最終週「やすらぎの刻~道」“もいちどはじめから”公平としのは原風景に、菊村は妻の墓前に帰っていった

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倉本聰・脚本「やすらぎの刻~道」(テレビ朝日系・月~金11時30分~)最終週。

脚本家・菊村栄(石坂浩二)の脳内ドラマ「道」パートも、現実世界である「やすらぎの刻」パートも揃って完結!

そんな世界はもう捨てて早う来んか!?


「道」パートでは先週、詐欺容疑で次男の竜(駿河太郎)が逮捕されたかと思えば、今週は農協に借金しまくっていた四男の圭(山村憲之介)が、公平(橋爪功)たちが住む土地を勝手に自分名義に書き換えていたことが判明する。それも借金のカタとして取られてしまったのだ。

田舎の村で、現代社会の狂騒からは離れ、金も物もなくても、子どもや孫たちに囲まれて幸せそうな生活を送っていた老夫婦が、物欲・金銭欲に狂った息子たちのせいで、結果的にその生活を奪われることに。

平成編に入ってから、たびたびバブルへの憎しみが描かれて来たが、金を欲しがる人たちをここまで悪人に仕立て上げるとは。

それでいながら、物質主義から脱却して自然に回帰した生活を送り、何かにつけて「おじいちゃんおばあちゃんを喜ばせたい」なんてことを言っていた本作における絶対正義・翔(菅谷哲也)は翔で、父・竜が騙した被害者たちに金を弁済することもできなければ、土地を追い出されようとしている公平立ちを救うこともできなくて泣くばかり。

金に踊らされると地獄に落ちるが、金がないと人を助けることもできない。結局、どうすればいいのか。

公平もしの(風吹ジュン)も認知症で、事態の深刻さをあまり認識できていなそうなのが救いとも言えるが……。

生まれ育った小野ヶ沢に別れを告げるため、公平としのは、みんなの古着を裂いて作った縄を「みんなのアルバム」ということで体にグルグル巻き付けて墓参りに行くことに。

その帰り、認知症の老夫婦が道に迷ってしまうという恐ろしい展開。最後の最後に来てここまで不幸のブチ込んでくるか。

山道をさまよった挙げ句、今まで見たことのないトンネルに入ってみると、死んだはずの三平が。……あの世行きのトンネルかい!

「モノだけいっぱい家にあふれとって、なのに家族はみんなバラバラで勝手なことを考えて生きとる。そんな世の中あってたまるか!」

普通のドラマだったら三途の川の反対側に現れた肉親が「まだ来ちゃいかん」となるところだろうが、本作では「そんな世界はもう捨てて、お前ら早う来んか!」。

ここまで厭世観を出してくるか……とも思ったが、ふたりとももう90歳超え。まあ三途の川を渡っても大往生か。

トンネルを抜けた先は、通い慣れたかつての“道”だった。

この脳内ドラマは、「やすらぎの刻」パートのロクさんが言っていた、

「原風景ってのは、最期に自分の帰っていく、帰り着きたい最終の景色だという事じゃないんですかね」

という言葉から着想して執筆をはじめている。その言葉の通り、公平たちが“原風景”へ帰って完結となった。

「やすらぎの郷」ファーストシーンに戻った


一方、「道」のシナリオを書き終えた菊村の元へは姫(八千草薫)の幽霊が現れる。

「書き上げたのね、お疲れさま」

昨年10月に亡くなった八千草だが、こんなシーンまで撮っていたのか、スゴイ!

平成編のしの役はもともと八千草薫が演じる予定だった。前作で亡くなった姫に捧げるため、菊村がシナリオを書くという展開を想定していたのだろう。

しかし八千草が体調不良で降板したことにより、菊村の亡妻・律子役を演じていた風吹ジュンが、しの役も演じることに。

予定外のハプニングだったはずだが、そのおかげで菊村が「道」を書く動機も深みを増した。

常に妻のことを思い出しながら、妻のために書いたシナリオを墓前に供えるエンディング。ドタバタ続きだった「やすらぎの刻」パートだが、ものすごくキレイに終わった。

前作「やすらぎの郷」の第1話は、最終シーンと同じように、律子の墓の前に座り込んだ菊村の姿とともに「律子が死んだ」というナレーションでスタートしている。

「やすらぎの郷」「やすらぎの刻~道」は、妻を失って失意の中にいた菊村が、「やすらぎの郷」の仲間たちと交流する中で再生し、再びシナリオを書くという物語だったのだ。

倉本先生、まだ書けるんじゃない!?


年を取った脚本家という、倉本聰自身を投影したと思われる主人公・菊村を設定しておきながら、前作では結局最後までシナリオを書くことはなかった。

本作では、遂にシナリオを書きはじめ、完成させた菊村。

その姿を通じて、倉本自身の創作の苦労や過程、脚本家としての本音も垣間見ることもできた。

最終話での、「シナリオを書き上げた時に、こうやてお祝いしてもらうなんてはじめてなんですよ」というセリフも本音だろう。

バー・カサブランカでのシナリオ完成祝い。その夜に菊村が見た、「道」パート出演者からのお祝いは、原稿用紙2500枚分という「道」パートだけではなく、さらに3000枚以上の「やすらぎの刻」パートも書き上げた倉本自身へのお祝いシーンだ。

本作の終了をもって、倉本の発案に寄って創設されたシニア向けの「帯ドラマ劇場」枠も終了という。

NHK朝ドラや民放各局が夜に放送しているドラマとも違った「帯ドラマ劇場」枠は、各局ワイドショーばかりやっている時間帯において嬉しい存在だったのだが。

「最期のシナリオ」とたびたび発言しながら本作を書き上げた倉本聰だが、完結後も点描画の展覧会や、自身が作・演出を手がける舞台「屋根2020」の上演など精力的に活動されている様子。

さらなる続編もないとは言い切れないのでは……!?
(イラストと文/北村ヂン)

【配信サイト】
・Tver

『やすらぎの刻〜道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」「終り初物」「観音橋」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日

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