新型コロナ拡大で相次ぐ興行中止…プロレス団体DDTの選択は?

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 年が明けてからの話題と言えば、新型コロナウィルスに尽きるだろう。小学校や中学校を始めとする公立の休校措置、リモートワークや時差出勤など、日本中で事態の収束を見守っている。そんな空前の自粛モードが高まる中、エンタメ業界はどうなのだろうか。ドームやホールクラスの大物アーティストから、小規模のライブハウスまで、興行中止による影響は計りしえない。

 レスラーであり、また経営者としての顔を持つDDTプロレスリングの高木三四郎氏に、今回のコロナウィルスによるプロレス業界への影響について聞いてみた。

◆興行中止はすべて自己判断。損失額は…

――まずは、DDTプロレスリングでは何興行くらい中止になりました?(注:取材が行われたのは3月初旬)。

高木三四郎さん(以下、高木):うちは、DDT以外にも、東京女子プロレス、ガンバレ☆プロレスと言う団体もあるのですが、その全グループを合わせて10興行くらいですかね。

――概算で損失はいくらくらいになるのでしょうか。

高木:1千万円以上です。

――短期間なのに、かなり高額ですよね。今までこのように興行を中止にする事態ってありましたか?

高木:それはなかったですね。

――中止の判断はすぐに決められましたか?

高木:いえ、やはりすぐには決められなかったです。僕の中で、やっぱり国から自粛要請とか、非常事態宣言が出たら止めざるを得ないだろうなっていうのがありました。そこがまず、一つの判断基準でした。

 もうひとつは新日本プロレスさんがどう動くか。でも、「興行はやります」って状況の中だったら、うちも「やります」って思ったんですけど…。そこから、新型コロナウイルス対策本部の方から、2週間の自粛要請が出て(中止の)判断しましたね。

――こういう時は、政府などからお達しが来たりするものなのですか。

高木:それが来ないんですよ。全然来ない。自主判断です。

――周りのプロレス団体はどのような対応でしたか?

高木:新日本プロレスさんは、ブシロード(注:新日本プロレスの親会社)さんの判断でしょうね。うちはサイバーエージェント(注:DDTの親会社)から「自粛してくれ」とか言われたことがない。あくまで僕の考えに沿って決めています。

 大規模興行の判断で、500人っていうのがあったんですけど。傍から見れば、500人だろうが1000人だろうが1万人なのかわからないじゃないですか。これはすごく曖昧な表記をされているなあって、僕の中では思っていて。

 だから、イベントの自粛をやるのだったら、「期間中のイベントは全部中止にしなさい」っていう判断でないとだめだと僕は思いました。当然政府がきちんとリカバリーの施策を出したうえで、1週間なり2週間中止にするという風にすればよかったんじゃないか……とは思います。

◆逆境の中、アイディア勝負。インディー団体の矜持

――イベントの自粛要請が出る前に開催された、2月のDDTの後楽園ホール興行ですが、物販のスタッフをはじめ、サイン会などで選手がマスクを着用していました。このような形での開催は、どのように決まったのでしょうか。

高木:物販に関しては、接触型の物販イベントを行っている、アイドルグループなどの事例を参考にしました。

――選手などがマスクを着けて撮影会などに参加することに関して、なにか反応がありましたか?

高木:特に、来てくださったお客さんからのクレームなどはなかったですね。現場側でも、いつもよりチェキ(選手との写真撮影)の数字が落ち込んだりもなかったので、影響は少なかったです。

――DDTグループは、2月28日から3月15日まで大規模な興行中止を行いましたが、その間に、無観客試合を行いましたよね。

高木:中止の代替として、DDT UNIVERSE(注:有料のDDT自社動画配信サービス)で御茶ノ水道場から無観客試合を行いました。本来なら中止になった会場でやるという案もあったんですけれど、配信環境があるので道場のほうがいいという判断になりました。

――例えば、音楽のライブの場合は、興業が中止になっても同じセットリストを組むという事ができると思います。プロレスの場合は、中止となった興行と同じ興行をすることは可能なのでしょうか?

高木:中止になった興行を全く同じように再現するのは難しいですよね。今回に関しては完全にイレギュラーなケースでありますし、会場の予約も半年以上先まで決まっているところも多いので、振替える会場をもう一度押さえるのも難しいんです。さらに、その時に同じゲストに出て貰うのは不可能に近いと思います。だから、興行中止のダメージはどこも大きいんじゃないですかね。

◆いつもより雑誌のページ数が多かった(笑)

――興行中止の期間は、DDTの通販でキャンペーンもされていましたよね。

高木:会場でグッズを販売するのはできないので、「オンラインでやるには何を引きを作ればいいのか」を考えました。そうしたら、選手のサインを入れることかなという感じですかね。通販のキャンペーンや無観客試合も、あれは僕のアイディアですね。フットワークが軽いのと、発想力は負けていない。

――プロレス業界自体を見渡してみると、今回の興行中止に関して気になったことはありますか?

高木:専門誌はどう補充するのかなって思いましたね。意外と『週刊プロレス』とかはうまいぐあいにやっていました。僕らの道場の無観客試合が、普通だとそんなにページ割かないだろうってところが、いつもより多めに載ったり(笑)。

――良い影響もあったんですね。では最後に、このような想定外のアクシデントに直面した時、経営者としてはどのような気持ちなのでしょうか?

高木:自分で言うのも変な話なんですけど、インディー団体としてスタートして、制約のない状況で「アイディア勝負」で切り抜けていかなきゃいけないところが、今までも多極面であったんです。だからこそ、こういう逆境に慣れているというか(笑)。逆境だからこそ発揮できる部分ってあるなって思ってます。

 新型コロナの拡大で、飲食店や観光エリアなど、苦境に立たされているといった話をよく聞く。しかし、この中で戦っている人も、確かにいるのだ。<取材・文/池守りぜね 撮影/鈴木大喜>


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