「エール」35話/裕一(窪田正孝)が刺激物で胃を壊したのは音の「八丁味噌攻撃」のせいかと思った

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第7週「夢の新婚生活」35回〈5月15日 (金) 放送 脚本・清水友佳子 演出・橋爪紳一朗〉



■小山田、悪人説
ついに憧れの小山田耕三(志村けん)と出会う裕一(窪田正孝)。
「そもそもバニラってなんでできてるんだ?」「私は木の実を食ってるのか?」などと取り巻きの人たちとのんきな話をしている小山田の姿を固唾を呑んで見守っていた裕一は、思い切って声をかける。

いつか青レーベルで書けるように精進しますと挨拶すると、「赤レーベルではどんな曲を出したのかな?」となんとなく冷たい。不穏な劇伴が流れ……裕一は帰宅するなり寝ずに作曲に励む。

その日から朝から晩まで作曲に没頭するが、出来たものは書き直すたびにひどくなると廿日市(古田新太)にボツにされる。

ここで思い浮かぶのは「飼い殺し」である。
小山田先生、実は、クラシックの才能がありそうな裕一が自分の座を脅かさないように、わざと自分と違う「赤」レーベルに所属させたのではないか疑惑。そもそも、クラシックをやっていた裕一をいきなり歌謡曲のレーベルに所属させて、歌謡曲の基本もなにも教えないで1年、ボツにし続け、高額な契約金を払い続けるなんて会社としても無駄でしかない。

個人的には、かつて文房具の会社に就職したとき新商品開発部という部署に配属され、一年間、商品化されないで悩んだ経験があるが、基礎的なことは先輩や上司に教えてもらえたぞ。
小山田は、そろそろ若い才能が出てこないかとか言いながら、そういう人が出てくると潰していくタイプなのではないだろうか。がんばれ、裕一、負けるな裕一。

それにしても、1年間、何曲も書きながら、歌謡曲の音域もわかっていないのか裕一は……。裕一も、赤レーベルを踏み台にクラシックの青レーベルに行こうとしている節があるのは小山田への挨拶で見てとれた。歌謡曲には興味があまりないようだが、木枯(野田洋次郎)のように市場調査くらいはしようよと思うけれど、若いときって自分の興味のないものには寛容じゃないもので、裕一がクラシックにこだわってドツボにはまっていくのもわからなくはない。

まだ何も成してない(一応、すごい賞をとった)若夫婦がやたらだだっ広い家に住んでいて、仕事部屋があって本棚も大きくて、羨ましいぃ〜〜。早く、この大きな部屋にピアノが置かれて、たくさんの名曲を生み出していってほしい。

小山田役の志村けんは、朝ドラの撮影を4回ほどしたのち、新型コロナウイルスに感染して亡くなってしまった。代役は立てずに工夫して小山田の存在を表現していくとのことだが、志村けんはあとどれくらい出演するのだろうか気になる。


■音、選考会に挑戦
一方、音は、久志(山崎育三郎)の提案で、「椿姫」のヴァイオレッタに挑戦することにした。
潔子(清水葉月)と和子(金澤美穂)は、千鶴子(小南満佑子)との圧倒的な実力差を感じながら、音を応援すると言う。彼女たちが音の実力をどれくらい感じているかそういう場面がないので、ひどく無責任に見えてしまう。「身の程知らずよね」とか言いながら「音さんを応援する」ってなんなのー。

二階堂ふみは伸びやかで透明感のある歌声を披露しているものの、やはり歌が専門ではないので、歌の場面に制約ができてしまうように感じる。二階堂ふみの演技の実力や魅力は認めているし大好きなのだが……。「あおうあおう」と発声練習の再現性、その思いきりの良さとか、本当に巧いんだよなあ。

さて。オーディション(選考会)当日、根を詰めた裕一がコーヒーを飲み過ぎて(7杯)胃を壊し倒れてしまい、音は医者を呼んだりしていたため遅刻してしまう。「悪いもの」「刺激物」を食べなかったかと医者が聞いたとき「八丁味噌」攻撃のせいかと思ってしまった。

開始時間に遅れて慌ててやって来た音に先生(高田聖子)は冷たく審査を受ける資格はないと言うが、事情を知らないはずの千鶴子が「私の時計はまだ8時59分」となぜか武士の情けを出し、立ち会っている久志も「あの時計は少々せっかちのようです」とかばい、みごとに一次審査に通過する。このとき、審査員のひとりが腕時計を確認しているが、ここは、この場にいる全員が一斉に時計を今一度確認し、妙な顔をするような動きをつけてほしかった。

千鶴子のキャラなら、時間厳守しない人を認めない気がするんだけれど……、遅れても審査を受けに来た根性を買っているのだろうか。音は昔、教会で琴の演奏をするとき遅刻して、穴を開けてはいけないと、双浦環(柴咲コウ)に注意されている。これが金曜日までの週5でなく、土曜日までの週6だったら、遅刻厳禁の葛藤などを描けたのではないだろうか。

などともやもやした金曜の朝。そうかわかったぞ。「エール」は「とと姉ちゃん」のようなツッコミエンタメ朝ドラなのだ。ツッコミエンタメとは、あえて省略することで視聴者にああだこうだとツッコむ楽しみを盛り込んだ、視聴者参加型クイズのような高度な作品である。これはこれでひとつの人気ジャンル。なにより視聴率が取れるのである。その証拠に今週、視聴率は21%代をキープしている。

と思ったら、ザッザッザッと軍靴の音がして不穏な感じ? いや、違った。学生服を着た人たちが現れた。それは早稲田大学応援団の人たちで……。来週の新たな展開を楽しみに待ちたい。ラストの窪田の「ん?」ってとぼけ方が良かった。
(文/木俣冬、タイトルイラスト/おうか)

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