「皇位継承問題」で無視される安倍総理の意向/江崎道朗

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― 連載「ニュースディープスロート」<文/江崎道朗> ―

◆「皇位継承問題」で無視される安倍総理の意向

 忖度という言葉が流行した。安倍政権のもとで’14年に内閣人事局が創設され、各省の幹部人事を内閣が管理するようになったことから、官僚たちは政府の意向に逆らえなくなり、安倍総理の言いなりになっているという「噂」が吹聴されたのだ。

 しかし、安倍総理の意向など配慮されるどころか、まったく無視されたまま、ある重要な国家的課題が検討されている。それは、「皇位継承問題」だ。

 このたびの天皇陛下の譲位を可能とする「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が成立した際に次のような附帯決議が採択された。

「政府は、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について、皇族方の御年齢からしても先延ばしすることはできない重要な課題であることに鑑み、本法施行後速やかに、皇族方の御事情等を踏まえ、全体として整合性を取れるよう検討を行い、その結果を、速やかに国会に報告すること」(’17年6月1日、衆議院議院運営委員会)

 この決議を踏まえ、政府は「御即位された後」「そんなに時間は待たないで」検討を始める意向だ。

 実はこの皇位継承については、憲法と皇室典範においてこう定められている。

《日本国憲法第二条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。》

《皇室典範第一条 皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。》

 ところが現状のままだと「皇統に属する男系の男子」は秋篠宮家の悠仁親王殿下しかおられなくなる可能性が高い。

 そこで男系男子による皇位継承の原則を尊重し、占領下で臣籍降下された皇族の男系男子孫に皇籍復帰していただくか、それとも男系男子以外の皇位継承を認めるか、という2つの選択肢が議論されている。

◆皇室の伝統を変える気満々の内閣法制局

 これに対して安倍総理は「男系男子が古来例外なく維持されてきたことの重みを踏まえ、慎重かつ丁寧に検討したい」(’19年3月20日、参議院財政金融委員会)という答弁を繰り返している。

 ところが、だ。

 ’17年10月、内閣法制局は『憲法関係答弁例集』という冊子を作成し、天皇問題などについての見解をまとめているのだが、驚くことに、ここには男系男子による皇位継承を重んじてきた歴代政府の見解、特に安倍総理の答弁は一切掲載されていない。

 代わって、近年の答弁では、横畠裕介内閣法制局長官の次の答弁だけが掲載されている。

「皇統と申しますのは、天皇の血統、血筋ということでございます」(’17年6月1日、衆議院議院運営委員会)

 要は天皇の血筋なら男系男子でなくとも(つまり女系でも)皇位継承は可能だと示唆しているわけだ。皇室典範改正論議に多大な影響力を発揮する内閣法制局は、皇室の伝統を変える気満々とみるべきだろう。果たして内閣法制局の暴走を安倍総理は止めることができるだろうか。【江崎道朗】’62年生まれ。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『日本は誰と戦ったのか』(ベストセラーズ)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)など



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