「やすらぎの刻~道」人の不幸には回春の効果が…噂話とゴシップで大喜びする老人たち第11週

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倉本聰・脚本「やすらぎの刻~道」(テレビ朝日系・月~金11時30分~)第1週。

太平洋戦争が開戦し、緊張感が高まる「道」パートから打って変わって、今週は老人たちのゆる~い日常を描く「やすらぎの刻」パート。

「道」では、戦時色が強くなってくる中、村民や家族同士での密告が横行していたが、「やすらぎの刻」の老人たちも密告や噂話で大盛り上がり。

戦時中のギスギスした密告とは違い、現代の密告&噂話はヒマな老人たちの娯楽でしかないが。

愉快な認知症老人が登場


「やすらぎの郷」に久々となる新入居者がやって来た。往年の大物女優・桂木怜子(大空眞弓)だ。

松竹蒲田で一世を風靡し、テレビ初期のよろめきドラマでブレイク。その後、ギリシャに移住して船舶王と結婚するも、船舶王の破産と共に名前を聞くこともなくなり、死亡説まで流れていたという、若干、デヴィ夫人っぽい経歴を持つ桂木夫人。

かつて「視聴率の女王」「ヨーロッパ社交界の華」とまで呼ばれた大女優は、今や仕事も金もなく、認知症が入った老人となっていた。

前作「やすらぎの郷」での及川しのぶ(有馬稲子)や、菊村栄(石坂浩二)の亡き妻・律子(風吹ジュン)、そして今作で亡くなっていったマロ(山本圭)など、シニア向けドラマだけに、認知症のキャラクターが数多く登場しているが、これまではいずれも悲劇的に描かれていた。

しかし、今回登場した桂木夫人はだいぶ愉快なボケ方をしている。

意識しているのか偶然なのか、月・水・金だけキッチリとスケジュール通りにボケて、異常なまでの長話で、強者・水谷マヤ(加賀まりこ)や白川冴子(浅丘ルリ子)まで辟易とさせる。

それ以外の曜日には「一点の非もない貴婦人の姿」で、かつての大女優の風格を漂わせているものの、引っ越しのあいさつとして持ってきた贈り物は、高級和紙と箱で包装された100均グッズという愉快さ。

この、桂木夫人の贈り物の回が、100均グッズを紹介する通販番組のようになっていたのには笑った。スナック菓子の袋を再び密封できる超便利な「簡単密封シーラー」が100均ショップで売られているなんて、この手の店にあまり行きそうにないシニア層にとっては衝撃だろう。

これまで、袋の口を輪ゴムで止めてきたであろうシニアの生活に革命を起こすかも知れない!? ……なんて有用な番組なんだ!

それはともかく桂木夫人、「やすらぎの郷」の面々を引っかき回してくれそうないいキャラなので、今後の活躍に期待。

人の不幸には回春の作用が……!?


かつての栄光を失い、無残に歳を取った桂木夫人と同様、ものすごく格好いい存在だったはずの秀サンこと高井秀次(藤竜也)のポジションも、だいぶ変化している。

前作での登場当初は、高倉健をモチーフとしたであろう、男も惚れる男だったのに、今作では死にかけた人の顔のシワに妙なフェチ心を刺激されて絵を描き続けたり、緊急地震速報を聞いて逃げ出したり、完全に面白キャラ!

秀サンのこのマヌケ行動に、菊村栄は大喜びする。

「いつもかなわないと思っている人間、手の届かないと思っていた人間に、思いもしなかった欠陥を見つけた時。これはワクワクする。心が躍る!」

心の声とはいえ、なんて正直なことを。同様に、テレビのニュースを見ていても、

「不倫がバレたとか、不祥事が起きたとか、有名人がとっ捕まったとか、そういう、いわゆる不幸な報道は老人の心に意味なく明かりをともし眠っていた情熱を活性化させる。人の不幸は蜜の味。恥ずべき事だが回春の作用が……」

とのこと。

本作+「徹子の部屋」前後を挟むように放送されている「大下容子ワイドスクランブル!」視聴者の心を言語化したような、正直な意見!

その時、歌舞伎界のプリンス・竹芝柳介(関口まなと)が大麻所持の容疑で指名手配されたというニュースが流れる。

一緒に大麻を使用していたと思われる恋人(?)の女優・広中しのぶ(黒川智花)は既に逮捕されているという、最近起こった例の事件を思わせるニュースだ。制作時期を考えると偶然だとは思うが……。

ちなみに黒川智花は、小嶺麗奈と同様、「3年B組金八先生」に出演していたぞ!

倉本聰の出演者いじりも絶好調


人気俳優&女優の不祥事ニュースで、無責任にウキウキする老人たちだったが、なんとこの事件には「やすらぎの郷」が深く関わっていた。

お嬢こと白川冴子が、自分のヴィラに指名手配中の竹芝柳介をかくまっていたのだ。

エロ~い展開にしては、いっくらなんでも相手が若すぎるだろうと思いきや、実は竹芝柳介はお嬢の孫。

若かりし頃、竹芝柳介の祖父・二代目竹芝柳翁と愛し合ったものの、梨園からの圧力で別れさせられた。しかし、お嬢はその時にすでに柳翁の子どもを身ごもっていたのだ。

「やすらぎの郷」創設者でもある加納英吉の手引きでアメリカに渡って子どもを産んだお嬢だったが、子どもはそのまま連れ去られ、柳翁の子として育てられることになった。その時の子が竹芝柳介の父親なのだ。

波瀾万丈な人生!

しかしこのエピソードを、石坂浩二との離婚理由のひとつに「子どもが欲しいと言われた(女優の仕事を辞めたくないので、子どもを産みたくなかった)」ことを挙げている浅丘ルリ子に、当の石坂浩二に向かって語らせるとは、倉本聰も意地が悪い。

ちなみに竹芝柳介を演じている関口まなとは、「道」パートでニキビを演じていた関口アナムの弟。そしてふたりの母親は、「北の国から」などで倉本聰とも縁の深い竹下景子だ。

大麻所持で指名手配された歌舞伎界のボンボン。しかも大女優の隠し子だった設定の役を、リアル・大女優の息子にやらせるとは意味深なキャスティングだ。

竹芝柳介に自首するよう説得する役を頼まれた菊村が、自分ひとりでは荷が重いと協力を仰いだのが秀サンだったが、同じ歌舞伎界の名門出身の水沼六郎(橋爪功)に頼む方が自然だと思うが……。

橋爪功の息子・橋爪遼は2017年に覚せい剤取締法違反で逮捕され、前作「やすらぎの郷」を降板している。さすがの倉本聰も「違法薬物で指名手配された大物の子ども」を自首するように説得する役を橋爪功にやらせるのは気が引けたのか?

この騒動で、「道」を書いていた菊村の筆は止まってしまったようだが、倉本聰の筆は絶好調。老人のエグイ本音や、出演者いじりなど、「やすらぎ」はやはりこうでなくてはッ!
(イラストと文/北村ヂン)

【配信サイト】
・Tver

『やすらぎの刻~道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日

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