てこなかった涙が急に溢れ出てきた。

「一生懸命いい妻をやってきたはずなのに、どうして浮気をされるんだろう。私の、何がいけなかったのかな…」

すると直人さんがそっとティッシュを渡すと同時に、肩をぽんっと叩いてくれた。

「理子さん。浮気は相手のエゴであって、浮気されたほうが自分を責める必要は全くありません」

何も言えずにいると、直人さんはもう一度力強く、念を押してくれた。

「自分を責めちゃダメです。それより、前を向いて先に進まないと…とは言っても、そんな簡単なことではないと思いますけど」

人の気持ちは、うつろいやすい。永遠なんて、ない。

それでも家族となった意味は、何なのだろうか。

「理子さん。自分の強みを見つけてみたらどうですか?旦那さんの浮気なんて蹴散らせるくらいの、何か強みを」

最初は、直人さんの言っている意味が分からなかった。

経済的に全て夫に頼っている私は、この日のお会計も、結局夫のカードで支払うことになる。

所詮私は夫に対して、何も強くは言えない。そんな自分が、心底嫌になった。

“サレ妻”が決意した、夫に対する反撃方法とは?

直人:自分の強みを見つけて、強くなって。


理子が初めて旦那さんと店にやってきた時から、彼女はいわゆる“世田谷の綺麗な奥様”というイメージそのものだった。

でも今日の話を聞いていると、どうやら向こうが浮気をしたようだ。

「男の人って、浮気をする生き物って言いますもんね。だから仕方ないですよね」

何度もそう呟きながら、自分に言い聞かせていた理子。だが、言えば言うほど彼女の悲しみは増していくようだった。

男女には、ドラマがつきものだ。

店をやっている以上さまざまな男女関係を見てきたが、どうして人はこうも欲深く、そして誰かを傷つけ、傷つけられてしまうのだろうか。

また、浮気系の修羅場があったとき、された側は2パターンに分かれる。

ひたすら我慢して何もしない人と、心を強く持って立ち向かう人だ。

「理子さん。自分の強みを見つけてみたらどうですか?旦那さんの浮気なんて蹴散らせるくらいの、何か強みを」

理子が旦那さんに文句を直接言えないのは、理子が現在、経済的なことを全て旦那さんに握られている、ということが大きいのかもしれない。

一緒に食事に来た時も、理子は常に相手の顔色を伺っていた。

「頑張ってほしいなぁ」

今回ばかりは、そんな人並みのことしか言えない自分がいた。


だがそれから1ヶ月後。

久しぶりに店にやってきた理子を見て、僕は思わず目を丸くしてしまった。

胸下くらいまであった綺麗な髪が、顎の長さまでバッサリと切られていたのだ。

手を見ると、輝いていた婚約指輪と結婚指輪も消えている。

「直人さん。私、小料理屋を始めようかと思うんです。息子も小学校高学年になって、手も離れてきましたし」

ワインを飲みながら、楽しそうに理子が話し始めた。

「私、実家が居酒屋なんです。小さい頃から両親の背中を見ていたし、そもそも私ができることって料理くらいだなと思って。息子のためにも、カッコイイ、働くママの背中を見せたいなと」

正直、理子がこういう決断を下したのは意外だった。

だが彼女の表情は、喜びとこれから始まる明るい未来への希望で満ち溢れている。

「いいじゃないですか。ちなみに場所はどこですか?」
「池尻のほうでやろうかなぁと思っています。近くてゴメンなさい」
「そんなこと、気にしないで(笑)」

笑っていると、急に理子が真面目な顔つきになった。

「ちなみに、夫のことは許しました。今まで散々高い料理教室とかに通わせてくれたのも、夫ですし。ただ次に何かあったら夫に頼らなくてもいいように、自立したいと思います!」

人は、何がキッカケで人生が変わるかわからない。

ただ問題の渦中にいる際は苦しくて悲しくて、陽の光さえ見えない時がある。

でもその闇を抜けた時。人はさらに強くなり、そして以前よりもっと上へ、上へといけるのだ。

理子は負のパワーを、プラスに変えた。

「夫が浮気をしても、それでも私たちは家族なんです。家族だから、ちゃんと話し合って向き合って、前に進んでいかなきゃいけないんです」

優しさと強さを兼ね備え、前に進み始めた彼女が作る料理を、ぜひ一度食べてみたい。開店したらお祝いの花を持ってお邪魔しよう、そう心に決めたのだった。


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「どうしてあの子ばかり…?」人と比較する女

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この記事のみんなのコメント

1
  • あきひろ

    2/28 12:06

    まず。夫婦といえども財布を勝手に開けて見るのはおかしいわ自分が夫に同じ事をされたらどう思うかという普通の思考が出来ないのかね?😥

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