二次会で、半年ぶりに男に再会して…。女が元カレから言われた、衝撃的な一言とは

26歳、アラサーの仲間入り。周囲では申し合わせたように突然、第一次結婚ラッシュが訪れはじめる。

しかし当然、その波に乗り切れない者だって多くいるのだ。

結婚するのに早すぎる歳ではないが、言ってもまだ20代。微妙な年齢であるがゆえの「もっとイイ男がいるかも…」という、悪魔の囁きに翻弄される女たち。

主人公・杏里(あんり)も、なんとしてでも結婚ラッシュに乗りたいと思うものの、なかなか決断ができず、現れる男とはことごとくうまくいかない。

そんな杏里の一人目の「元カレ」は、一宮純。純は、由緒正しい家柄の長男で、スペックには申し分ないのだが…。

◆これまでのあらすじ

26歳の杏里は、純からついにプロポーズされた。だが結婚をするためには、杏里も同時に仕事をやめ、一宮家の嫁として家のしきたりを守ることを要求されたのだった。


杏里は、純が「結婚したいと思ってる」と伝えてくれた日のことを何度も思い返していた。

“純との結婚”か、“自分自身が望む生き方”。どちらを取るかの二択だ。

—どちらを取るべきなんだろう…。

面白くなってきたばかりの仕事を今すぐ手放す気持ちは毛頭ない。つまり答えはわかっているのだ。それなのに、決断できないのには理由がある。

杏里は、一刻も早く結婚がしたいのだ。26歳となった今、すっぱり彼氏と別れるのが本当に怖かった。

それに、貴重な20代を純に費やしてきた。すべては彼と結婚するためだったというのに、あっさり手放してしまうのはこれまでの時間が無駄になってしまう気もする。

—でも、もしかしたら…。

6年も一緒にいた純なら、杏里の考えを尊重してくれるかもしれない。一宮家のしきたりのことも、ご両親と話し合ってくれるかもしれない。

杏里は、自分の思いを素直にぶつけようと決め、最後の願いを託して純に電話をかけたのだった。

「純、この前は感情的になっちゃってごめんね。それで私考えたんだけど…」

ひとつひとつ言葉を選ぶようにして、この数日でひねり出した折衷案を彼に伝える。

例えば、結婚してしばらくは杏里も仕事を続け、子供が生まれたら家に入る。0か100かではない方法が、必ずあるはずだ。

しかし、純の反応は驚くほど冷たいものだった。

純が出した答えとは?6年も付き合ったとは思えない衝撃的な言葉に、杏里はショックを受けて…。

「ふーん…。やっぱり俺ら、別れた方がいいね」

純の冷酷な一言に、杏里は慌ててしまう。

「え、ちょっと待って…!とにかく一回会って話そうよ、私だって伝えたいこといっぱいあるよ。仕事のことももう一回ちゃんと考えて…」

しかし、それを遮るように純が言った。

「俺、親にも聞いてみたし、もう一回よく考えた。けど、杏里と俺は、結局違ったんだと思う」

頑固なところもある純を、男らしくてかっこいいと思っていた。でも、最後になるかもしれない大事な話すら、頑なに聞こうともしてもらえない。

純は杏里のパートナーである以前に、一宮家の人であり、そのしきたりは絶対なのだと痛感させられる。

「わかった…。今までありがとう、純」

振り絞って出した言葉に、純からは何も返ってこなかった。結局それが、恋人同士としての二人の最後の会話となったのだった。


今日は、サッカーサークルで学生時代のほとんどを一緒に過ごした、親友・莉奈の結婚式。

純と電話で別れ話をしてから、半月が経っていた。

—莉奈は人生で一番幸せだろうに、私は結婚から最も遠いところにいる…。

親友の結婚は、めでたいこと。杏里も嬉しいはずなのに、純粋に喜べない。

披露宴を終え、二次会の会場に移動しながらも、杏里は心ここに在らずだった。

なぜなら、同じサークルで先輩だった純も、二次会から来ることになっているのだ。

—もう一度、彼とちゃんと話したい…。

半月前、きちんと会って話すこともできなかった。そのせいで、杏里は未だにどこか宙ぶらりんの状態だ。

再会を期待して、メイクやファッションもどこかおかしなところがないか、気になってしまう。

今日は、これから増えるであろう結婚式のお呼ばれ用に新調した、YOKO CHANのドレスを着ている。ピンクとブラックで悩んだ末、ブラックを選んだ。

同期の女友達数人と二次会の会場に入ると、スーツ姿の純の姿はすぐに目に入った。彼は懐かしいメンバーと輪になって、笑っている。

杏里に気がついた純が、こっちに向かって歩いてきた。

「杏里、来てたんだ」
「うん…」

なんとなく気まずい空気が流れる。同期たちはドリンクを取りにカウンターへバタバタと行ってしまい、その場には二人だけが残された。

「ドレス、この前、色悩んでたやつ?ブラック、大人っぽくていいじゃん」

「うん。ねえ、電話のこと…」

「杏里、ごめん。もう話すことないよ」

純はピシャリと告げ、元の輪の中に帰っていった。背後からは、同期の女たちの囁き声が聞こえる。

「ねえ、あの二人別れたらしいね。ってことは、純さんって今フリーなの?狙っちゃおっかな♡」
「すぐにはやめなよー、杏里の元カレなんだから」

—「元カレ」かあ…。

純の背中を見つめながら、ようやく気がついた。もう純は「元カレ」で、他人なのだ。

ようやく現実を受け止めた杏里。そして彼女は動き出す…!

何も知らない同期のうちの一人が、杏里の肩をポンと叩く。

「そういえば、杏里もそろそろ純さんと結婚するの?」

杏里はとっさに笑顔を繕って、首を横に振った。

「あー、私、純と別れたんだ!」

「え…そうだったの?…勿体なすぎる。でもそれなら純さん家お金持ちだし、なんか家同士のお見合いとかですぐに結婚しちゃいそうだね」

その言葉がぐさりと胸に突き刺さった。

だけど、きっと彼女の言う通り。純はきっと、そういう結婚のほうが向いている。

そして杏里は、純の求めるような女にはなれないのだ。

同期は励ますように、杏里に微笑みかける。

「これが23歳とかならまだあれだけど、もう26だから色々考えちゃうね…。っていってもまだ20代。いくらでももっといい男がいるって」


新婦の莉奈と新郎が入場し、出し物やゲームが忙しなく行われ、賑わう会場。お酒も入って盛り上がった人たちは楽しそうに騒ぎ、カメラのシャッター音が響き合う。

「杏里ちゃん。久々」

二次会も終盤に差し掛かった頃、声をかけられて振り返ると、純と同期の男性がいた。

「わー、超お久しぶりじゃないですか!元気ですか?」

「ぼちぼちかな。杏里ちゃん、純と別れたんだって?今度、俺とデートしようよ」

「そうなんですよー。別れちゃって。…ぜひ、今度行きましょ」

束縛の激しい純と付き合っていた頃は、こんな風に声をかけられることなんて有りえなかった。乗り気な返事をしたことを純が知ったのなら、間違いなく面倒臭い喧嘩になる。

—デート、か。

純と付き合っていた間、人数合わせの食事会に行くくらいだった杏里は、久々に恋愛市場に放り出されたことを実感する。

同時にさっき同期から言われた言葉が、脳裏をよぎった。

『まだ20代。いくらでももっといい男がいるって』

—そうよ…。まだ悲観的になる必要なんてない。

純のようなスペックの男に、簡単に出会えないことはわかっている。だけどそんな彼と一緒にいるためには、犠牲がついてくるのだ。

最高の安泰と、自分自身の自由は、トレード・オフ。それが結局、杏里のたどり着いた結論だった。



二次会の帰りは、先ほど話した同期や他の子達と一緒になった。

「ねえ杏里。元気だしてね。次の男いこ、次!」

杏里もにっこり笑って頷く。

「ね、次だよね次!ねえ誰かいい人いないー?紹介してよー♡」

「杏里さすが、切り替え早い!」

本当に何も気にしていないかのように軽く明るくそう返すと、食事会しようよ、とさっそく日程調整が始まる。女子とはこういうものだ。

そして、同期たちに手を振って別れた帰り道。街の風景から明らかに1人だけ浮いたドレスアップ姿で、ため息をつく。

ー誰かをまた、0から見つけなきゃいけないのか…。

杏里はギュッと拳を握り締めると、「絶対に幸せになってやる」と心に誓うのだった。


▶Next:4月3日 金曜更新予定
久々に恋愛市場に繰り出す杏里。どんな男が正解なのか?

画像をもっと見る

関連リンク

  • 3/27 5:03
  • 東京カレンダー

スポンサーリンク

記事の無断転載を禁じます