なんというチャレンジ「令和元年版 怪談牡丹灯籠」尾野真千子が上白石萌音を追い出す?

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いきなりだが、世にあまたある創作物のなかで、もっともかっこいいタイトルのひとつが「牡丹灯籠」だと思っている。女の幽霊が愛する男のもとへ夜ごと通う、あの怪談噺だ。三遊亭圓朝によってつくられた落語「怪談牡丹灯籠」は、全21章からなる超大作。圓朝自身は15夜かけて語ったと言われている。カランコロンと下駄を鳴らして幽霊がやってくるあのシーンは、ごく一部分にすぎない。仇打ちを軸とした約20年にわたる物語全体を知れば知るほど、そのタイトルに「牡丹灯籠」をピックアップしたセンス! と感動するのだ。

で、『令和元年版怪談牡丹灯籠』(NHK BSプレミアム 毎週日曜22:00〜)だ。この長い物語全編を全4回で「完全映像化」するという、ひそかにチャレンジングなドラマ。

第1話の冒頭、飯島平左衛門(高嶋政宏)が、刀屋で出会った浪人・黒川孝蔵(神尾佑)を些細なことで斬り殺す。20年にわたる物語の発端、シリアスなシーンだ。けれど、刀屋の主人にレア刀があると聞かされ興奮している平左衛門の顔とか、浪人と対峙しながら「斬りたい! 斬ってみたい!」と素直すぎる心の声とか、これ、笑っていいところじゃないだろうか?  脚本・演出を手がけたのが、単発ながら話題を集めた『スローな武士にしてくれ』の源孝志と聞けば、その思いは確信に近くなる。
そしてこのアレンジだけで、「令和元年版」ならではの牡丹灯籠を作ろうとしている姿勢が伝わってくる。筋は変えず、登場人物それぞれのキャラクターを膨らませていくことで、ドラマの面白さを生み出そうとしているのだろう。

ピュアVSアダルト。二つの恋のはじまり


この物語には、3組のカップルがいる。
まずはお露(上白石萌音)と萩原新三郎(中村七之助)。ご存知「牡丹灯籠」の二人だ。新三郎は女っ気がなく、親の遺産で本ばかり読んでいる文化系浪人。お露は平左衛門の娘で、「刀と槍で仕えてきた」マッチョな家柄でありながら、文系好き。
そんな二人が出会った瞬間見つめ合い、恋に落ちる。まるで少女漫画のような出会い。お露が「また来てくださらなければ死んでしまうやもしれません」と言い出すのも、ピュアゆえの暴走だ。でもこの後に死んじゃうし、幽霊になっちゃうんだもんな。思えば上白石は「ピュアすぎて重い」女にぴったりかもしれない。

この二人の美しい出会いの直後にお国(尾野真千子)と宮辺源次郎(柄本佑)のシーンがあるのが憎い。お国は一介の女中にすぎなかったが、平左衛門に取り入って側室になり、お露を屋敷から追い出す。源次郎は飯島家の隣の家の、ぼんくらな次男。二人の視線の絡ませ方はねちっこいというか、含みがあるというか、淫靡さえ感じさせる。意外にもまっすぐな源次郎と、すでに次の策略を考えていそうなお国、それぞれの表情!

こうなってくると3組めのカップル、孝助(若葉竜也)とお徳(石橋菜津美)だけが心の安らぎだ。平左衛門が黒川を殺して20年後、黒川の息子である孝助は、父の仇と走らず平左衛門のもとへと仕官を求めてやってくる。平左衛門は気づきつつ受け入れる。お徳は平左衛門と旧知の侍・新五兵衛の娘。わしわしご飯を食べる孝助を好もしく思うお徳のシーンがかわいい。せめてこのカップルには幸せになってほしい……。

七之助演じる新三郎のかわいさ


15夜かけて上演された長く複雑な作品をどうやって4時間半に? と心配していたけれど、いまのところ驚くほど丁寧にそれぞれの心情を描いていて、新鮮に面白い。今夜放送の第2話では、早くもというか、いよいよというか、お露が新三郎に「焦がれ死に」するシーンがやってくる。ひとつのクライマックスを、上白石萌音はどう演じるのだろう。尾野真千子&柄本佑カップルがひたすら悪の道へと落ちていく姿もしっかり見届けたい。

そうそう、最後になってしまったけれど、中村七之助の存在は、このドラマの見どころのひとつだろう。たまたま三遊亭圓生役で登場した『いだてん』が放送されたばかりだが、彼がテレビドラマに出るのはかなり珍しいこと。しかも、七之助は歌舞伎で新三郎とお露の両方を演じた経験をもっている(さらに新三郎の下男の妻・お峰も!)。第1話ではお露からの手紙に浮かれたり、友人・山本志丈(谷原章介)に「お主などにわしのこの気持ちはわからぬ!」と駄々をこねたりとかわいさを炸裂させていた。このかわいい新三郎がせめて今夜までは見られたらうれしいのだけど。
(釣木文恵)

令和元年版 怪談牡丹灯籠
出演:尾野真千子、柄本佑、若葉竜也、中村七之助、上白石萌音、高嶋政宏、戸田菜穂、谷原章介、ほか
脚本・演出:源孝志
プロデューサー:川崎直子、石崎宏哉
制作統括:千野博彦、伊藤純、八木康夫
語り部:神田松之丞
原作:三遊亭圓朝『怪談 牡丹灯籠』
音楽:阿部海太郎
制作:NHKエンタープライズ

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