ラッセン×怪獣大戦争「アクアマン」引き算一切なし、観る版いきなりステーキの過剰に度肝を抜かれろ

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『アクアマン』、本当にとんでもない映画である。現状世界一の足し算というか、見るいきなりステーキというか、ラッセン大戦争というか、そういう映画だ。何を言っているかわからないと思うのでこれから説明します。

まるで前菜から焼肉のコース料理! 引き算一切なしの魚介大戦争ムービー


アクアマンは、スーパーマンやバットマンやワンダーウーマンが活躍するDCコミックスのユニバースに所属するヒーローである。初出は1941年の『More Fun Comics』誌73号なので、今年で誕生から78年ということになる。その正体はアトランティス王国の王女アトランナと魔術師アトランの間の子オリンであり、イルカのポームに育てられた後に灯台守のアーサー・カリーに拾われ、養父と同じアーサーという名を名乗るようになった……という設定だ。成長後はアトランティスの王となり、地球の海中の大半をその手中に収めている。

映画の『アクアマン』ではそのへんの設定はけっこう変更されている。アクアマンことアーサーは灯台守のトム・カリーと政略結婚から逃れて地上に現れたアトランティスの王女アトランナとの息子という設定に改変。アーサーと名付けられたものの、母アトランナがアトランティスの追跡から息子たちを守るため海中に帰って以降は、人間の子供としてトムに育てられたということになっている。ちなみに、この映画は一応DC・エクステンデッド・ユニバースというDCコミックスのユニバース映画シリーズに含まれる作品だが、『アクアマン』単品で見ても全然平気な親切設計だ。

半分は人間ながらアトランティスの王族の血を継ぎ、超スピードで海中を泳げるアーサー。今日も今日とて謎のトレジャーハンターに襲撃された潜水艦を救助する。しかし海中ではアトランティスの王を自称するアーサーの異父弟オームがオーシャンマスターを名乗り、地上への侵攻を画策。手始めにアトランティス以外にも「甲殻類の国」とか「魚人の国」とか色々ある海底の国を屈服させ、全戦力をまとめ上げて地上へと攻撃を仕掛けようとしていた。

海底国ゼベルの王女であるメラはこの事態を憂慮し、オーム以外で唯一アトランティス王の血を引くアーサーと接触。正統な王としてアトランティスへと戻り、オームを倒すよう要請する。そこまで乗り気ではなかったものの、実家のトラブルということで渋々承諾するアーサー。とりあえずオームに挑むもののいきなりではうまくいかず、正統な王であることを証明する三又の槍を手に入れるべく世界をめぐる旅に出かけることになる。

本当に恐るべき映画である。まずド頭の掴みで二コール・キッドマンがグルグル回るカメラの中で槍を振り回し、ジェイソン・モモアが潜水艦を素手で持ち上げる(本当に言葉通りの意味で、潜水艦を素手で持ち上げるのだ)。あなたは素手で潜水艦を持ち上げたことがありますか……と客の度肝を抜くのだが、正直ここまでは「なるほどこういう掴みね〜」とおれも余裕をぶっこいていた。

しかし、『アクアマン』が凄まじいのはここからである。潜水艦を持ち上げてからのアクションが、常に足し算の連続になるのだ。つまり、数分前のアクションシーンから次のアクションシーンに移った時に、テンションや画面内の要素の総量が上がることがあっても下がることがない。ビームを撃ったら山が吹っ飛び、不意打ちの爆発が何度も繰り返される。天丼爆発である。

おまけにアクションの間隔が短く、見せ方や内容も手を替え品を替えの大盤振る舞い。合間合間にアーサーの回想を挟むことで彼の出自をサラッと解説しつつ、『グーニーズ』や『インディ・ジョーンズ』シリーズを思わせるような宝探しパートもあり、それでいてめんどくさい移動シーンとかはうまく省略する。140分を超える長丁場なのに寸時もダレるタイミングがない。

もうこれ、前菜から焼肉が出てくるコース料理みたいな映画である。見るいきなりステーキというか、画面に出てくるメニューが全部肉。上映時間中常に肉を食い続けるような、肉マラソン映画だ。内容自体は「戦う磯丸水産」みたいな、魚介類ばっかり出てくる映画なんだけど……。

付け加えるならば、主演のジェイソン・モモアが非常にチャーミングである。あの人は自分がけっこうかわいいということを十分自覚している感じがするし、おれは自分がけっこうかわいいと自覚している巨漢が好きである。ぶっきらぼうだけど、実は頼まれれば記念写真だってノリノリで撮っちゃう熱血漢の快男児という見た目のまんまのキャラクターを、モモアは男臭さと磯の匂いを振りまきながら快演していた。モモアのアクアマン、磯臭そうな感じがしていいですよね……。

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1から10まで過剰な『アクアマン』だが、もうひとつ過剰なポイントとして、壮絶な情報量の絵作りがあげられる。主な戦いの舞台は海中なので、敵味方が水中に浮かびつつ高速でぶっ飛びながらぶつかり合う。この「戦闘自体が水中で行われているということにすれば、生身のキャラクター同士が『ドラゴンボール』みたいな空中戦をやってもイケる」という発想は、『アクアマン』のひとつのキモである。

で、この海中の絵面が、なんだか異常にキラキラしている。極彩色なのである。マリンブルーの海を泳ぎ回るキラキラした魚群……。あの絵面はどこかで見たとことがあるな……と思ったのだが、家に帰る途中の電車で「ラッセンの絵だ……」と思い至った。バブリーでギラギラした、気弱な男性がリトグラフとか買わされちゃうあの絵、『アクアマン』の絵作りのスピリットは、恐らくラッセンとつながっている。

しかし『アクアマン』の内容は、ラッセンのピースフルできらびやかな画風とはだいぶズレがある。なんせ『アクアマン』は戦う磯丸水産であり、竜宮城で第三次世界大戦が勃発するような映画である。バイクのように海中を疾走するクソでかいタツノオトシゴとか、全てを破壊する超巨大なカニとか、太鼓を叩きまくるタコとか、そういうのが山ほど出てくる。おまけに前述のように、『アクアマン』製作陣には引き算という概念がない。上映時間中、常に過剰な足し算だけが繰り返される。

その結果何が発生するかというと、ラッセンの絵のあの描き込みの情報量とキラキラ感のまま、画面に登場する異常な魚介類がシーンを追うごとに増え続け、そのまま画面全体でグニグニ動きまくりながら一大怪獣バトルにもつれ込むという事態になってしまうのだ。まるで深夜のドンキが5万軒束になって攻めてきたような絵面というか、デコトラ10万台の初日の出暴走というか……。多分人類の誰も見たことがないし、やろうとも思わなかったであろう絵面である。あんなものは初めて見た。もう、空いた口が塞がらない。塞ぐ必要もない……。

まさか作画がクリスチャン・リース・ラッセンの怪獣大戦争が見られるとは、さすがに思っていなかった。そういう意味で言えば、『アクアマン』は空前絶後の作品であり、今絶対に見ておくべき映画である。ただし、とにかく見た後クタクタに疲労するので、前日にはしっかり三食食べてちゃんと寝て、コンディションをバッチリ整えてから映画館に行くことをお勧めしたい。それだけの手間をかける価値はある一本だ。
(しげる)

【作品データ】
「アクアマン」公式サイト
監督 ジェームズ・ワン
出演 ジェイソン・モモア アンバー・ハード パトリック・ウィルソン ニコール・キッドマン ウィレム・デフォー ドルフ・ラングレン ほか
2月8日より全国ロードショー

STORY
半分人間でありながら、海底の王国であるアトランティスの王の血を継ぐアーサー。異父弟オームが地上への侵攻を企てていることを知った彼は、その企てを防ぐためアトランティス王の証である伝説の槍を求めて世界を旅することになる

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