「ねぇ、もう一回キスしてもいい?」31歳バツイチ女が、年下男に迫られた時の正しい対処法

ーこの人と離婚して新しい人と再婚すれば、簡単に幸せになれると思っていましたー

これは、高い恋愛偏差値を誇る男女がひしめき合う東京で、

再び運命の相手を求め彷徨うことになった男女のリアルな”再婚事情”を、忠実に描いた物語である。

時間軸にシビアな女たち、女性に幻想を抱き続ける男たち。

そんな彼らが傷つき、喜び、自らが選んだ運命に翻弄されてゆく…

さぁ、では。彼らの人生を、少しばかり覗いてみましょうか。

夫の不倫によって離婚を決意した秋元カナ。

女友達に離婚パーティを開催してもらい何とか立ち直ったカナは、友人の亜美と食事会に繰り出す。そこで出会った男性とデートをするも、散々な目に遭ってしまうのだった。

灯台下暗し!?


「ね、秋元さん。秋元さんってば!」

「へっ?ああ、ゴメンなさい、ぼーっとしてた…」

月曜日、朝9:30のオフィス。

目の前でこちらにクリっとした瞳を向けているのは、後輩の中田悠介(29)だ。

ーねぇ…カナ。会社は?!身元もハッキリしてるし、付き合いも長いし、いい人いるんじゃないの?

先週末、友人・亜美が発したそんなセリフのせいで、カナはいつになく中田のことを意識してしまう。

彼は1年前同じ部署になってからというもの、何故かカナを慕ってくれ、先輩・後輩として数え切れないほどの平日ランチを共にしてきた。

それになぜか彼だけは、他の同僚のようにうっかりと、結婚していた頃の苗字で呼んでくることもない。

かつてチームで仕事をしていた時期は、こちらが少し勘違いしてしまうほど好意的な態度だったし、元夫・司の存在がなければグラついてしまっていたかもしれない、と思うほどの爽やかなイケメンなのだ。

だが、「こんな年下のイケメンが自分を好きになるはずはない」「私既婚者だし」という冷静な判断で、彼のことはずっとそういう目で見てこなかった。

だが。

チラリと中田を見ると、彼もまたこちらを見つめていた。そしてニッコリと微笑み、去り際にかなり至近距離で呟かれる。

「秋元さん、今日ランチ行きましょうね。あとで、社内メールします」

ー距離、近すぎ…!

カナは、たかがランチの誘いで自分の心臓の鼓動が思いがけず早くなったのを感じたが、事態はさらなる急展開を見せた。

離婚を機に、急接近してきた後輩・中田との関係はどうなる?

僕、もう遠慮しませんから


中田悠介
宛先:秋元カナ
subject:今日のランチ
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秋元さん、お疲れ様です。

今日のランチタイム、ミーティング入ってしまいました…すみません。

代わりと言ってはなんですが、夜、『チタチタ』に行きませんか?

秋元さん、タイ料理好きでしたよね。
もし予定がなければ、ぜひ!

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いつもの気軽なランチ、とタカをくくっていたカナは、急なディナーの誘いに思わずメールを2度見した。

今まで後輩の中田と2人きりになったのは、平日の昼間のみ。夜に2人きりで食事に行ったことはなく、こんな風に直接的に誘われたのも、初めてである。

ーこれってデートなの?

”ちょっとした目の保養”だった後輩・中田と、もし恋愛関係になったら…。

社内にどう説明しよう?付き合ったとして、もし別れたら…?など、カナはまた先走った妄想をスタートさせてしまう。

「何考えてんのよ、私!」

会社の後輩とのデートは色々と考えなくてはいけないことも多いが、離婚後はとにかく毎晩寂しくて仕方がない。

茅場町の職場に近いからと、カナは東陽町のマンションに引っ越したばかりだ。部屋はまだガランとしていて、帰宅して1人になるとどうしようもない孤独感に襲われる。

夫がいる上で友人たちと遊んだり趣味に没頭していた時には感じたことのない、強烈な寂しさ。

物理的にも、精神的にも。誰かが側にいることに慣れていた5年間のせいで、孤独への免疫は全くと言って良いほど付いていなかった。

カナはそんな思いを払拭するかのように「ありがとう!予約しとく」と返信し、とにかく今は難しいことは考えまい、と自分に言い聞かせたのだった。



「お待たせしました!行けそうですか?」

なんでもないような顔をしてデスクにやってきた中田に少しだけドキドキしてしまうが、周囲は特に怪しむ様子もない。拍子抜けしたと同時に、心地よい空腹感を感じた。


「秋元さん、ビール派でしたっけ?とりあえず氷点下ビールで乾杯します?」

並びのカウンター席に通され、異様な距離感の近さに動揺しているのは、自分だけなのだろうか。

中田は手際よくカナの好みを聞き出し、生春巻きとヤムウンセンをオーダーする。そして、ビールを一口飲むと、くるりとこちらに顔を向けた。

「俺、もう遠慮しませんから」

年下後輩男子の急すぎる接近に、バツイチのカナはどう反応する?

「僕が秋元さんのこと好きなの、知ってたでしょ?」


ー遠慮って…どういう意味…?

動揺するカナをよそに、中田はさりげなく料理を取り分けてくれ、その後は先ほどのセリフなどなかったかのようにいつも通りの後輩の顔に戻った。

アルコールが入り食事が進むにつれ、少しだけくだけた雰囲気になった中田が切り出す。

「なんか、僕、心配だったんですよね。秋元さんが」

「心配?」

「秋元さん、離婚後も変わらず明るくて、全然休まず、仕事もすごく頑張ってるじゃないですか。そんな姿を見てたら、なんだか励ましたくなったんです。今日は、僕のおごりですから」

「中田くん…」

友人の亜美のアドバイスもあり、中田との食事を変に意識してしまっていたカナだが、彼のこの言葉には心を動かされた。

恋愛対象かそうでないかなど、無理やりフィルターにかける必要はない。もっと自然体で行こう、と決意する。

そう思ってからは変な気負いが消え、長年知っている”後輩の中田くん”との楽しい時間を過ごすことができた。

だが、久しぶりに楽しい夜を過ごせたと大満足で店を出た途端、カナは中田のテンションの変化に気がつく。


「どうしたの?」

先ほどとはうって変わって、中田は黙りこくっている。そして、意を決したように言い切った。

「ねぇ。俺が秋元さんのこと好きなの、知ってたでしょ?」

そう言いながら、さりげなく手を絡めてくる。高橋の時と違い、触れられても全く嫌悪感はなかった。

「秋元さんは離婚したばかりだし、こんなこと言われても迷惑かもしれないんですけど…」

その時、目の前の中田の真剣な顔がふっと近づく。柔らかく、少し乾いた中田の唇が重なり、カナは思わず目を閉じた。


「あの…」

たったいま、自分は会社の後輩とキスをしてしまったのだろうか。ふと目を開けると、中田が申し訳なさそうな顔をしている。

「ごめんなさい、つい…」

謝られても、あまりに突然のことでカナはうまく反応できない。理性と感情がごちゃまぜになって、体が硬直してしまう。

「ねぇ、もう一回キスしてもいい?」

真摯な表情でそう迫られ、カナはつい頷いてしまうのだった。



「ちょっとちょっとちょっとカナ!!何よ!何なのよソレーーーーー!!」

目の前で、顔を真っ赤にした亜美が大興奮している。離婚以来、週末はこうして亜美と近況報告を兼ねて会うことが多い。

中田とのデートのことを報告しながら、カナ自身もその夜のことを思い出し、胸がカッと熱くなるのを感じた。

「…それでカナたち…その夜そのまま…」

「ないない、その夜は我慢した!(笑)」

商社マン・高橋とデートの時とは違い、中田にはキスをされるのも手を繋がれるのも、全く嫌ではなくむしろ嬉しかった。 時間が経ったいま、彼のことを”好きだ”という気持ちも芽生え始めている。

しかし、離婚によって負った女の傷は深い。変に冷静な"もう1人の自分"が現れ、その夜はずっと一緒にいたい気持ちを堪え帰宅したのだ。だが、家についた後にはいつもの孤独感は消えていた。

「で、その後輩男子と付き合うの?」

「そう…ね」

今までチャラついていたところはなく、中田が"男の顔"を見せてきたのはデートの夜だけであった。後輩として話してきた限りは真面目で、元夫とは違い、社内の女性に見境なく手を出している噂も聞かない。

そして、数年ぶりに”恋”の感覚を味わい、何よりもカナ自身の気持ちが大きく中田に傾いているのを実感している。社内には公表せず、慎重に付き合うのなら良いかもしれないと考えていた。

ー中田くんは、浮気とかしそうにないし、安心できそう…。

しかし、一見完璧に思えた後輩男子にまさかの欠点があることなど、この時のカナは思いつきもしなかったのである。


▶NEXT:11月14日 水曜更新予定
イケメンで爽やかな後輩男子の、まさかの欠点とは…?

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