なぜ人はSNSで正義を振りかざすのか。鴻上尚史氏に聞く

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 運転士が乗務中に水を飲めば「仕事中なのに」と言い立て、警察官や消防士が日中にコンビニに寄れば「公務員が!」と憤り、コンビニ店員同士が談笑していたら「職務怠慢だ」と鬼の首をとったように主張する。

 狭量なのか、暇なのか。何にイライラしているのか。その理由はわからないが、些細なことに「正しさ」を主張する人の声が、なんだか最近、喧(かまびす)しい。

◆「正義を振りかざす人」は何がしたいのか

 週刊SPA!連載「ドン・キホーテのピアス」で、世間の息苦しさを指摘してきた劇作家の鴻上尚史さんも、「クレームの時代と言われるけれど、ここまできたかと思うよね」と語る。

「SPA!の連載でも書いたけれど、苦情・クレームと言っても、真っ当なクレームがあれば、金品の要求が目的の場合もある。そしてもうひとつが、『俺の話を聞け』『俺をないがしろにするな』という思いがクレームになっているケース。このタイプが増えているような気がして、極めて現代的だと思う」

 その背景には「みんながスマホを手にし、SNSを通じて自己主張ができるようになったのが大きいのでは」と鴻上さん。

 SNSをはじめれば、自然と「いいね」やフォロワーの数を意識せざるを得ない。「1000RTなんてされると、そのときの感覚は麻薬に近い」もの。
 しかし、自身のなんでもない日常をつぶやいても、誰も相手はしてくれない。映画やアニメのうんちくを語っても、論破されるだけ。でも、正しさは誰も真正面から否定できない。こうして、正義が振りかざされるというわけだ。

「ツイッターで『今日もストリートライブを行う違法者がいました』って、つぶやいている人がいるんだけど、おそらく『ストリートライブくらい、別にいいじゃないですか』なんてリプライを、手ぐすね引いて待っているんだと思う。どんな反論がきても、『あなたは法律に無視して生きているんですか』と、100%言い返すことができるから。
 絶対的に揺るがないものに乗っかって自己主張をするのって、やっぱり自己肯定感なんだと思う。自分の存在理由や存在価値を確認したいんだろうね」

 何者でもない自分が、何者かであるかのように思わせてくれるのが“正義”のふるまい。かくして、「ソーシャル・ジャスティス・ウォーリアー(Social justice warrio:社会正義戦士)」が生まれるというわけだ。

◆炎上してもツイッターをやめない理由

「今、ファンタジーなSFドラマがあまり流行らないのは、『こんなこと有り得ない!』といったクレームがくるから。こうした苦情を言う人のことを“物理警察”って呼ぶらしくて。英語では“戦士”なんだけど、日本では“警察”って言うのはおもしろいよね。
 まぁ、戦士でも警察でも、苦情を言う人もめぐりめぐって、自分で自分の首を絞めているわけで。いったい、どこに行くんだろうって思いますわな」

 SNSによって民の声は可視化された。それ自体は悪いことではないが、いまだ、新しいこのメディアに慣れていないということか。
 鴻上さんも“警察”に絡まれて炎上することもしばしば。ときに凹むこともあるそうだが、それでも、ツイッターはやめられないという。

「なんやかんや言っても、情報をつなぐ、人間をつなぐメディアとして、ツイッターのよさを信じているんだよね。1万人に背後から撃たれたとしても、10人位から『おぉ!』と思わせてくれる言葉が届く。それを手放すのは、やっぱり惜しい。

 “正義”でもなんでも、当たり前に対する違和感を伝えていくのも、僕がいろんな形で表現をやっている理由でもある。まだまだ犬や猫の動画しか見ないってほどには、うちひしがれてはいないぞ、っていうプライドはあるわけで(笑)」

◆住民クレームに悩まされる“正義の味方”

 そう語る鴻上さんの新作舞台『地球防衛軍 苦情処理係』(東京:11月2日~24日、大阪:11月29日~12月1日)は、まさに“正義”を問う物語だ。

 住民の暮らしを守るため、怪獣や異星人と戦う地球防衛軍やハイパーマンは正義の味方。しかし、彼らは殺到するクレームの数々に思い悩まされる。

「怪獣に踏みつぶされたんなら、納得するよ。でも、俺の家は、地球防衛軍のミサイルで壊されたんだぞ。それはおかしいだろ!」
「怪獣の被害に火災保険がおりないってのはどういうことだ!」etc.

 怪獣に仮託したのは、地震や津波などの人間の力の及ばないもの。そこに、ルールや人の思いがからみ、“正義”は揺らぐ。

 舞台のフライヤーには「これは絶望と希望の物語です」という鴻上さんの言葉がある。息苦しさに押しつぶされそうなこの国に、どんな希望を見出せるのか? その答えは劇場で――。

<取材・文/鈴木靖子>


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  • 10/21 15:49
  • 日刊SPA!

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この記事のみんなのコメント

21
  • 快盗百面相

    10/24 9:23

    ついでに浮気もしてましたね(笑)

  • トリトン

    10/24 2:31

    有りましたねその怒ったら当人ウルトラマンヒカリになりましたね建物壊してたしね(笑)

  • 南 光太郎

    10/23 12:00

    ウルトラマンですか。『ウルトラマンメビウス』の第1話だったと思いますが、こんなシーンが出てきます。怪獣を倒したものの、街はめちゃめちゃになってしまった。そんなウルトラマンメビウスの戦いを見ていた防衛隊GUYSの一員が「バカヤロー、こんな戦い方があるか!」とメビウスを一喝する、という…。中々斬新でしたよ。

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