杉咲花「ハケン占い師アタル」苦しみを転換する言葉「世界中は平等に不公平」5話

拡大画像を見る

2月14日に『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)の第5話が放送された。

家族と会社に追い詰められる田端


ドラマが始まって数分。ほんの少しオフィスの風景を見ただけで、空気が良くなっていることがわかる。アタル(杉咲花)に占われた者が多くなる程にだ。死んだ目をしていた品川一真(志尊淳)はキラキラしているし、手強かった上野誠治(小澤征悦)ももうすっかり仲間。そんな中、1人だけ怖い存在がいる。田端友代(野波麻帆)だ。

なぜ、彼女はこんなピリついてるのか? いくつか理由はあるが、その内の1つに「家庭」が挙げられる。田端は5年前に早期退職した父とニートの弟との3人暮らし。生活は全て自分の稼ぐ収入が頼りだ。加えて、家事も一手に引き受けている。田端が会社へ行き、帰宅すると、朝腰を下ろしていたソファの位置から一歩も動いていない父と弟がいた。依存されてばかりいたら、自分を守るためにキツくなってもしょうがない。

会社に行っても色々とある。部長の代々木匠(及川光博)に連れられ出席した大学OB会では、クライアントからセクハラ発言を連発され、知らない男からはいきなり肩に手を回された。田端は、抑えていたものが一気に出てしまった。
「お願いだから、もう放っといてくんないかな。それでなくても、女は……大変なんだから! 生理とか、ダイエットとかムダ毛抜きとか爪の手入れとかストッキングの伝線とか外反母趾とか美容院の予約とか肩凝りとか親父の加齢臭とか上司のハラスメントとか家事を一切手伝わない家族とかで!」

矛先は同僚にも向いた。上司と部下の板挟みに遭う大崎結(板谷由夏)に言い放つ。
「上司にも部下にもソフトで優しいけど、仕事ができない男どもにはっきり物が言えないから、結局そのツケが全部回ってきて、そのせいで私たちのチームがどんだけ迷惑してるかわかってますよね?」
苦しみを抱え過ぎてキャパオーバーになり、ブチ切れ、言い過ぎた。そして、自ら居づらい空気を作ってしまう。まるで、前回の上野誠治(小澤征悦)のデジャヴだ。

会社帰りにカフェへ立ち寄ることを、田端は1日の楽しみにしている。顔見知りのイケメン店員に恋をしているのだ。家にも会社にも追い詰められ、カフェしか心が休まる場所がない。ある意味、現実を忘れさせてくれる時間。田端がカフェにいるときだけ画面に靄がかかる。会社にいる田端と声が全然違う。イケメン店員にふと見せる笑顔が可愛い。
でも、この夢見心地の場所がなくなってしまいそうだ。意中のイケメン店員が医師の国家試験に専念するため退職するというのだ。たまらず、田端はイケメン店員を呼び止めた。
「あの、もしよかったら! ……あぁ……ううん。なんでもない。お元気で……」(田端)

行けばいいのに。行くべきだった。でも、30代の女性がカフェスタッフに告白するなんて、とても勇気のいること。さらに、彼は医大生だ。足がすくむ気持ちもわかる。

アタルに占われた同僚が田端を救おうとする


アタルはこれまで、神田和実(志田未来)→目黒円(間宮祥太朗)→上野→品川の順番で占ってきた。この順序には意味がある。田端よりも先に上野が占われていてよかった。まだ上野が占われていなかったら田端と揉めに揉め、修羅場になっていたはずだから。

このドラマは、前回アタルに救われた者がキーマンになる。その回の主役に“きっかけ”を与える役割を担う。
「アタルに……占ってもらったらどうだ? アタル、すげえ能力持ってるから、お前の悩み解決してくれるぞ、きっと。お前さ、このままだとみんなびびって誰も傍に近付かなくなるぞ、ちょっと前の俺みたいに」(上野)
いくらプライベートで色々あっても、それは会社の人間にとって関係のないこと。残酷なことを言えば、他所での鬱憤をオフィスに持ち込まれても迷惑なだけ。でも、田端の同僚は心配してくれる。やはり、占われる順番には意味があった。

みんなから気を掛けられ、逆に田端の苦しみは決壊した。
「占いならいくらでも今まで試したわよ。色んな本も読んだし、ゲン担ぎだってしたし、改名だって考えたし。パワースポットにも行ったし、変なセミナーにも参加したし、四つ葉のクローバーだって探したし、色んな婚活サイトにも行ったし、婚活英会話教室や料理教室合コンも行った。……けど、いい事なんて一つもなかった! もう、疲れた……、幸せ見つけるの(泣)」
職場での合理的な姿とニートな父弟を養う日々。優秀な仕事ぶりと恋愛偏差値の低さ。強さと弱さ。隠し持っていた苦しみを、彼女は隠し切れなくなった。

泣いている田端の前に、アタルが戻ってきた。
「スマホ忘れたんで」(アタル)
「どうしたらいいの、私?」と頼ってくる田端に「わかりました、あなたを見ます」と即答するアタル。スマホを忘れたなんて、そんなあからさまな嘘を……。

「世界中のみんなが平等に不公平」


アタルは田端を占った。その内容は、以下の4つの言葉に集約されると思う。
「幸せなんて周りと比べても意味がない」
「世界中のみんなが平等に不公平」
「私たちはこの不公平な世界で生きてくしかない」
「幸せは待ってるものじゃなくて自分で作るもの」

いつも、アタルは当たり前のことを言う。でも、この言葉を受け止めるか否かで生き方は全く変わってくる。
田端はいつも正論である。でも、他者(大崎など)の事情を理解せず正論を主張し続けていると、必ず誰かと衝突する。だが、「なぜ自分が……」と思うことをやめれば当たりは柔らかくなるはずだ。実は美人で、仕事も優秀な田端。自分の運命を呪い、自らの魅力を隠し、自分を損に追い込んでいたらもったいなさ過ぎる。

イベントから戻ってきた同僚を、田端はねぎらった。もう、とっくに定時を過ぎているのに。田端はみんなの前で笑顔を作ろうとし、率先して飲み会に参加しようとした。頑張っている。普通、いきなりこんな素直にはなれないと思う。次回の田端がどんな人になっているのか楽しみだ。

相手の過去と同化する意味


田端を相手に占ったアタルの熱量は、とりわけ高かった。

「言っとくけど、世の中不公平なのが当たり前だから。世界中のみんなが平等に不公平なの。私たちはこの世界で、この不公平な世界で生きてくしかないの! 自分の運命を呪ったって意味ないの! 生まれ変わることなんかできないんだから」

占いにしては、大きな感情を注ぎ過ぎだと思う。他者への忠告に収まる温度ではない。特に、上記の言葉を発した瞬間。アタルは明らかに自分と重ね合わせていた。
田端もアタルも家族からの呪縛と闘っている。でも、アタルは運命を呪わない。アタルは、いつも「はい、喜んで」と返答する。“不公平な世界”を幸せに変換しようとしている表れではないのか。

今までに5人の同僚を占ったアタル。神田には「誰にでも自分にしかできないことが必ずある」、目黒には「少しは大人になれよ!」、品川には「逃げてばっかりいる奴に自分の居場所なんか見つかるわけない」、上野には「あんたを心配してくれる人は周りにいる」、田端には「世界中のみんなが平等に不公平」と助言した。よく考えると、全て、アタルにも当てはまる言葉なのだ。
占いの最中、アタルは相手の人生に入り込む。そして、過去の相手に乗り移る。この瞬間に、アタルは相手と自分を重ね合わせる。助言が彼女自身にも当てはまるのは当然だ。

素性を聞かれた際、アタルは「それについては言いたくありません」と跳ね返すのが常だった。なのに、今回は「母は私と違ってとても強い人です」と明かした。母の記憶に囚われる田端に質問されたから? 少しずつ、アタルの苦しみが露わになってきた。

アタルの母・キズナ(若村麻由美)は「苦しんでいるのはあなただけじゃない」と、いつも相手を励ましてあげる。一方、いつも相手を突き放すのがアタルだ。アタルが田端に授けた「周りと比べても意味がない」と、キズナの「苦しんでいるのはあなただけじゃない」は完全に正反対である。
母と娘は、どう考えても水と油だ。家族という足かせとアタルは闘っている。最も助けを必要としているのはアタルだと思う。
(寺西ジャジューカ)


木曜ドラマ『ハケン占い師アタル』
脚本:遊川和彦
主題歌:JUJU「ミライ」(Sony Music Associated Records)
音楽:平井真美子
ゼネラルプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:山田兼司(テレビ朝日)、山川秀樹(テレビ朝日)、太田雅晴(5年D組)、田上リサ(5年D組)
演出:遊川和彦、日暮謙(5年D組)、伊藤彰記(5年D組)
制作協力:5年D組
制作著作:テレビ朝日
※各話、放送後にビデオパスにて配信中

関連リンク

  • 2/21 9:00
  • エキレビ!

スポンサーリンク

記事の無断転載を禁じます