元カノから3年ぶりに連絡が…。男が唖然とした三十路女の変わり果てた姿とは


『あけましておめでとう!元気〜?』

年収は右肩上がりの独身貴族。

将司のもとには、新年にかこつけて過去の女たちからの“ザオラルLINE”が山ほど届いていた。

年を重ねるごとに出会いが少なくなっていき、遠い目で過去を振り返る女たちの姿が目に浮かぶ。

『そういえば、結婚するにはあの男良いかも…』と微かな下心を込めて、『あけましておめでとう!元気〜?(やっぱり私と結婚しない?)』というLINEを送ってくるのだろう。

ほぼ全てのザオラルLINEを既読無視していたが、一人だけ心に引っかかる女がいた。

3年前に付き合っていたモデルの里香だ。

2コ下だったから、今は30歳になっているはず。

付き合っていた頃は、雑誌の表紙を飾っていてバラエティ番組に出始めていたが、最近はテレビでもコンビニの雑誌コーナーでも見かけなくなっていた。

里香が浮気をしているという噂話を小耳に挟み、真偽を確かめることなく、自分から一方的に振って終わった恋だった。

しかし、一度は愛した女、どうしているのか心配な気持ちはある。

正月は暇だし、凛子から連絡は来ないし、軽い気持ちで会うことにした…。

凛子と将司の間に亀裂が…?元カノと会ったことを激しく後悔した訳とは

里香から『お鮨が食べたいなぁ〜♡』という圧力を受けたものの、将司は麻布十番にある“魚が美味しいお店”を指定した。

麻布十番の路上で3年ぶりに再会した里香は、異常に高いテンションで駆け寄ってきた。

「きゃ〜将司だ!久しぶり〜」

里香は、キラキラした目でこちらを見つめてくる。

しかし、こじんまりとした和食屋に足を踏み入れた途端、顔を曇らせた。

「将司って、知る人ぞ知る隠れ家みたいなお店、相変わらず好きなのね…」

「俺だけしか魅力を知らない感じが、男心をくすぐるんだよね。ミーハーな店は、客層悪いし混んでるし落ち着かない」

「ふ〜ん」

里香はリクエスト通りのお鮨ではないことに、やや不満そうな顔を見せたものの、乾杯のビールに口をつけると、すぐに機嫌を取り戻し、核心に迫ってきた。

「で、将司最近どうなの?結婚した?」

「してないよ」

テンションの差を感じながらそっけなく答えたが、さらに食らいついてきた。

「奇遇だね!私も、まだ結婚してないよ。いい感じの子とかはいるの?」

数年前とは打って変わって、グイグイくる里香に若干嫌悪感を感じながら、冷たく言い放つ。

「まぁね」

その瞬間、里香の表情が歪み、小ジワが寄る。30歳になっても相変わらずの美貌だが、25歳の凛子と比べるとハリや瑞々しさは劣る。


「え、どんな子なの〜?」
「うーん、いい子」

答えても答えても、さらに突っ込んでくる。

「いい子って例えば?」

いびつな笑顔を貼りつけている里香に、問い詰められる。

「例えば…初回デートでホルモン屋に連れて行っても、嫌な顔一つせず終始楽しそうに笑ってくれるところとか」

「え、初回でホルモンはないわ。ていうかその子、あざとくない…?絶対演技だって」

女たちは、どうしてこんなに互いを蹴落とし合う会話が好きなのか。

「世の中には里香と違って、煙もくもくのホルモンに連れて行っても、嫌な顔一つしない純粋な子もいるんだよ。それに例え演技だとしても、人のために笑顔でいてくれて、良い雰囲気を作ってくれるなんて、すげぇ可愛いなって思うよ」

里香は不服そうな顔をしながら、マグロの刺身を口に運ぶ。

「ふ〜ん。相性も良いの?」

そんなことまで聞くなよ、と心の中でツッコミながら素直に答えてしまう。

「いや、まだ3回遊んだだけで、やってないんだよね」

「え、3回も遊んでやってないって……。将司変わったね」

里香は日本酒を手酌し、グビっと飲み干した。

「いい子だから、安易に手を出して傷つけたくなくてさ。ていうか、焦らされてんだよね」

「何嬉しそうに言ってんのよ。顔、にやけてるわよ?年下の手のひらで転がされて嬉しいわけ?」

「うん、まぁ、男は古今東西女の手のひらで転がりたい生き物だからね。最近の女ってすぐ体許すじゃん。萎えるんだよね」

彼女の日本酒を飲むペースが加速していく。ほんのりとピンクに染まった顔で、悪戯に微笑みかけてくる。

「でも、『体の相性は大切だから、確かめてからじゃないと付き合えない』って前に言ってなかったっけ?」

「それはすぐにやりたい男の常套句だよ。ぶっちゃけ相性なんて、キスでほぼわかるよ」

そういえば、里香にもその常套句を使って初めてのデートで体の関係になり、事後に詰められて付き合うことになったことを思い出した。

気まずくなり、将司も日本酒をゴクリと飲み干す。

「あなたがそんなに気に入るなんて、さぞ美人なんでしょうね。インスタとかないの?見てみたい」

凛子のインスタに載っていた衝撃の写真とは…?!

里香にそそのかされ、Instagramで適当に名前を検索すると、凛子のものらしきアカウントを見つけることに成功した。

投稿写真は、景色や料理など当たり障りのないものに、大学の友人と思しき育ちの良さそうな女の子たちとの、和やかな写真ばかり。いわゆるインスタグラマーのような、ギラギラした華やかなポストは一つも見当たらない。

最新のポストは、凛子が着物を着て初詣をしている写真だった。

—そっか、着物で初詣行くために早起きして、俺を置いて出て行ったわけか。

将司が安堵の気持ちに浸っていると、里香に勢いよくスマホを奪われる。

「見せて見せて!え、意外に普通な子で驚いた…」

「結婚するならこういう子がいいと思わない?あんまり派手じゃなくて品がある子。それにどこも整形してない感じが良いんだよな〜」

超美人と結婚しても蓋を開けてみれば、整形だったり、エルメスをねだられたり、周りの男たちが苦労している話をうんざりする程聞かされていた将司は、反面教師として凛子のような手堅い女を求めていた。

「昔はあんなに面食いだったのに…」

「昔はね。でも自分でステータスも金も十分すぎるくらい手に入れたから、周りに自慢できるようなアクセサリーは、これ以上いらないなって。美人に固執してたのは、自信のなさの裏返しだったのかもな。今欲してるのは癒しだけ。それに性格が良くて愛嬌がある子って、一緒にいればいる程どんどん可愛く見えてくるんだよね」

粗探しをしようとしてか、里香は凛子のInstagramを穴があくほど見つめている。そして、写真をスワイプすると、目を丸くさせて歓喜の表情を浮かべた。

「ねぇ見てよ。男と初詣いってるみたいよ」


目の前に突きつけられた写真を見ると、着物を着た凛子の隣で男が微笑んでいるではないか。

年齢は凛子と同じくらい。顔はイケメン。身長も高い。とても打ち解けていて仲が良さそうな雰囲気だ。

「やだ将司、25歳の小娘に遊ばれちゃってたわけ?こういう純粋そうな子ほど裏ではビッチだったりするのよ」

そんなはずはない。自分の目を疑った。

「いくらお金とステータスを持っていたとしても、若い子からしたら32歳は、所詮オジさんなのよ」

里香の言葉が、右の耳から左の耳へ抜けていく。

自分が弄ばれていたなんて、高すぎるプライドがズタズタに傷付き、心がザワザワしてしまう。

里香のような女に同じことをされても痛くも痒くもないが、凛子のように純真無垢で生真面目だと思っていた女にこのような事をされると、ショックが大きい。

まさに青天の霹靂。まるで、知らぬ間にオセロで角を取られ、一気に全てをひっくり返されたようだ。彼女はきっと自分にベタ惚れなのだろうと余裕しゃくしゃくだったが、一気に不安に襲われる。

ホルモンデート、クリスマスデート、家デートと、順当に逢瀬を重ねていき、右肩上がりに膨らんでいった自分の気持ちが、一気に地の底まで落ち、まるでジェットコースターに乗っているかのような気分だ。

楽勝だと思っていた女に、翻弄されている現実。
25歳くらいの年下の男に負けているという現実。

とっとと切り捨てようにも、こんなガキには負けたくないという闘争心に火が点いてしまう。

将司は、気付かぬうちに“凛子の沼”にはまっていくのだった。


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凛子の隣に映っていた男の正体とは…?

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