坂口健太郎「イノセンス」被害者も冤罪に苦しむ。こんな視点のリーガルドラマは観たことなかった3話

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『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系)の第3話が2月2日に放送された。

今回、黒川拓(坂口健太郎)が弁護するのは、青ヶ島病院の医師の雲仙一彦(平岳大)。(関連)

手術中に人工心肺が停止し患者が亡くなった医療ミスの責任を問われ、執刀医を務めた雲仙が逮捕されたのだ。

窃盗や軽い傷害など、ごく身近で起こりそうな事件の冤罪を晴らしてきたのが今までの黒川。検察官の指宿林太郎(小市慢太郎)は黒川に宣戦布告した。
「医療関係の裁判で争うのは初めてですね。それに人が亡くなった案件で争うのも。簡単に勝てるとは思わないほうがいいですよ」

医療事故は落雷が原因で起こったのか


件の手術では、人工心肺のポンプが止まって数分間停止してしまうというトラブルが起こった。これは、2001年に東京女子医科大学病院で起きた医療事故ならびに隠蔽事件(通称「東京女子医大事件」)を下敷きにしているはずだ。事故の内容が似ており、病院側が記録を改ざんした事実も同じである。

そう、改ざんしているのだ。青ヶ島病院が作った内部調査報告書はデタラメばかりだった。報告書を見て驚く雲仙。調査書には、人工心肺が止まったのは雲仙の指示ミスによるものとされている。
「いえ。人工心肺は何の前触れもなく、突然、電源が落ちてしまったんです」(雲仙)

例によって、科学的な立証実験を行った黒川。結果、青ヶ島病院の逆流雷対策不備が明らかになった。大昔、雷が鳴ると安全のためにパソコンのコンセントを抜いていたと思う。逆流雷はそれと同じ原理である。
落雷があった日は青ヶ島病院内の洗濯機が止まった。周辺の家屋にも同じ現象が起こった。そして、同時刻に手術も行われていた。だから、人工心肺が止まったのだ。雲仙のミスではなく、病院のずさんさによって医療事故は起きたということ。よく、こんなことに気が付いたものだ。

内部調査書の隠蔽工作を行ったのは、雲仙の同期の医師・磐梯輝典(山本耕史)だ。
「おっしゃる通り、隠蔽工作は全て私が行ったことです。この病院を変えるためです。青ヶ島病院は多くの患者を抱えているが問題も多い。私が隠蔽を受け入れたのは人員確保や新規設備のための予算を得る約束を取り付けたからです。例え、同期を切り捨てることになったとしても、それが私の目的にとって最善の選択だと判断しました」(磐梯)

悪びれない磐梯。彼は彼で、正義に則った行動だという確信がある。

遺族の悲しみを弁護士は蒸し返したか?


結論から言うと、雲仙には有罪が下った。懲役1年、執行猶予3年。黒川は負けた。
「弁護人は、病院に設置する避雷器の不備による電気系統の遮断によって人工心肺能が停止したことが被害女性を死亡に至らせたと主張する。しかしながら、その主張は推測の域を出るものではなく、被害女性の死亡と避雷器の不備との因果関係を認めるものではない」(裁判長)

すごくモヤっとする。完璧であるはずの実験結果が「推測の域を出ない」の一言で片付けられてしまったのだ。証拠ではなく、ただの推測とは……。
弁護側の立場に立って文句を言わせてもらいたい。当日の逆流雷による現象を弁護側は説明できている。検察は「逆流雷と医療事故に因果関係はない」と証明しなければならないはずだ。加えて、医療事故が雲仙のミスによるものだと証明しなければならない。推定無罪の原則に完全に反しているではないか。「冤罪弁護士」として存在することのつらさと逆境を、黒川は思い知ったに違いない。

この判決に苦しみ、喘いでいる人たちが黒川の他にもいる。被害者の遺族である。被害者の母親は、黒川に詰め寄った。
「結局、娘が死んだ理由はどっちだったんでしょうか? 雲仙先生の責任なのか、病院の責任なのか、私たちは誰を憎んだらいいんですか!」
“憎しみ”の感情は、遺族の支えになる場合がある。それは否定できない。黒川の弁護には病院のずさんさを指摘する説得力があった。でも、判決を覆せなかった。病院に責任があると証明するには至ってない。雲仙は有罪だ。雲仙に非があるとも受け取れる。交錯している。結局、結論には程遠い。責任の所在があやふやなのだ。誰のための裁判だったか。

追い打ちをかけたのは、指宿検察官の黒川への言葉だ。
「あなたがやったことは余計なことだ。遺族の怒りの対象をブレさせて悲しみを蒸し返しただけですよ」
全く同意できない。冤罪を容認することで被害者の心情を慮れと言っているのと同じだからだ。真実を明らかにするための努力をするなと、指宿は吐き捨てている。しかし、憎しみの矛先に迷う遺族を見た黒川は言い返すことができなかった。

「もっと! ……もっと、確実な証拠を見つけていれば……」
見たこともないほど悔しさとやりきれなさを露わにする黒川。遺族の心情さえ背負ってしまっているからだ。雲仙の冤罪を勝ち取り「病院に責任あり」と証明できていれば、遺族が迷うことはなかった。

残された者は、どこに憎しみをぶつければいいのか? 職務を全うした結果、遺族に答えを提示できず、自責の念にかられている。こんな視点からの“リーガルもの”は、今までに観たことがない。

理工学部時代からの理解者で、科学者の立場から黒川をサポートする先輩・秋保恭一郎(藤木直人)は言った。
「弁護士なら負けることもあるだろう。いちいち気にしてても仕方がないな」
本当である。全ての感情を引き受けていたら、弁護士なんてとても務まらない。黒川は、つくづく弁護士に向いていない。見ていて心配になるのだ。

「科学的実証をして事実関係が明らかになったら、科学者はスッキリする。実証ができれば、それで終了だ。だが、裁判はそうはいかない。実証して冤罪を晴らしても、死んだ人間は生き返らない。遺族が喜ぶわけでもない」
今回の裁判を、秋保の言葉はそのまま総括している。冤罪弁護士の苦しみもである。
(寺西ジャジューカ)

『イノセンス 冤罪弁護士』
脚本:古家和尚
音楽:UTAMARO Movement
音楽プロデュース:岩代太郎
主題歌:King Gnu「白日」(アリオラジャパン)
参考資料:「冤罪弁護士」今村核(旬報社)
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:荻野哲弘、尾上貴洋、本多繁勝(AXON)
演出:南雲聖一、丸谷俊平
制作協力:AXON
製作著作:日本テレビ
※各話、放送後にHuluにて配信中

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